7 お隣さんにお忍び旅行-1
7話です!よろしくお願いします!
ラーマン兄さんが王都へ行って2週間とちょっと。
俺はメイド長カリーナと共に馬車に揺られていた。
ラーマン兄さんから聞いた”あのこと”について調べるためお隣さんの領地に向かっている。
ゴルドリッチ領、王都を中心と見た時ヴォルフフォード領の西に位置するところだ。
その面積はそれなりに大きく、ヴォルフフォード領のおよそ3倍程度だろうか。
昔は戦争の際、ランブル王国の主戦力として活躍していたらしい。
なんでも財力が高く、金にものを言わせた物量戦で押勝つなんて脳筋戦法で王国を幾度も勝利に導いたとか。
そんなヤツが俺の故郷を取り込もうと画策しているらしい。
勘弁して貰いたいもんである。
まぁそんな訳で、噂の真意を確かめるべく、敵情視察も兼ねてお忍び旅行中という訳だ。
「戦争...本当に起こってしまうのかしら。」
かれこれ100年起こっていないらしい大きな戦い。
国同士程の規模はないにしろ、やはり起こらないに越したことはない厄介事だろう。
「ゴルドリッチ領、領主セルゲイ・ゴルドリッチは欲望の塊として有名ですから、用心しておくに越したことはないでしょう。」
へぇ〜興味ある。
「カリーナ、セルゲイとやらの欲望エピソードを聞かせてくれない?」
「ではひとつお話いたしましょう。」
コホンと咳払いをしカリーナは話し出した。
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その男の欲は留まることを知らず、ただ自分が満足する為だけに生きていた。
父が領主であり、自分にとても甘かったため、ねだれば好きな物を買い与えてくれた。
それは男が成人した後も続き、やがて男は父の領地を次の領主となった。
男は思った。自分の手に入らないものなどないのではないか。
次第に男の欲は肥大し他の領地のものを欲しがるようになった。
食物や女、金。
自身の領地は昔からの蓄えが多くあり、それで傭兵を多く雇っては他領に攻め入りそこを自分のモノとした。
そして、ランブル王国で最も大きな領地、潤沢な資金や資源を手にした男は配下にこう言ったという。
「余はこの程度では満足しない。その内このランブル王国すらも手に入れ、このセルゲイこそが世界の主であると世に知らしめて見せよう。」と
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なんと模範的なジャイアニズム。
「あくまで噂なのですが、まぁ、日頃の行いのせいで瞬く間に広がっていき、それこそがセルゲイ・ゴルドリッチなのだと他領に恐れられています。」
なまじなんの苦労もせず欲しいもの全てを手に入れてきたため自分を物語の主人公か何かと勘違いしてるんだろうな。
しかし、セルゲイの噂ねぇ...
14年間生きてきて一度も耳にしなかったな。
街にでも出ていれば一度くらい聞けただろうか。
そういえば基本訓練所か図書室にばっかりいたから街を見れてないな。ヴォルフフォード領を出る際に通っただけだ。
てことは初めてしっかり見る街はゴルドリッチ領になるのか。いいのかな、まぁいいか。
物思いにふけっていると突然ドゴンと馬車が揺れ急停止した。
「いったい何!?」
「お嬢様!外へ出ては...」
カリーナの静止を聞かず外へ飛び出すと、
騎手が地面に転がり、血溜まりができている。
「お嬢様下がって下さ...ぐっ!」
馬車の入口付近で護衛として連れてきた兵も目の前で喉を貫かれ動かなくなる。
ズズッと喉に突き刺さった剣が引き抜かれ兵士が倒れると馬車を襲った犯人の姿が見えた。
軽装な上ひび割れ、もう防御の役割を果たしているのか疑問な鎧に、小汚く、襟がよれた黒い服。
そして190cmはあろうかという長身に無精髭を生やした男だ。その後ろにはいかにも三下らしい男2人がいる。
咄嗟にそばで倒れた兵士の剣を拾い構える。
盗賊に会うとはついてない。さてどう切り抜けるか。
「大人しく投降しろ。そうすれば痛い目に合わずにすむ。」
やけに落ち着いた声で長身の男が言う。
ただの盗賊にしては妙なことを言うな。
邪魔な護衛を殺すのはまぁ当然だが、
俺に投降しろと言った。普通金目のもん盗って無理やり連れて行ったりするもんじゃないか?
律儀に抵抗やめてねと言ってくる盗賊は聞いたことない。
さらに彼らの顔は遊びや悪意で罪を犯す罪人のそれじゃない。やらねばならないと言うような真剣な面持ちだ。
「一応聞いておきますけど、断ったら?」
「一緒だ。無理にでも連れていく。痛い目にあうかあわないかの違いだけだ。」
「...そうですか。」
答えを聞いた俺はすぐさま前へ飛び出し長身の男を避け後ろの2人を狙う。
1人目の頭を剣の腹で叩き気絶させ、もう1人の頭を鷲掴みし近くの木に打ち付ける。
これで1体1だ。後ろで信じられんといった表情の男に向き直り言ってやる。
「大人しく投降なさい。痛い目に合わずに済みますわよ。」
読んで頂きありがとうございます!
戦闘描写書くの難しいです!