10 ワイバーンとは
4章10話です!
よろしくお願いいたします!
ランブル騎士学園・騎士科2年教室
気だるそうに次の授業開始を待つラーマンの頭の中はぼーっとした外面とは逆に活発に動いている。理由は朝、アインから聞いた竜の話だ。
今までの竜とは何もかもが違う。新種が生まれたのか、それとも他のり理由か?
自分が考えても仕方が無いと思ったラーマンは
ハァとため息を吐き、意識を戻す。
ちょうど授業が始まった。教壇に立つ教室の号令で一礼して席につく。
「では今日は太古より語り継がれてきた幻の生物、ワイバーンについて学んでいこうと思います。」
なんてタイムリーな...誰か仕組んでいるのではないかというぐらいのタイミングである。だが、ワイバーンについて無知もいい所なラーマンとしてはありがたくもある。ここで色々学ぶことが出来れば、調査への協力もできるかもしれない。
「竜、ワイバーンは今よりはるか昔、5000年以上前にこの地上、そして空を支配していた巨大なトカゲみたいな生物です。彼らが覇権を握った時代はかなり長く続きましたが、今から1000年ほど前に突如終わりを告げました。」
そう言って彼は黒板に文字を書いていく。
5000年前──────1000年前
竜たちの時代 ↑突然いなくなる。
「調査機関によってわかっていることは、ただひとつ。1000年前から現在にかけての地中に竜の化石がないという事実のみです。そこから現在まで竜が発見されたとの報告はひとつのみです。記憶に新しいでしょう、大会に現れたあの竜です。3名の生徒によって無力化された後、黒いモヤが消え絶命しました。現在あの竜は古生物調査機関が回収し、鱗や内蔵、細胞に至るまで調査中との事です。」
「先生、その調査はどこまで進んでいるのでしょうか?」
1人の男子生徒が疑問を投げる。
「それが私にも分かりません。とても知りたいのですが、私のような新人の教えることはできないらしいです...」
作り笑顔に涙が見える気がする。生徒は何も言えなくなった。
そしてラーマンはあの兄が一体何者なのかという疑問も浮かんでくる。新人とはいえ仮にも生物の教師が知らされていない内容を教えて貰っているのは何故なのか。まぁアインだししょうがないかと一旦考えるのをやめた。
「さて、次はワイバーンの生態についてです。彼らは基本肉食ではありますが、調査の結果、餌となる獲物が姿を表さない期間、冬場は自然になる果実や野菜も食していたりしたようです。雑食性の個体もいたということですね。ただ、ある程度小さい個体じゃないと栄養が行き渡らず、餓死してしまうようです。狩りの方法についてですが、自身の強みである硬い外殻、大きく重い巨体を活かした体当たり等で行動不能にした後、鋭い牙や魔法でトドメをさしていたとされています。」
魔法。人だけに許された力ではなく竜もそれを扱うことが可能だ。と言ってもブレスとして口から吐いてくるだけだが。それでもその威力はたとえ弱い個体であっても自力の違う人間のそれとは比較にならない強さになる。並の動物であれば、まともにくらえば致命傷は避けられないだろう。
「では次です。─────」
以降も授業が続いたが、調査に役立ちそうな情報はなかった。当然と言えば当然の話だが、ラーマンは少し落胆しつつ、授業を終えた。
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放課後。剣術部の活動も終わり、帰路についているラーマン。いつもは無心で剣を振り、時間なんてあっという間にすぎるが、昨日今日はそういう訳にもいかず、少し疲れがたまる。意識しなくても足元を見て歩いてしまう。いつもの帰り道も少し視線を落とすだけでいつもと違って見える。そう、例えばこんなふうに、赤い血痕が視界の端にチラついたり。
「!?!?!?」
すぐさま右の雑木林に視線を移す。
何も居ない。が、血痕は続いている。ラーマンは血痕を追い、林に足を踏み入れた。
歩き始めて10分ほどだろうか。辺りに酷い臭いが立ち込め始める。あまりの臭いに顔をしかめて、鼻と口元を手で覆い、歩を進める。
そして林の中程のところにソレはいた。
「コイツは...」
闘技場に現れたソレと比べるとまるで赤子のような小ささ。だがソレはたしかに同じものだった。
「腐ったワイバーン...」
所々が腐り、中の肉や骨がむき出しになっている姿。
そして特徴的なこの臭い。ワイバーンが腐ったことにより発生していると考えている強烈な臭いだ。
あの時と全く同じ。いや、前よりも強く感じられる。
ラーマンは念の為剣を抜き、小さなワイバーンに近づいていく。
角部分に触れると小さな体はビクリと震えた。
「生きてんのか...?!」
どう考えても長くないが、ワイバーンは必死に前へ進もうとしている。まるで、寂しそうになく犬のようにグルグルと鳴きながらただ前に進んでいる。1本しかない足で一体どこを目指しているのか。
ラーマンは帰宅をやめ、竜について行く。
たとえどんな結果が訪れようと、今この竜を見なかったことにする訳にはいかない。
「どこに連れて行ってくれるのかね...」
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