12 この日の夜は
2章12話です!
よろしくお願いします!
カノンと話していると、正門に着いた。
話し相手がいると無駄にでかい敷地を歩いてもあまり長く感じない。
「それじゃあ、また明後日かしら。」
「ん?あれ、今日の夜来ないんだ?シーナさん」
「え、今日の夜何かあるの?」
そんな話聞いてないんだが。
いや待てよ。そういえば、俺隣の人に言われたことがショックであとの話はほとんど聞いてなかったっけ。
「今日の夜、近くのホールに新入生で集まって合格祝いって名目でパーティするらしいよ。」
「あの話聞いたあとに全体で集まってやるなんて聞いたらいい雰囲気想像出来ないのだけれど。」
「あはは...まぁ、わきまえてる人は多いだろうから。それに、皇太子殿下も来るらしいし、お近ずきになりたいって人も多いんじゃないかな。」
アルレス・ランブル殿下。
ランブル王国国王ガレスの実子であり、俺たちと同い年の青年だ。そういえば新入生代表だったな。カノンと同じ騎士科所属だ。
「皇太子殿下の前で悪印象が生まれるような行動は慎む人がほとんどでしょうね。」
それなら納得。大きな問題は起こるまい。
俺としては、友達を増やせるいい機会だから是非参加しておきたい。
「行くわ、私も。何時からかしら。」
「えーと、夜の6時半からだね。格好は多分制服じゃなくてもいいと思うよ。」
「分かったわ。ありがとう。」
ミリアに夕食はいらないことを伝えておかなければ。
パーティについて話していると、周りがざわつき始めた。
何事かと校舎側を振り向くと、そこには我が自慢の兄ふたりが並んで歩いている。
それを見ていた男子は尊敬や畏怖、嫉妬の視線を送り、女子は皆一様に女の目をしながら見つめている。
俺の兄ってもしかして有名人なのか。
正門に立っていた俺に気づいたアイン兄さんが手を振っている。
ラーマン兄さんは睨むような視線で凝視してきている。
「やぁシーナ、お疲れ様。」
「お2人もお疲れ様です。上級生も今日は早いんですのね。」
「うん、そうなんだよ。ところで...」
「隣のそいつは誰だ?」
ラーマン兄さんはまだ鋭い目つきをしている。
どうやらさっきからずっとカノンを睨んでたらしい。
カノンに距離を置かれる可能性もあるので出来ればやめてもらいたい。
「彼は入学試験の時に知り合った、カノン・セルニダスです。」
「あの、えっと、カノン・セルニダスです!騎士科に所属しています、よろしくお願いします!」
緊張した面持ちで90度に頭を下げるカノン。
2人の雰囲気に萎縮してしまっている。
「兄さん、あまり私の友人を怖がらせないでください。」
「フン...」
ラーマン兄さんはそっぽを向いて喋らなくなってしまった。
「ごめんね、カノン君。ラーマンにも悪気はないんだ。僕はアイン、こっちはラーマン。シーナの兄で僕は3年、ラーマンは2年だ。よろしくね。」
「あ、はい!よろしくお願いします。」
握手を交わす2人。アイン兄さんが差し出したのが左手だったような気がしたが、多分気のせい。
「シーナにもう友達ができるなんて嬉しいよ。しかも騎士科の生徒だなんて。出来ればこれからも仲良くしてやってくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
まぁ、表面上だけでも仲良くやればそれでいいかな。
ひとしきり会話をしたあと、カノンと別れ、帰路につく。
そこで黙ってたラーマン兄さんが喋り出した。
「シーナ。」
「はい?」
「あのガキはお前のなんだ。」
「なんだって...友達ですが...。」
「ほんとか?あいつの目はそう言ってなかったけどな。」
「一体なんの話をしているのですか...」
「ははは、まぁ許してやってくれシーナ。兄としては、シーナの男性の交友関係ってのは気になるものなんだよ。」
ああ、そういう...。俺もアイン兄さんに話しかけてた女子生徒を品定めしてたし、同じようなものだろう。
「で?どうなんだよ。あいつとは。」
「ただの友人。それ以上でもそれ以下でもありませんわ。」
「...ならいいけどよ。」
過干渉だな。親に似たのかな。
関係が悪いわけじゃないが、ここまで来ると若干のうっとおしさを感じる。
幸せな悩みだろうけどな。
その後は話をアイン兄さんが降ってくれ、
普通に楽しげな兄妹の様子で家に帰った。
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「ただいまー。」
「あ、おかえりなさい。皆さん。」
ミリアがパタパタと小走りで出迎える。
今朝のショックは回復出来てるみたいだ。
「皆さん、もうお昼は食べられますか?」
「私は頂こうかしら。」
「俺は剣を降ってくr...」
「僕ももらおうかな。」
「俺も先に食う。」
「わかりました。皆さん先に昼食ですね。大広間でお待ちください、すぐにお持ちします。」
この屋敷に来て、ミリアも一回り成長した気がする。
以前よりも仕事が出来てる。
実質メイド長みたいなもんだし、それが気を引きしめる動機になっているのかもしれないな。
広間の椅子に座り、待っていると割とすぐに昼食が出てきた。旬の食材をふんだんに使っており、色鮮やかな見栄えは食欲をそそる。
ミリアも加えた4人で食べる。
食事が終わると俺は片付けを始めるミリアに今日の夜のことを話す。
「あ、ミリア。私は今日の夜出かけるから、食事は準備しなくていいわ。」
「へ?そうなんですか?一体どちらに...」
「もしかして、新入生でパーティでもするのかな?」
「はい、よくご存知でしたね。」
「僕らもやったからね。恒例みたいなものだよ。ねぇラーマン。」
「俺に言うんじゃねぇよ。」
これはラーマン兄さん、参加してないな?
どうせ鍛錬でもしてたんだろう。
「大丈夫ですか?ラーマン兄さん。お友達はちゃんと出来ていますか?」
「お前まで変な目で見てくんじゃねぇよ!」
兄をからかったのは初めてな気がする。
その後は片付けを手伝って、いつも通りに鍛錬や勉強をして、時間が経つのを待った。
読んで頂きありがとうございます!
このままだと2章の話長くなるんじゃね?と思ってます!