17 挑戦状
2章17話です!
よろしくお願いします!
小さな頃から周りは私の言うことを聞いた。
パパもママも私が欲すれば全てをくれた。
可愛いぬいぐるみや綺麗なアクセサリー、流行りの服。
いつでも頼めば買ってくれた。
いつでもかわいいって言ってくれた。
従者も友達も知らない人も、
私を褒めて、称えてくれた。
勉強もできた。運動もできた。魔法の才能もあった。
なんでも、なんでも、なんでも...
やれば周りは褒めてくれた。
15歳になった日、パパとママが王都の学園に行くことを進めてくれた。
合格は確実だった。
筆記も実技も、自分の満足のいく結果を出せた。
でも、そんな時、私が受けるはずの賞賛を、眼差しを横から奪った女が現れた。
シーナ・ヴォルフフォード。
王都から少し離れた場所にある、ランブル王国で1番大きい領土の娘。
先のゴルドリッチ領との戦いで活躍し、
紅蓮の戦乙女とか言われていた。
王都もしばらくその話題でいっぱいだった。
試験でもその実力を遺憾無く発揮し、
注目を集めていた。
合格後も陰で「あの戦乙女が来るらしいぞ」とあの女を持ち上げる発言だらけ。
私を見ているやつなんて1人もいなかった。
だから私から避け、多くの目が集まる場所で問題を起こした。
入学直後からあの女の兄2人の過保護さはすぐに広まっていたから、貶せばなにか起こしてくれると思ったから。
思ったよりも怖かったのは想定外だったけど。
でも、周りは私の想定通り、あの二人を避け、
その妹であるシーナにも同じような目を向けだした。
これであの女は孤立する。
だがシーナは無謀にもアリアと同じようなことをやり始めた。あれはアリアだからできることだ。
あの女にはとても無理だろう。
案の定抱えきれなくなった仕事に根を上げていた。
そこにアリアが現れた。クラスの中心となんだかいい雰囲気になっていた。
孤立どころか友人を増やしていた。
私は今回無理やり付き合わせた取り巻きの信用を少し失ったのに。
ムカつく。
だから嫌がらせのつもりでやってやった。
最初はスッキリした。
やった瞬間はあの女も相当ダメージを受けたようだった。
だが、私はこの日やったことを後悔することになる。
その時はまだ知る由もないけれど。
━━━━━━━━━━━━━━━
アリアさんとの共同作業()を終え、
できた資料を職員室へ運んでいる。
本当に助かった。
一人でやってたら今頃は...。
それに、アリアさんとも少し仲良くなれたと思う。
クラスに1人友達ができるのは大きな一歩になるだろう。
そう思わないか?1号。
え?俺が誰に話しかけているのかって?
作った資料、1号だ。
昔からのくせである。どれだけ作ったか、もう覚えていないが、どんなものを作ったかはちゃんと覚えている。
今回もちゃんと覚えておくだろう。
たかが紙だろうと、俺が一から作った子供のようなものだ。アリアさんとな!
キメェ顔をしながら大量の紙束を抱え廊下を歩いていると、前から歩いて来た誰かとぶつかった。
床にばら撒かれる資料に尻もちをつく俺と相手。
「キャっ!」
この声は女子!早く謝らないと!
「すみません!大丈夫ですか?!」
謝罪を述べながら相手の顔を確認した俺は一瞬顔が引きつった。
俺に突っかかってきていたあのクラスメイトの女子だったから。いけない、また彼女との関係が悪くなる!
「すすす、すみません!!!えっと...」
しまった...、名前を知らんじゃないか。
謝罪を続けようにも続けられなくなる。
起き上がった彼女は俺を一瞥した後、床に散らばった資料を見る。
「...チッ。あんたか。何?お使いの途中かしら?」
「あ、えっとそんなところです。」
「フン、わざわざ面倒な役回りを引き受けて、周りの信用を勝ち取ろうって訳?」
なぜわかった。
「黙ってるってことはそうなのね。かわいそ。そんなことしないと友達すらできないなんてね。」
面白そうに俺に嘲笑を向ける彼女。
全く誰のせいだと思ってるんだか。
「いえ、この位、なんてことは...」
「ずいぶん大変そうね。運ぶのも1人なんて。あ、手伝わないわよ?」
「だ、大丈夫ですわ。あなたの手を煩わせる訳にはいきませんから。」
「...そう、それじゃあね。シーナ・ヴォルフフォード。」
彼女とすれ違い、資料を拾おうとしたその瞬間だった。
彼女の足が1号とそれに被っていた15号を踏み、グシャグシャに潰した。
「あら、ごめんなさいね。足が滑ってしまって。まぁ、数枚くらい新しく作ればいいわよね?」
全ての言葉の語尾にwwwと着くような声で何も想いがこもっていない謝罪を述べる彼女。
ブチリと俺の中の何かが切れる音がした。
くるりと上機嫌に身を翻しこの場を去ろうとする奴を呼び止める。
「おい、待てよ。」
━━━━━━━━━━━━━━━
思わず立ち止まってしまった。
ドスの効いた声は今までのシーナとはまるで別人のものだった。
脱力したシーナはゆらりとこちらを振り向く。
その顔を見た瞬間、なにかとてもまずいことをしたと直感した。
カッと見開き三白眼気味になった目、その目には確かな殺意と怒りがこもっているように見えた。
「てめぇ、こいつらを足蹴にした上グシャグシャに踏みしめやがったな。」
「そ、それが何よ。たかが紙切れの1枚2枚...」
「この学校にはな...、コピー機なんてものはない。」
コピー機?何の話だ。
「版画の要領で、1枚1枚丁寧にインクをつけていく。乾かす時間もいる。つまり、誰一人として同じやつはいないんだよ、こいつらには。」
この女、まさか紙1枚1枚を人みたいに思ってるの?
思ったよりやばい女だったの?
「それにな、こいつらはアリアさんと二人で作ったものなんだよ。俺はいい。こんな理不尽慣れてるからな。だが、アリアさんの優しさ、気遣い。それを無下にしておいて、てめぇ、タダで済むと思ってねぇだろうなぁ?」
アイン、ラーマン以上の気迫で迫るシーナを前に腰を抜かす。眼前まで迫ったシーナは私にあることを言う。
「総合大会に出場なさい。あなたの得意でいい。そこで完膚なきまでに叩きのめして差し上げますわ。逃げればどうなるか、いえ、どうするか分かりませんわよ。」
そう言うとシーナは手際よく資料を集め、立ち去っていった。
学園総合大会...。出場する必要はない。
でも出ておかなければまずいと本能が訴えていた。
読んで頂きありがとうございます!
カラオケにて書いておりました。
カラオケでは歌わないタイプなので
時間は大丈夫でした!