16 変われない女(おとこ)-3
2章16話です!
よろしくお願いします!
兄たちをお叱りした昨夜から夜が明け、
今日も今日とて、クラスに1人。
最近は「あれ?もう来てたんだ、早いね!」
的なあるある会話をしたいと考え、1番最初に教室に入るようにしている。
そんな訳で、職員室に到着。
最初にくるやつは鍵を開けなきゃいけない。
まぁ些細な代償だな。
コンコンとノックする。
「は〜い、どうぞ〜。」
聞きなれた女性の声を聞き、ガラガラと出来れば立たないで欲しい音を立てて扉を開ける。
「失礼します。」
中にいたのは俺たちのクラスの担任
リーン・コルマージ先生。この人も何故かエラく早い出勤である。
「あら、シーナさん。おはよう。今日も早いわね。」
「おはようございます。先生もお早い出勤ですね。」
「新参の大人は大変なのよ。色々やらなきゃいけないこと、覚えることが多いの。シーナさんも大人になれば、わかると思うわ。」
「もう知ってます...」
「え?」
「なんでもありません。」
先生と話しながら鍵を取りに鍵掛けに向かうと先生から声がかかる。
「あ、魔術科1年の鍵はもう開いてると思うわよ。さっきアリアさんが鍵を取りに来たから。」
俺より早く登校する生徒がいるとは。
先生はアリアと言ったな。てことは、
クラスの前に到着し、扉を開けると、
最前列のど真ん中の席に座り、静かに本を読んでいる
女子生徒がいた。
「あら、おはようございますシーナさん。」
「ごきげんよう、アリアさん。今日はずいぶん早いんですのね。」
「ええ、なんだか目が覚めてしまいまして。それから、委員長という立場なのに、毎度朝の作業を誰かに任せっぱなしだったのが、自分の中で納得出来ていませんでしたので。」
いちいち優雅な所作で微笑む彼女はこのクラスの委員長アリア・リブルイス。長く美しい黒髪を姫カットにした、優しい青い目の美少女だ。
「別にお気になさらずとも、私が勝手にやっていたことですよ。」
「そうですね、ですのでこれも、私が勝手にやったことです。」
秀才である彼女は委員決めの際も自ら委員長に立候補していた。彼女の立候補に異を唱える者もおらず、そのまま決定した。入荷して数週間もたっていないが、彼女の働きぶりは正直すごいと思う。いやホントに。
仕事が多いわけじゃない。
ただ、一つ一つの仕事をやる上での対応力が他の人とまるで違う。やったことあるのかと問いたくなるほど完璧に仕事をこなすその姿はあの日俺が夢見ていた未来の自分のようだった。
そんな彼女を見ていたクラスメイトから信頼と信用を勝ち得た彼女はもうこのクラスの中心である。
はっ!!俺も仕事をこなせば信用が上がる?!
そうすれば今の腫れ物みたいな扱いも多少なりとも変わるのでは?!
よぅし!早速今日から実践だ!!!
俺は自分の席に向かい、今日の予定を段取りし始める。
鼻歌まじりのスキップで移動し始めたからか、アリアさんに不思議なものを見るような目で見られた気がした。
1時間目の歴史。
担当の先生が授業の終わりを告げ、
「あ、誰か課題を運ぶの手伝ってくれるか?」
と、皆から集めた無駄に重い課題の移動の手伝いを欲した。
その瞬間ビシっと綺麗に天を突く挙手をする生徒が1人。
俺である。
「では、私が。」
「じゃあ、頼む。職員室の俺の机に置いといてくれればいいや。俺はちょっと用事あるから、やっといてくれ。」
そう言って教室を出ていく先生。
なにか心に小さな怒りを覚えつつ、作業にかかる。
40人分の課題ノート。やはりそれなりの重量はある。が、持てない重さじゃないな。
俺は両手に20冊ずつ持ち、器用に扉を開け教室を出る。
その後もなにかある度に手を挙げ、タスクをこなす。
終わらなかった分は後回しにし、とにかくめんどそうな事柄を引き受け、現在午後の5時。
空はオレンジ色に染まり、カラスが鳴いている。
そんな静かな教室で1人黙々と頼まれた資料を作成する生徒が1人。そう、紛うことなき俺である。
この資料を作ったあとは、あれの提出確認と、それから明日の貼り出し物の作成か...。徹夜コースだなこれは。やれやれ。
ガンッと机に突っ伏し、額をぶつける。痛い。
「これじゃあの時と何も変わってないじゃんかよ。」
終わらない仕事に無駄にやる気をだし、やっぱり終わらなかった仕事を続け、ミスをし怒鳴られる。
おかしいな。俺はただ自分に対するイメージを変えたいだけなんだけど。
泣きそうになりながら資料作成を再開したところで、教室の扉が開く。
「そんな顔するくらいなら引き受けなければいいでしょうに。」
若干の呆れ具合が表情に出ているアリアさん。
ええほんとにそう思います。
「お手伝いは必要ですか?」
そう聞いてくれるアリアさん。
しかし、
「だ.......大丈夫、です。これくらい、日が回るまでには余裕で終わりますよ、ええ。」
面倒な役回りを引き受けたのは俺へのイメージを変えるため。引き受けといて結局できずにアリアさんの手を煩わせるなど、もっと信用を失いかねない。
俺が作業を続けていると、アリアさんが横で次の仕事をこなし始めた。その手際はその道のプロかと言いたいぐらいの良さだ。
「アリアさん、手助けは不要だと────」
「シーナさん。」
手は止めずに一呼吸置いて話し始めるアリアさん。
「私は委員長です。本来なら私がすべき仕事を他の生徒に任せ、オーバーワークで潰れそうになっているのを黙って見過ごす訳にはいきません。」
それにと言葉を続け、優しい笑みを浮かべて俺を見つめる。
「これは私が勝手にやっている事ですので、シーナさんが気にかけることではありませんよ。」
本当にこの人はプロフェッショナルだな。
委員長という仕事の。
その後はもうすごい速さで仕事が片づいた。
アリアさんとの仲も少し良くなった気がする。
このクラスで初めての友達ができるのも、そう遠くないと思った俺であった。
読んで頂きありがとうございます!
クラスの名前とかコロコロ変わっている気が...
まぁ雰囲気だけ分かってもらえればそれでいいかの精神