15 その眼は-2
3章15話です!
よろしくお願いいたします!
「シーナ危ない!!」
スローモーションになっていた視界がユーリの叫びで速さを取り戻す。
サベラの背中から伸びた黒い棘を体を後ろに倒してギリギリ避ける。
俺が後方に倒れるのと同時にサベラは咄嗟のことで状況が飲み込めていないカノンに接近し、右腕を前に突き出す。
そこから伸びてくる棘はカノンの心臓を狙っている。
まずい!俺は間に合わない...
ユーリも...動けそうにない。
カノン自身に何とかしてもらう他ないが、防御が間に合わない!
どうする?!このままじゃ!
サベラが自身の勝利を確信し、歯をみせ笑う。
その時、
「ダメー!!!」
ユーリが叫ぶ。その瞬間、彼女からとてつもない量のオーラが溢れ出た。
魔力というものじゃない。別の何かだ。
「何っ?!」
そのオーラに触れたサベラの棘は一瞬にして霧散した。
「これは、まさか.....!」
サベラがユーリに視線を移す。
「覚醒したのか?...魔眼が...!」
ユーリの右眼にはいつもの黒い眼帯はなく、
隠し続けてきた眼があらわになっている。
その眼は白目が反転し黒くなっており、虹彩は真っ赤に染まっている。そして瞳孔があるであろう位置には不可思議な模様が浮かんでいた。
「魔眼...?」
奴はたしかにそう言った。
呪いの眼ではなく、魔眼だと。
いや、考えるのは後だ。今はサベラを捕らえることを最優先にする。
俺は剣を握りしめサベラに突っ込む。
今の奴は丸腰と言ってもいい。決めるなら今しかない!サベラに近づき、横なぎに剣を振る。
だが、俺を警戒していたのか躱された。
低くした体勢から蹴りを放たれ、俺が怯むとサベラは俺たち3人から距離をとった。
そのタイミングでユーリが力が抜けたようにふらりと倒れた。
「覚醒直後にあの乱暴な使用だ。そうなって当然だね。」
ユーリの状態を見ながらジリジリと下がっていくサベラ。
「また逃げるつもりですか。」
「もちろん。ここで終わる訳にもいかないからね、もう一度作戦を練って出直すとするよ。」
「サベラ先生、あなたが闇魔法使いだということはもう僕たちに知られてしまった。次はもっと難しくなりますよ。」
「悪いが僕もこのまま諦めることは許されないんでね。次を楽しみにしているといi....」
サベラがまさに暗闇の中に姿を消そうとした時、
ズッと音が聞こえ、サベラの腹から赤く染った鉄の剣先が飛び出ていた。
「こ....れは...」
「一体何が...」
「.........」
「やれやれ、サベラ?君もさっき言っただろ?僕は2度目を許すほど優しくはないってさ。」
聞いた瞬間に背筋が凍った。
刃向かってはいけない何かがそこにいるような気がした。
自然と呼吸が荒くなる。息を吸えているハズなのに息苦しい。目の前が暗くなり始める。
「シーナ...!」
「っ!?」
「...落ち着いて。」
カノンの声にハッとすると、いつの間にか彼の方に抱き寄せられていた。改めて目の前にいる何かを見る。
ズルリと剣が引き抜かれ、サベラが倒れる。
「な、なぜ...あなたがここに...」
「なぜってそりゃあ、無能な部下の尻拭いをしに来たんだろ?まったく、使えない味方を持つと苦労するな。ねぇ、勇者クン?」
「訂正してくれるかな。君のソレと違ってシーナは強く賢い。僕含め、学園のみんなのためにその力を使ってくれている。」
「そっか...。そういう話をしたんじゃないけどまぁいいや。」
勇者だのなんだのと。
俺は理解が追いつかない話を続けている2人。
「う、うぅ...」
「ん?なんだ生きてたのか。なかなかしぶといじゃないかサベラ。」
「お、お許しください...!私はまだやれます...!もう一度、チャンスを...!」
「...ふぅ。僕はもう十分チャンスをあたえただろ?それを無駄にしたのはお前だよ。2度のチャンスをものにできず、喋らなくてもいいことまでペラペラ喋ってさ。」
「っ....」
「それにいらないリスクもおかしたよね?」
「なんの話かな?」
「ああ、君は知らないよね。器も詳しくは知らないか。僕が教えた魔力理論を得意げに、まるで自分が考えたように話してたよね。」
今日の授業のことか。
「それがなんなのかな?」
「ふふっ、ねぇ器ちゃん?あの時彼があるものを持ってきたんだけどそれが何かおぼえてる?」
あの時サベラが持ってきたもの?
確か、
「......魔力、核...?」
「なんだって...!?」
...なぜ今の今まで気付いてなかったのか。
俺は自分とサベラに怒りがむく。
「サベラ先生、あれはどこから調達したものですか...。」
「......」
「答えてください!!!」
「...なんで何も言わないのか...。代わりに僕が答えよう。と言っても君たちが想像しているものと同じものなんだけどね。」
「......」
「誰のだと思う?」
「......まれ...」
「君たちのクラスさ、今日1人休みだったんじゃない?」
「黙れ...」
「シーナ、落ち着いて。」
「君たちの前にあったのはお友達の命と言っても...」
「黙れって言ってんだよ!!」
「あーあ。ショックだよねぇ。お友達が目の前にいるのに気が付かず、得意げに語られる二番煎じ理論に感心してたんだもんね。」
目の前が黒ではなく赤に染まるような感覚をおぼえ、先程まであった恐怖が消え失せ、激しい怒りに身を震わせる。
俺は面白いとでも言うような顔でニタニタ笑うまだ姿が見えない黒いなにかに向けて言い放つ。
「お前は絶対に許さない。」
読んで頂きありがとうございます!
あのお方どんなやつにしようかなと考え今のキャラで行こうとなりました。
なんか似た口調のやつ多いな?
次回は8日金曜日更新予定です!