22 これが因果応報だ
2章22話です!
よろしくお願いします!
1回戦を終えた俺は選手控え室へ戻り、
その後の試合を眺めていた。
セルカ・アージェスタ。
魔法科の生徒がわざわざ剣術部門を勝負に指定してきただけはあるらしい。
学校全体で見ても強い方。
だが、なんだろう...どこか自信が無いように見える。
戦い方に積極性を感じない。
動きの良さが随所に垣間見えるのに
本気で勝とうという気持ちが感じられない。
相手は格下。しかし防戦一方。それでも一撃も貰っていない。つまり完璧に防いでいる。反撃に転ずるタイミングもいくつもあるはずだが攻めようとしていない。
完全に泥仕合。
何を考えているのやら。
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強いことはわかっていた。
でもここまでとは...
シーナの対戦相手のマリカ先輩は結構有名な先輩だった。間違いなく強い。私が戦ってもあんな風にはならない。
正直に言って、さっきまであった戦意が失われていた。シーナ・ヴォルフフォードという人間が恐怖の対象になりつつある。
だから...本当に...とても、とても不愉快なことだが、
私は負けようとした。自分で。
望むものをなんでも手に入れてきた私が初めてその権利を手放そうとしている。
だと言うのに......
なんでこんなに弱いのよ!!!
もっと強ければこのまま攻められ続けて負けても何も不自然じゃなかったのに...!
これじゃあ負けられないじゃないのよ!!!
何よ、「うおぉぉぉぉ」って!
無駄に声だけ出して!!!やる気出せ!!!
間抜けすぎな声出すな!!!
ああもぅ、いい加減にしろ!!!
横薙ぎに振られた剣を避け、すぐさま相手の頭に振り下ろす。私の一撃を受けた相手はふらりと仰向けに倒れる。
「勝者、セルカ・アージェスタ!!!」
わあぁっ!!!と歓声が沸き起こる。
こっちは全然そんな気分になれないというのに。
私の視線は自然と選手控え室に向けられる。
あいつは自分の番が来るまで目を瞑りじっとしていた。
だけど今はしっかりとこちらに視線を向けている。
あの時よりかその視線は恐ろしいものじゃない。
でも、そのプレッシャーはあの時よりも何倍も強く感じた。
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勝ったか。
何かこちらを見てなんとも言えない顔をしているが。
まぁとにかく、これで
やつも勝ち上がったな。
次の試合を待つとしようか。
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次の試合も一瞬でカタをつけた。
できるだけで自分の力を誇示するように、
自分を強く見せるように。
やつはまたも1回戦と同じような泥仕合をやった末勝利を収めた。
これで次の対戦相手は...。さぁ、お仕置きの時間と行こうか。
俺たちの対戦は体感だがかなり早く訪れた。
闘技場にて俺と相対しているヤツは必死に強気な目つきを作り俺を睨んでいるが、体は小刻みに震え、
作った表情も上がった眉頭で台無しである。
「まずは逃げずに、ここまで勝ち上がってこれたことを褒めて差し上げましょう。よく頑張りました。」
「馬鹿にしてるの?」
「どう受け取るかはあなた次第ですね。しかし、思い当たる節があるからそういう答えが真っ先に浮かぶのでは?」
「ちっ...!」
少し話していると審判が現れる。
「それでは両者、構えてください。」
審判の声を聞き、ヤツは剣を前に構える。
一方の俺は左手に持った剣をだらりと下げる。
「シーナ・ヴォルフフォードさん、構えはそれでよろしいのですか?」
「ええ、構いませんわ。」
「っ!!クソ女がっ!」
「...では、これより、シーナ・ヴォルフフォード選手対セルカ・アージェスタ選手の試合を始めます!始めっ!!!」
開始の合図が下るとヤツは俺目掛けて勢いよく向かってきた。
「はあああああああ!!!!」
真っ直ぐに振られた剣を軽く後ろに飛んで避ける。
それからも次々と繰り出されるやつの攻撃をただ避け続ける。
「...なんなの、あんた。なんで攻撃しないのよ...!」
「先程のあなたもそうだったと記憶しているのですけどね。まぁ隠すことでもないのでお教えしますが、私は今日、疲れる気がないんです。」
「どういうことよ。」
「私に怯え始め、戦う気力を失いつつあるあなたを倒すのは、目上に頭を下げるよりも簡単なことです。そんな相手に全力で挑むとでも?体力の無駄ですね、帰ってから鍛錬もしなければいけないというのに。」
「くっ...この!!!」
再度向かってきたヤツの攻撃を剣で弾く。
ヤツは今隙だらけ。俺の膂力なら一撃入れれば確定KO
だが俺はそれ以上動かない。体勢を直したヤツは大きく後ろに飛び、俺から距離を離す。
「はぁ...はぁ...、それで、それとあんたが攻撃してこないのになんの関係があるのよ。あんたが攻撃しなければこの試合は半永久的に終わらない。余計疲れるだけなんじゃないの?」
「今はあなたの力量をはかっているだけです。まぁそろそろいいですかね。」
俺はそう言うとグンッとヤツとの距離を詰めた。
ヤツは俺の剣が振り下ろされている間に気づき、
咄嗟に目を閉じる。
ドウッと衝撃が走り、軽く風が起こった。
ヤツがそっと目を開けると、当たったと思ったはずの俺の剣がギリギリで当たっていなかったことに気づいただろう。
呆気にとられているヤツの脚を払い転ばせる。
そしてそのままじっと立つ。
「......クソ!!!このクソ女!!!」
その後も繰り返されるヤツの攻撃を弾いて避けて、
軽く足蹴にする。
その度に少しずつヤツから戦意が抜け落ちていく。
そうして何度やったか、ついに剣を弾かれたヤツが自ら膝をつく。
「そろそろ降参する気になりました?」
「......クソッ...!」
「私がここにあなたを読んだ理由をお教えしましょうか?」
「...何よ...?」
「これですよ。」
「は...?」
「周りを見て気が付かれないんですか?」
そう言われて辺りを見回すヤツは目を見開く。
ヤツの目に映ったのはこの試合を見てヤツに哀れみの視線を向ける人間、嘲笑する人間、そんなところだろうか。
まぁほとんどヤツの想像だけどな。
当然そんな奴らがいない訳じゃない。
だが、そんな奴らがほとんどなわけもない。
それでも、プライドが高いこいつがここまでボロカスにやられ、それっぽいことを言われてしまうと、
嫌な想像を勝手にしてしまう。
絶望に近いヤツに歩いて近づき、嗜虐的な笑みを浮かべながら俺はに問う。
「まだ、続けられますか?」
1度俺を見て、視線を落としたこいつは小さくつぶやく。
「...私の...負けよ...。」
「審判...。」
「あ...勝者、シーナ・ヴォルフフォード!」
先程のような歓声はない。
まぁこんな性格悪い戦いすれば当然か。
これでまた友達もできずらくなるなぁ。
でも後悔はない。それでも俺はあいつらの仇をとることを優先したのだ。
俺の目的は達せられた。
あとはゆっくりと大会の終わりまで見守っておくとしようか。
読んで頂きありがとうございます!
書いてる途中で寝ちゃったり、あまりにも眠い中で書いたためおかしかったりするところがあるかもですが、ご愛嬌で許していただければ...!