8 合否の行方は
2章8話です!
よろしくお願いします!
剣術試験に挑み、
見事試験官を打ち負かしてエリアから外れる。
圧倒的手数で攻め立て、隙ができた足を払い尻もちをつかせてからの剣先を向け参ったの言葉を引き出した。
辺りからまたおぉ〜...という感嘆が聞こえ、
嬉しくも恥ずかしいというような思いを表に出さないようにキメ顔で退場してきた。
しかしやっぱりこれでいいのかなぁ。
試験官の実力は多分ピンキリだ。
かなりの腕を持つ人もいれば、そんなでもない人もいる。試験と銘打ってる以上、実力は揃えた方がいいと思うんだが...。何か理由があるのだろうか。
「お疲れ様、凄かったよ...!」
突然声をかけられ意識を戻すと、銀髪の彼が少し興奮した様子で待っていた。
「あら?待ってたの?」
「うん、せっかくだし君の試験を見ていこうと思って。そしたら試験官を倒しちゃうんだもん、驚いたよ...!」
「ふふん!褒めても何も出ないわよ。」
ここまで褒められるとは。
やっぱりなんだかこそばゆいな。
前は何やっても褒められるとかなかったし。
褒められ慣れてないのかもしれない。
せっかくついでに2人で正門まで歩くことにし、
他愛もない雑談を交わす。
「そういえば魔法試験の方でも何かあったみたいだね。ほんとにすごいよ。」
「それほどでも...あるのかないのか。」
「うん?」
「確かに私は強い方だと思うわ。今日いた受験者の中で私より強く、いい成績を残した人なんてそう居ないでしょう。でもやっぱり、私より強い人も確実に存在する。思っているよりもずっと多くね。だから、褒められるのは素直に嬉しいけど、心のどこかでその言葉を受け止めようとしない私がいるの。」
「...僕は、生まれてからずっと周りをがっかりさせてきたんだ。」
寂しそうにポツリと語り出す銀髪の彼。
「生まれた時は期待が多かった。でも、僕にあったのは力だけで、才能はなかった。宝の持ち腐れって言うのかな。褒められた記憶なんて親でもほんの少しだけ。」
黙って話を聞いていると恥ずかしそうに頬を赤らめ早口で話し出す。
「えと、つまり何が言いたいかって言うと...そんな僕だからこそ、本当にすごい人っていうのがわかる気がするんだ。だから、君は紛れもなく凄い人だと思う。きっと。」
「そう、ありがとう。」
一生懸命に褒めようとしてくれてるのがなんだか可愛い。こんな後輩が長くいてくれたら、もう少し辛さも減ったのかな。
自分で考えておいて言うのもなんだが、彼にものすごく失礼なことを考えてしまった。
反省。
そうこうしている内に正門に到着した。
「私はこっちだけど、あなたは?」
「僕は逆方向だ。」
「そう。それじゃあ、入学式の時にまた会いましょう。」
「うん...また。」
軽く手を振り別れる。
合格してくれているといいんだが。
入学前から知り合いがいるというのは非常に助かるのだ。
今日だけでだいぶ距離も縮められたし、友人と言ってもいいのではないだろうか。
あ!しまった!
名前聞くの忘れた!!!
すぐに振り返るも、彼の姿はなかった。
まぁいっか。入学式で会うと言ったのだ。
多分会えるさ。
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帰ってからアイン兄さん、ラーマン兄さん、ミリアに労いの言葉をもらい、いつもの鍛錬と、勉強をした後、風呂に入って夕飯を食べて歯を磨いて寝る。
布団に入り、目を瞑るとぐるぐると視界が回っているような気がする。
明日にはもう合否判定が決まる。
心配はしていないと言ったが、何故か不安になってくる。試験結果待ちの時間ってこういうものなんだよなぁ。眠れる気がしなかったが、人混みに混じった疲れもあってか意外とすっと寝れた。
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朝です。おはようございます。
非常に早起きを決め込んだ俺はベッドから起き上がり、身支度を整え、大広間のソファーに腰掛ける。
持ってきた本を読んでいるが、落ち着かない。
現在朝の5時半。さすがに早く起きすぎだ。
2度寝仕様にもバッチリ身支度整えて来ちゃったため寝てから直すのもメンドクサイ。
落ち着かないまま本を読み、全く内容が頭に入ってこないまま時が過ぎていく。
6時半。広間の扉がガチャりと開き、ミリアが欠伸をしながら入ってきた。
「あれっ、シーナ様お早いですね...。」
「ええ、なんだか目が覚めちゃってね。」
「もしかして、緊張してらっしゃるのですか?大丈夫ですよ!シーナ様ならきっと大丈夫です!」
アホの子ミリアの語彙力の限界。
相変わらず落ち着かないが、元気は出てきた。
よぅし、兄さん達が起きてきたら騎士学園に出発だ。
ご飯は喉を通る気がしません。
大体7時前、アイン兄さんが起きてきて、
7時15分ぐらいにラーマン兄さんが起きた。
2人とも何故か目の下にくまができている。
そして、外へデル準備はバッチリだ。
いつの間にかメイド服に着替えていたミリアも引き連れ、いざ出発。
昨日よりも人が多い気がする街を歩き、
正門前まで来ると、
「これは...」
俺たちの目の前には
人、人、人、
まるで人の森。周囲はごった返し、とても確認どころじゃない。
「僕の時もこんな感じだったなぁ。」
「俺ン時もだ。」
「うぅ...私、人混みはちょっと...。」
「大丈夫?少し離れて休んでてもいいのよ?」
「いえ、やっぱり合格を一緒に見たいですから...。」
顔色が少し青いミリアを支え、人が減るのを待つ。
前に見える人達の反応は様々だ。
合格したのだろう。うさぎのようにピョンピョンと飛び跳ね回るもの。
こちらは残念ながらといったところか、俯き、目を押え、肩をふるわせている。
それを見ていた隣の女の子が
「受かったやつが泣くな」
と真顔で言ってる。
嬉し泣きの方か。あの子も受けたのかな。
そしてもし受けたのならその言い方は...。
苦労人もいるなぁ。
段々と人混みが減り、少しずつ前に進む。
そしてようやく目視ができる位置にまで到達した。
掲示板には、合格した120人の名前が五十音順で書かれている。
一から順番に見ていき、サ行に来ると心臓の音が激しく聞こえ、視界が回る。
思わず目を瞑り、ミリアをギュウと抱いていると、
アイン兄さんから肩を叩かれた。
「シーナ、見てごらん。047番。」
恐る恐る掲示板を見て、数字に目を向けていく。
『047番 シーナ・ヴォルフフォード』
「うわあぁぁぁ!!!シーナ様ぁ!!ありましたよお!!!」
俺が反応するより先にミリアが叫ぶ。
ラーマン兄さんもふぅぅぅと大きく息を吐くと安堵した様子で膝に手をついた。
ようやく状況が見えてきた俺も全身の力が抜け、ミリアに支えられやっと立っていた。
ようやく息をつける。
俺は無事、ランブル騎士学園に合格出来た。
怖かった。
読んで頂きありがとうございます!
学園がメインの舞台になるかなぁ〜と思ってます!
多分!