13 これがパーティ
2章13話です!
よろしくお願いします!
パーティ開始1時間前。
それなりにいい服に着替え、送り迎えの馬車に乗り込む。
久しぶりにこんな服きた気がする。
赤を基調としたドレス。上半身は肌の露出が大きいため、黒のレースのトップスを下に着ている。
メイクや髪もバッチリ決め込んで、気合いの入ったこの格好は全てミリアのコーディネートである。
ファッションもできるようになっているミリアは
だいぶ立派な付き人になりつつある。
馬車に揺られ、街並みを眺める。
夜の街を見ることはあんまりなかったので、まだ新鮮なように感じる。
黒というか紺に染まっている街をオレンジや白の光が淡く照らしている。絵本みたいな幻想的な風景を眺めること約10分。目的のホールに到着する。
入口にたっていた男に名前を聞かれ、答えると扉が開かれる。新入生の名簿で、確認をとっているみたいだ。
中に入るとまず廊下。
真正面の扉を開くと、
そこはかなり広い場所だ。床は絨毯が敷き詰められ、天井は何メートルあるのかと言うほど高い。
そこには見たことないくらいデカいシャンデリアが吊るされており、白金の光で部屋全体を高級感漂う空間に変えている。
少し早いかと思ったが、もうそれなりに人が来ているようだ。
とりあえずまずすべきことは、殿下への挨拶。
やっておかなければ失礼に値する。
それはこれからの交友関係に多大な支障をきたすだろう。
広いホールを歩き、殿下を探す。
一際密集している人だかりを見つけ、近づくと中心にアルレス殿下の姿を見つける。
見つけたはいいが、困った。
どうやって近づこう。
こう人が多いと近づくこともままならないな。
押しのける訳にはいかないし。
「やぁ、シーナ・ヴォルフフォードだね?」
目を閉じ困っていると突然話しかけられた。
話しかけてきた相手は殿下である。
「え、ええ。ご挨拶が遅れて申し訳ありません、アルレス殿下。」
お辞儀をして、とりあえずの挨拶。
「気にしなくていい。君とは少し話してみたかったんだ。よろしく。」
差し出された手を握り、握手を交わす。
男の手とは思えないぐらい綺麗な手である。
「よく、私に気が付かれましたね。」
「君の背でヒールを履いていると、周りの子たちと比べて、頭ひとつ抜けているからね。」
割と高めのヒールを履いた俺の身長はそこそこ高くなっている。
喜んでいいのやら分からない言葉をもらい、
しばし殿下とお話した。
主に俺のゴルドリッチ戦での話だった。
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殿下と別れ、会場を歩く。
途中あった人には積極的に話しかけに行った。
相手の表情や仕草をしっかり見て、話す時間や話題を変えていく。
分け隔てなく接することで、好印象を与える作戦。
さらに、その人に合った話をすることで、ウザいやつみたいな悪い印象を与えないようにする。
話しかけに来てくれた子もそこそこいた。
主に同じクラス、魔術科の人たちだが、他クラスの生徒とも結構喋れた気がする。
ほとんど女子だけど。
女子の間では昼にカノンが言ったようなクラス間の隔たりみたいなのは少ないのかな。
ある程度会場内を周り終わり、適当に入ったグループと話していると、カノンが俺を見つけ、話しかけてきた。
「シーナさん、来てたんだね。」
「あらカノン。あなたは今来たところかしら?」
「うん。少し着替えに時間がかかってね。」
カノンが来ている服はなんというか、白の軍服、というのが1番当てはまるような格好だ。いや、ほとんどの男子が同じような格好ではあるんだが、カノンはその中でも、殿下に続いて豪奢な服のように思える。
俺の格好少し地味すぎたかな。
無地だし、装飾もあまり多くは無い。
やりすぎもどうかと思うが、無さすぎもかえって目立つ気がする。
俺が自分の格好に若干の不安をおぼえていると
カノンが意を決したように口を開いた。
「あ、えっとシーナさん。」
「ん?どうしたの?」
カノンの顔は何故か赤くなっている。
「その...そのドレス、似合ってるね...。」
...地味に今日初めて言われた気がする。
こういう小さなことも褒められる人がモテるのかもな。
「ふふ、ありがと。カノンも似合ってるわ。かっこいいわよ。」
「カッ...!?!?」
耳まで真っ赤に染まったカノンは回れ右して駆けていく。
「じ、じゃあぼ、僕は、ほ他のところにいっ行ってくるね...!」
「う、うん。頑張ってね。」
大丈夫かなあいつ。
見送ったあとはそのままそこのグループと話したり食事を少し頂いたりした。
俺が会場入りしてから1時間ほどたった時、ステージにアルレス殿下が立った。
みんな自然とそこに視線を向ける。
「えー、みな少し僕に時間をくれ。僕はアルレス・ランブル。一応皇太子という立場ではあるが、学園では、ただの一生徒だ。気軽に声をかけてくれると嬉しい。」
挨拶に耳を傾ける。会場はすぐに静かになった。
「新入生代表として、みなとここで誓いたい。騎士学園の新たな風となることを。学園だけでは無い、この国を変えていくために、みなの力を貸して欲しい。ここにいる全員が、世界を変える力となることを切に願っている。これは僕だけの言葉じゃない、父、ガレス・ランブルの期待でもある。この期待に応えられるように、全力で学園生活を送ろう。」
殿下の話が終わるとパチパチと拍手が聞こえる。
つまり、喧嘩はやめようねと言いたかったのだろう。
クラスが違うとは言え、全員将来国を支えるための貴重な人材となる。国のために仕事をしている騎士や魔法士の間でももしかしたらそんな悪い空気が流れているのかもしれないな。
殿下の言葉で皆が気持ちを改めてくれるといいんだが。
その後、さっきまでの雰囲気に戻った会場で会話や食事を楽しんだ。
終わった時間は9時過ぎだった。
やれることはやった。あとは友達と呼べる人が増えていることを願う。
読んで頂きありがとうございます!
絶対に1章よりは長くなります!