25 それに理屈や意味は無く
2章25話です!
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学園内南西部に位置する森。
と言っても道は整備されており、ただ木が多く生え揃っているだけの場所。
大闘技場の南側にある静かなその森を歩く少女が1人。
肩を落とし、覇気のない足取りで歩くその少女は
セルカ・アージェスタ。
学園総合大会の剣術部門にてシーナに敗れた女子生徒である。
彼女はこれからの自分の学園生活を想像し少し身震いする。というのも、誰に対しても上から目線で接してきた彼女に好意的な視線を向ける人間はかなり少なかった。
それでも多少の友人、取り巻きができていたのは彼女が相応の実力を持っていたから。
しかしそれも今日シーナに負けたことにより、意味をなさなくなるだろう。接戦を演じた訳でもない。
まるで子供を相手にするかのようなシーナの実力に完敗した。今まで親しくしていた友人もみんな離れていくだろう。そうなれば学園に1人。
この学園にはないと思いたいが、最悪いじめが発生するかもしれない。
「自業自得か...」
全ては自分が招いた結果だ。後悔も今更だろう。
とぼとぼと歩いていると前に人の気配を感じた。
顔を上げるとそこには、
黒く、ボロボロの外套に身を包んだ何者かが立っていた。周りに黒いモヤのようなものが見える気がする。
たっているだけでも不気味な雰囲気が立ち込めていた。
「な、何よ...あんた...。」
「.........」
返事はない。だが、このまま放置してもいいような奴ではないことがなんとなくわかった。
セルカは剣を抜き、正体不明の人物に相対する。
勝てるのだろうか、自分に。そもそもなぜ目の前の人物と戦おうと思ったのか。逃げても誰も見ていないし、怪我を負うリスクもないだろうに。
真っ直ぐに飛び、切りかかる。
だが自身の行動の意味すら理解できていない剣はいとも簡単にかわされる。
セルカは次の行動に移ろうとした時、目の前の人物の違和感、というか疑問を覚える。
臭い。思わず顔を背けてしまう程の腐敗臭がした。
外套の人物はそれを好機とみたか、攻勢に出る。
早い速度でセルカの後ろに回り込み、腕で首を絞めあげる。
「がっ...あぅう...!」
セルカは何とか振りほどこうとするも、抜け出せない。
本当に人の力なのかと疑うほど強い力だ。
少し抵抗しただけで自分には無理だと悟ってしまった。
まぁ、このまま死んでもいいかと考える。
どうせ生きても学園に自分の居場所はないし。
実家なら自分をぞんざいに扱ったりはしないだろうが、正直何を言われても素直に受け取れそうもない。
自分が嫌いになっている。
これからの人生が楽しくなりそうもない。
だったら、いっそ....
諦め、目を閉じる。
力も入らず脱力する。
だがその瞬間、首にあった強い力がなくなり、
体が宙に投げ出される感覚を感じた。
襟を掴まれ、地面との衝突を軽減された。
「ゲホッ...ゴホッ...」
なぜ自分は助かったのだろう。
ゆっくりと顔を上げ、状況を確認する。
目の前にはある人物が立ち、外套に剣を向けていた。
「ごきげんよう、あなたがあのトカゲを操っている犯人でしょうか?」
シーナ・ヴォルフフォード...
もはや憎しみや怒りすら湧いてこない、セルカの宿敵が、セルカを守るために駆けつけていた。
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ゾンビ竜と繋がれたモヤを辿って来てみれば、
用無し女が首を絞められていた。
とりあえずで黒い外套を羽織った何者かの腕を切り救出する。
あのモヤにどんな効果があるのかは分からないが、
おそらく間違いないだろう。
闇魔法使い。こんな所で出くわすとはな。
状況を理解してるのかしてないのか、後ろでへたりこんでいるセルカが俺を見る。
「あんた...なんで...」
「別に意味はありません。」
「私が憎いんでしょ?嫌いなんでしょ?あのままほっとけば良かったのに...」
「たしかにあなたのことは好きではありません。ですが、見てしまったものは仕方ありません。目の前で死なれるのは夢見が悪いので。」
セルカと話しているすきに飛びかかってきていた外套。
そいつを見据え体制を低くし拳のない腕の振りを避け刃が付いている自分の剣振り抜く。
いとも容易く相手を真っ二つにできた。
弱い。というかなんだか動きが単純すぎる気がする。
「油断しないで!!!」
セルカの声に切り捨てたやつを見る。
上半身はそのまま倒れたまま、だが下半身がひとりでに動き蹴りを繰り出してきていた。
「ぐっ...!」
ギリギリ防御を間に合わせ受身をとる。
なんで動いてる...?!下半身だけで動くとか
セ○でもやってないだろ?!
闇魔法使いって不死身だったりするのかよ?
「ねぇ!そいつ、もしかして操られてたりするんじゃないの?!闘技場にもなんか来たんでしょ?!それと同じようにさ!!」
oh!なるほど!
こいつも操り人形である可能性。
ワイバーンが操られていたもんだからもうないもんだと勝手に思っていた。
なるほど、複数体操れるのはあるかもしれない。
しかしあのデカいトカゲ操っておいてまだ他に回す魔力あるってどんな魔力量だ?
とりあえず火球を生成し離れ離れの上半身と下半身に打ち込む。
これでこいつは大丈夫だろう。
だが、主犯を見つけなければ終わらない。
とっとと探さなければな。
まずはこの森を調べるか。
「ちょっと!どこ行くのよ!」
騒がしいな。
「今のと闘技場のワイバーンを操っていた者を探します。あなたはどこか安全な場所にでも行ってなさい。」
「ま、待ってよ!」
立ち上がり近づいてくるセルカ。
「...なんです?」
「私も行く!」
「なぜ?」
「ただの人形に殺されかけた。やり返さなきゃ終われない。」
「あなたは、絞められていた時諦めていたように見えたのですが?」
「......たしかに、私はあの時諦めた。でも、ただの人形に殺されかけて、あんたに助けられた。このままじゃ終われないの。」
「邪魔になるとは考えないのですか?」
「......ならない。」
「え?」
「ならない!確かに剣術はあんたにかなわなかった。でも、魔法ならあんたに劣ってるとは思わない。」
なぜそんな自信をもてるのか。
「まぁ、いいでしょう。せいぜい死なないことですね。」
俺とセルカは共に森を駆け出す。
闘技場の方はどうなっているだろうか。
みんな無事だといいんだが。
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