21 たった2日の日常
3章最終話です!
よろしくお願いいたします!
ユーリ誘拐事件から2日たった。
心労もあるだろうと学校側はユーリに休みをすすめたが、ユーリはそれを断り普段通りに学校生活を送っている。
変わっていることといえば、眼帯を外していることくらいか。
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昨日の放課後のことだ。
終礼も終わり、皆さぁ帰ろうとしたがユーリがそれを止めた。
「ごめんみんな!ちょっといい?」
そう言いユーリは壇上に立つ。みんな何事かと手を止めユーリに注目した。そして彼女はゆっくりと右眼に手を持っていき、眼帯を外した。赤く染まっていた眼は左眼と同じような正常な色に変わっている。ただ、中央には見慣れない紋様がくっきりと浮かんでいた。
それからユーリは皆に向かってその眼を隠していた理由を聞かせた。実際入学してからおかしなことばかり起こっているため、皆もその魔眼の話はすんなりと受け入れた。だが、その眼を持つユーリを受け入れるかは別問題。一通り話し終えたユーリは皆の反応を待った。
「ふうぅ....ふぐっ、ぐすッ...!」
1人の男子生徒の男泣きの声が聞こえてきた。
皆がその男子生徒を見る。泣いていたのはユリウスである。黙っていれば小綺麗な顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにして両手で口を塞いでいる。
「ゆ、ユリウスくん...?」
ユーリの問いかけにユリウスは顔を上げると言った。
「くっ...ユーリ嬢...さぞ辛かったろう...!君がそんなにも重い責任を感じていたのに僕は何も出来ないどころか気にもとめなかった...!なんと愚かな男だッ!」
「そ、そんなに気に病むことないよ!私がみんなに話さなかったんだし...」
「いいや!ユーリ嬢それは違う!紳士たるもの、女性が辛く、苦しんでいる時、いかに小さな事象でも救いの手を差し伸べねばならない!君はその眼のことを聞かれた時、触れてほしくないと、そう思っていた。君のことをちゃんと見ておけばそれは分かったハズ。だが僕は気に止めていなかった!クラスの一員として恥ずべき事だ...!」
彼の言葉にクラスの皆が次々に言葉を繋ぐ。
「ごめんね、ユーリちゃん。無神経に聞こうとして...」
「俺もごめん!そんなことがあったなんて知らなかったとはいえ、お前が言わなかった時ケチなんて言って。」
皆一度は眼のことを聞いたのだろう。謝罪の嵐だ。
眼のことを聞いていないのは俺含め3名程だった。
「皆...ごめんね...!迷惑かけちゃって...それと、ありがとう!」
認められた気がしたのかもしれない。
ユーリは涙ながらに謝罪と感謝を口にした。
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とまぁ、そんなことがあったわけで、ユーリはクラスの一員として、今まで以上に皆と打ち解け合っているという訳だ。
「でもなんか、遠くなった気がする。」
もちろん俺とユーリは友達だ。それは変わらない。でもこれから遊んだりとかする機会は確実に減るだろうと思うと嬉しいような悲しいようなで....。
「大丈夫ですよお姉様!私はいつでもお姉様優先ですから!」
セルカが気休めを言ってくれる。
「そういえば、なんだがセルカと久しぶりに話した気がするわね。」
「そ、そうですね...。なんででしょう?」
たった2日程度話さなかっただけなんだがな。
「毎日毎日話してれば2日話さなかったらそう感じるものなんじゃない?」
アリアは次の授業の準備をしながらそう言う。
そう言うもんかねぇ。
っと、そろそろ次の授業が始まるな。俺も準備しなければ。俺が準備を済ませたタイミングで教室のドアが開く。魔法理論はサベラが担当していたため新しい教師になるとのこと。一体どんな先生が来るのか...
「しつれいしまーす!!」
えらい大きな声で入ってきたのは色々大きな女性であった。金髪をポニーテールにまとめており、ハツラツな雰囲気をまとっている。
「またデカいのが増えたわね...」
左隣からボソッと聞こえてきた呪言を聞き流し、新たな先生の授業に耳を傾ける。マチルダと名乗った先生は自己紹介も程々に授業を進めるのだった。
余談だが、先生が行動を起こす度に揺らすソレはたった50分でクラスの男子の心を掴んだ。
俺?興味無いフリしてガン見はしておいた。
しかし15年女性やってるので。思ったよりは興味を惹かれなかった。
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授業も終わり、帰り支度を整える。
本日は大した用事もない。まっすぐ帰るとしよう。
「アリア、行くわよ。」
「ええ。」
「っと...セルカ、あなたはどうする?」
「あ〜...私はちょっと用事が...」
ん?煮え切らない言い方だな。友達と帰る時ははっきりそういうんだが。俺とアリアが顔を見合わせ不思議がっていると教室のドアが開く。
立っていたのは執事服に身を包んだイケメンである。
彼は教室内をキョロキョロと見回し、こちらに目を向けると一直線にセルカの下へ。
「お嬢様、お迎えにあがりました。」
「「お嬢様?」」
「ちょっと!なんでもう来るの?!」
ははーん、さては彼を見られたくないからあんな返事を...終わった瞬間に来るのは想定外だったみたいだな。一応挨拶しておこう。友達だし。
「ごきげんよう、セルカの従者でいいのかしら?お名前をお聞かせくださる?」
「お初にお目にかかります。レグルス・リグリオスです。シーナ・ヴォルフフォード様。あなたのことはお嬢様よりお聞きしております。」
「あら、どんなふうに聞かされているのかしら。」
「それは....」
「もう話さなくていいから!ではシーナお姉様、私たちはこれで!ホライッテイッテ...」
セルカたちは足早に去って行った。
「私達もいきましょう。カノンも待ってるでしょうし。」
「そうね。」
俺達もさっさと帰るとしよう。
そう思い、いつもの日常を締めくくろうとした時、また教室のドアが開く。今度はなんだ?
立っていたのは我が友カノン・セルニダスであった。
カノンはキョロキョロと教室内を見回し、俺と目が合うと一直線にこちらへ歩いて来た。
そして俺の肩を掴むとずいっと顔を近ずける。
「ちょ、ちょっとどうしたの?!」
「シーナ!大変だよ!」
「何が?」
「僕たちに王宮から召集がかかってる!」
ああ、日常とはいつも突然に壊れる。
たった2日の儚い日常は終わりを告げた。
読んで頂きありがとうございます!
これにて3章も終了となりました!
次回から4章スタートです!
次回更新予定日は29日金曜日予定です!