16 魔なる者
3章16話です!
よろしくお願いいたします!
「許さないか...。構わないよ、君がどう思おうと知ったこっちゃない。好きに怒るといい。」
どこまでも人を舐めているらしい。剣を固く握りしめたら足に力を込める。だが、横に立っていたカノンが俺の肩をつかみ制止した。
「シーナ、何度も言うけど落ち着いて。あれはまだ僕らが戦っていい相手じゃないよ。」
「でも...!」
「それはどうだろうな勇者クン。はっきり言うけど今のボクはかなり弱体化してるよ?全盛期の10分の1の力も出せないかもしれない。」
「それでもだよ。その程度の力でも今の僕とシーナを殺すのにそう時間はかからないんじゃないかな。なぜ今そうしないのかは分からないけど。」
「さすがにキミは知ってるか。うん、これもはっきり言わせてもらうけどボクの今の全力でもキミたちを殺すことは出来る。でもそれは全力を出せればの話さ。実はこのゴミにボクの力を貸してやっていてね?今返してもらったんだけど、元々ボクの力でも1度手放すと上手く扱えなくなっちゃうんだよ。つまり全力は出せない。キミたちでも勝てる可能性がある。ボクの計画は始まったばかり。さすがに今リスクを犯す必要は無いと判断したんだよ。」
なら今の俺でも全力を出せばやれる可能性があるんじゃないのか?俺も死ぬ気はない。だが、ここであいつを逃すのはまずいんじゃないのかと本能が訴えている。俺はもう一度体に力を入れる。今までの抑えていた力ではなく、俺の本当の全力を。
「シーナ...」
カノンが少し呆れたように言う。
「ごめんなさいカノン。でもやっぱりあいつは逃がすべきじゃない。殺せる可能性があるなら今ここでそうするべきだと思う。」
「......分かった...。でも無理はしないで、危ないと判断したらすぐに退くよ。」
「向かってくるんだ?やれやれしょうがない子たちだネ。まぁいいよ、現代の勇者の力も見ておきたいし?ワンチャンボクの力を取り戻せるかもだし?ひとつはもう無理だけど。じゃあかかってきなよ。はてさて、今のキミたちの力がどれほどボクに通用するかな?」
暗闇の中から姿を現すその男はサベラと同様、黒い外套をまとっており、容姿は確認できない。だが、そこの知れなさは戦っていない今でもサベラ以上だと分かる。俺の心の奥底にその記憶が刻まれているように。
「悪者の間で流行ってるんですか?その外套。痛々しくて見てられませんわ!!!」
虚勢を張って全力で地面を蹴る。
長く出して来なかった全力だ。俺も一瞬驚く。その瞬きする間もない一瞬で俺は奴に急接近していた。
余裕ぶっこいてヘラヘラしていた奴もこれには驚いたようで目を見張り乱雑に振るわれた俺の剣を紙一重で避けた。
俺はそのままの勢いで壁に突っ込み、背中を激しく打ち付ける。
息つくまもなくカノンが奴に肉薄し光を纏わせた剣で攻撃する。
俺の速さに驚き、カノンの攻撃に反応が遅れた奴も3度目の剣撃には対応し、カノンを退ける。
「ふぅー!危ない!さすがにビックリしたよー。今程の速さは10000年は見てなかったから、大したもんだよ。器と言ってもそれに耐える肉体ではあるってワケだ。」
「ゲホッ!ゲホッ!」
「シーナ、大丈夫!?」
「え、えぇ、何とか...。」
意味があったかは分からないが受身はとった。
骨にダメージもいってないはず。背中超イテェけど。
だがその甲斐あって奴に一撃食らわせることはできた。大してこたえた様子もないが、やっぱり今なら何とか捕らえることが出来るかもしれない。
「さて、じゃあ今度はボクからいかせてもらおうかな。器ちゃんはしばらく足でまといでしかないでしょ。さぁ勇者クン、どう守る?」
「...カノン、しばらく一人で耐えれる?」
「ごめん、あまり長くは持たないよ。」
「2分でいい、堪えて。あなたに気を取られている隙に私が一撃入れる。」
俺とカノンは再び小声で打ち合わせる。
正直もう一度あれをやるのは気が進まないが、やれることはやっておかなければならない。やりもしないで逃げられたじゃ納得もいかない。2人で正々堂々殺り合っても多分勝てない。俺が満身創痍じゃ尚更だ。
奇襲。もうこれにかけるしかない。
「......わかったよ。でもこれが最後だよ。外しても逃げられても続行はさせられない。」
「大丈夫よ。ハナから続ける気はないわ。」
カノンは俺の言葉を聞き、1歩前に出て光をまとった剣を構える。
それを見た奴も1歩前に出て唯一見える口元を歪ませる。
「流石は勇者、良い勇気と覚悟だ。よし、始めようか。」
互いに全身に力を込め、臨戦態勢に入る。
「第2ラウンドだ!」
読んで頂きありがとうございます!
次回更新は未定ですが、多分月曜以降になるかと思います!
何故かって?Switch2買いに行くからですᕕ( ᐛ )σ