14 その眼は-1
3章14話です!
よろしくお願いいたします!
「彼女の眼はね、呪いの眼なんだよ。」
サベラ先生が語り出すユーリの右眼の秘密。
呪いか...。いきなりぶっ飛んだ話になったな。
もちろん、この世界には魔法なんていう不思議要素があるから、呪いというものがあっても不思議じゃないが、あいにく生まれてこの方15年、呪いという言葉は聞いたことがない。
「分からないという顔だね。まぁそうだろう、僕も初めて聞いた時はそりゃあ訝しんだものさ。でも、聞いていくうちにその眼はやはり呪いなのだと確信できた。」
「仰々しく手を広げてないで早く話して頂けますか。」
「...まったくせっかちだねぇ〜。分かったよ。彼女の右眼は生まれつき白目が黒く、虹彩が赤くなっていた。そしてその眼には誰も見たことがない紋様が浮かんでいたんだよ。彼女の親族は不思議がった。でもただ変な右眼だというだけで自分の子を愛さない親は居ない。5歳になるまで彼女の両親、親族は彼女に深い愛情を注いだ。」
今のところはただの幸せな家族の話だ。
次の言葉を発する時、サベラ先生は天を見上げた。そして声のトーンが下がり、あたりの雰囲気が変わる。
「だが、ユーリちゃんが5歳になったある日、親族の1人が死んだ。その人は5歳になったユーリちゃんにあろうことか欲情してしまった。ユーリちゃんは襲われ、もちろん抵抗した。幸い、ユーリちゃんの父親が来て何もされずに終わったけど、当然その男には罰がきせられることとなった。次の日、牢屋に入れられていたその男は全身干からびたミイラのような状態で牢屋の中で息絶えていた。その時はバチが当たったのだと誰も気にとめなかった。」
でも、と前置きしサベラ先生は続ける。
「貴族のユーリに嫉妬し、意地悪をしていたメイド見習いの女性が、敷地の中の池で死んだ。その事件があってから、何人かがこう噂しだした。『ユーリの眼は呪いの眼だ』ってね。しかも事件はそれだけじゃ治まらなかった。噂をしたものはみな死んだ。彼女を恐れた父親は別の女をつくり逃げた。母親は病気にかかり、目障りになったとユーリと母親を追放した領主も死んだ。そうなると彼女の眼は本物の呪いの眼なのだと言う噂は広がっていったんだ。」
それがユーリの右眼の呪いということか。
「ユーリの眼が呪いの眼だと言うのなら、私は少し分からないことがあります。」
「何かな?」
「なぜそんな危険なものをあなたは欲しているのですか?ユーリの眼を手に入れて、あなたに理があるようには思えません。」
「......理がない訳じゃないんだよ。僕だって自分に災いが降りかかるような危ないものはあまり近くに置きたくはないよ。」
「ではなぜ?ユーリの眼を求めているのはあなたではないと?」
「さて、それは言えないね。ご褒美は終わりだよ。」
サベラ先生はそう言うと背中から黒いモヤを出し、大きな手を形作る。
「だったら、力ずくでお聞きしましょうか。カノン!」
「うん!」
俺とカノンは腰に帯刀した剣を抜き放ちかまえる。
「カノン、さっき言った通りに。」
「了解。」
俺とカノンを交互に視線を向け、ニヤリと笑うサベラ先生は目を見開き闇の両腕と生身の両腕を広げる。
「さぁ来るといい!君たちの力を僕にぶつけてごらんよ!」
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「う、うぅ...ん...」
冷たい床で目が覚める。
家に帰る途中からの記憶が無い。
ユーリはゆっくりとその日の出来事を思い出す。
そうだ、家にお父さんが来てたんだ。
その後お父さんにどこか連れていかれそうになって、
サベラ先生が来て...
お父さんを殺した...。
そこで気を失ったのだろう。目の前が真っ暗になり気がついたら今の状況だ。
まだ意識がはっきりしない。
目がぼやけているし耳も遠い。
少しずつ目の前がはっきり見えてくる。
小さな、オレンジ色の光がついたり消えたり。
ガキンガキンと何かがぶつかり合い音が聞こえる。
ようやく周囲の状況が分かる。
戦っている。3人だ。
シーナとサベラ先生と...あれは確かシーナの友達の騎士科の男の子だ。
サベラ先生の黒いモヤの攻撃を見事に捌いてる。
彼の光をまとった剣にぶつかる度にサベラ先生の黒いモヤが小さくなる。
光の剣の男の子がカウンターを決め、体制が崩れたところに死角からのシーナの一閃。
見事な連携でサベラ先生を追い詰めている。
何度もそれを繰り返し、サベラ先生が片膝をつく。
シーナと男の子はただのひとつもキズを負っていない。見事な戦いぶりだった。
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「ぐっ!」
苦悶の表情を浮かべて膝をつくサベラ。
俺とカノンは前と後ろから剣を突きつける。
「終わりです、大人しく投降なさい。そうすれば命まではとりません。」
「...優しいことだね。...でもここで僕を殺しても殺さなくても同じさ。結局僕は死ぬ。」
「なぜ?」
「...あのお方に殺されてしまうからだよ。ここで失敗すれば2度目だ。次はないだろう。」
「あのお方ですか。ついでに先程の答えにもお答え願いますか?」
「それは言えないよ。僕もそこまで人を捨ててはいないからね。」
「そうですか。カノン、何か縛れるものがないか探して来てくれる?ユーリも目が覚めたようだし、とっとと縛って終わらせなきゃね。」
「分かったよ。」
カノンがサベラから目を離したその瞬間、
俺の目の前から黒いトゲが飛び出した。
それは俺の頭を狙い一直線に伸びてくる。
読んで頂きありがとうございます!
本当に短くなりそうでやばばい!
なったらなったでまぁいいか。
次回更新は6日予定です!