1 君を見る目
3章開幕です!
1話よろしくお願いします!
ランブル騎士学園総合大会からもう1ヶ月が過ぎた。
まだ6月上旬だというのにうだるような暑さが常に体力を奪い続け、照りつける太陽が肌を刺す。
皆すでに衣替えを済ませ、夏服状態。
それでもこの暑さだ。教室の至る所で夏を憎む声が聞こえてくる。
そんな教室でアイシングを額に当てて天を仰ぐ女子生徒が1人。
そう、俺です。こんにちは、シーナ・ヴォルフフォードです。
この氷は現在隣に座りなんでもないような顔で本を読んでいるアリアに魔法で作ってもらったもの。
前にも言ったがこの世界、機械系の技術が本当に発展していない。ランブル王国外のとある場所ではめざましい発展を遂げた国もあるらしいがここはそうはいかない。
何が言いたいかと言うと、この教室だけではなく、
職員室や図書館にだってエアコンはもちろん扇風機すら置かれていないのだ。
現代日本と比べてまだマシな暑さとはいえ、
夏に冷房機器ないのは辛いのですよ。
「アリア、あなた暑くないの?」
まるで暑さを感じさせない佇まいのお隣さんに疑問を飛ばす。もちろんアリアも夏服になっているとはいえ、微笑みを浮かべながら本を静かに呼んでいるその姿には夏の暑さが感じられない。
「もちろん暑いわよ?表面に出てないだけよ。」
そう言い思い出したようにハンカチで汗を拭うアリア。
しかしその額には1粒だって汗は滲んでいなかった。
「暑〜い...暑いですぅ、お姉様ぁ〜...」
今度は左隣から耳を塞ぎたくなるほど聞くだけで暑くなって来る声。
セルカ・アージェスタ。
俺が学園総合大会にて負かしたクラスメイトだ。
出会った当初は俺に良い印象を持ってなかったのかいじめっ子のそれな態度をとっていたが、
大会で俺に負けてからは子犬のように俺に着いてくるようになった。
可愛いけどたまに鬱陶しい。
「ほら、これあげるから声抑えなさい。余計に暑くなるわ。」
「わぁ〜い...!」
額に当てていたアイシングをセルカに渡す。
それにしても...
「遅いわね、サベラ先生。」
「そうね。少し様子を見てきましょうか。」
アリアが先生を探しに行こうと席を立つ。
すると、教室の扉がガラガラと音を立てて開く。
「ごめんねぇ〜!待たせちゃって!」
入ってきたのはサベラ先生ではなく、俺たちの担任、
リーン・コルマージ先生である。相変わらずデカい。
どこがとは言わないが。
「あの、先生。サベラ先生はどこに?」
学級委員長のアリアが質問するとリーン先生は答える。
「なんだか王宮に呼び出されたみたい。サベラ先生ってすごく魔法学に詳しいでしょ?それでたまにこうやって呼び出しを食らうことがあるんですって。」
それならそれで言っておけばいいだろうに。
几帳面なサベラ先生らしくないな。
「いつもは生徒優先なんだけど...今回はちょっと違うみたい。呼ばれてるって急に報告があったんだけど、それを聞いたら血相変えて飛び出していったの。」
先生方にも色々あるというわけだ。
まぁ、今みんなが気になってるのはそこじゃないらしいけどな。
セルカはともかく、アリアも生唾を飲み先生の次の言葉を待つ。
「はいっ!というわけで、サベラ先生の代わりなんてこの学校にいないので〜........」
生徒全員が固唾を飲む。
今、みんなの気持ちはひとつになっている。
「この時間は自習としまーす!!!」
「「「よぉっしゃああああああああぁぁぁ!!!!!!!」」」
今までで一番このクラスがまとまった時間だった気がする。
リーン先生は静かに過ごしてねと言い残し教室を出ていった。
が、そんな言葉齢15の少年少女が守る訳もなく、
教室内は喧騒に溢れていた。
各クラスが防音性バッチリの部屋で何よりだと思った。
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今日も今日とて1日が終わり、下校時間。
アリアは何か委員会の用事があるらしく早々と準備を済ませ教室を出ていった。
セルカは前までいた友達と遊ぶ約束をしていたようで終礼が終わるなり友達の元に駆け寄っていった。
カノンは部活。
さて、今日は1人かな。
なんだか久々の気がするなぁ。
なんやかんや周りにちゃんと人がいたという証だろう。寂しい...
太陽が落ち始め、少しだけオレンジ色が出てきた空を飛ぶカラスを眺めていると、右前方から賑やかな声が聞こえてきた。
目をやるとそこには、セルカがまとめていた陽の女子たちとは別にあった陽の女子たちが。
彼女達は何やら「えー!まじぃ!?」とか
「うーわっそれあるわぁ〜」とかギャルになりきれていないような会話を楽しんでいるらしい。
どうやら今から街に新しく出来たジュエリーショップにみんなで行こう的な話らしい。
いかにもな放課後の過ごし方だな。
彼女達を眺めていると、その中の1人が俺の視線に気づき、近寄ってきた。
やべ、視線気持ち悪かったかな...。
不安に思う俺とは裏腹に、彼女の顔は明るい笑顔だ。
「ねぇ!シーナさんも行きたいの?」
「うぇっ?!あー、えっと...」
なんで分かったんですかねぇ。
「シーナさん、すっごい羨ましそうにこっちみてたから、気になっちゃって。」
どうやら気持ちが顔に出てたか。
せっかくの向こうからの誘い。俺の出す答えは一つだ。
「えっと、良いんですか?」
「もちろん!みんなも良い?」
「いんじゃない?」「あーしも別にいいけど。」
「断る理由もないしね。」
「じゃあ、決まりっ!いこっ?シーナさん!」
彼女から差し出された右手を握り、絶対に自然にはできてないであろう笑顔をつくり答える。
「よ、よろしくお願いします...!」
俺と手を取るギャルリーダー。
彼女の名はユーリ・メトロム。長い茶髪をサイドテールにした少女である。
もうひとつ大きな特徴は誰にもその理由を話していない右目を覆う眼帯である。
読んで頂きありがとうございます!
3章もよろしくお願いします!