19 終戦
19話です!よろしくお願いします!
「─────ん...」
「お、目ぇ覚めたか。」
はい目ぇ覚めました。
やけに揺れているなと思ったらベリルの背中か。
ちゃんと運んでくれたらしい。
「オーエンは...ちゃんと、倒せていましたか…。」
「オーエン?黒鎧のことか。ああ、ちゃんとやれてたよ。」
「そうですか...。」
14歳にして殺しの経験を持つとは。
あんまいい気分にはなれないな、やっぱ。
でもこれで、ようやくこの戦いも本当に終わったんだな。いや、まだひとつ問題残ってたか。
まぁこの状況で何も動きがないなら暫くは大丈夫かな。
それから1、2分程移動すると森を抜け、
ヴォルフフォード本陣が見えた。
「ヴァリス様!ご無事で。」
「うむ、私はいい。シーナと負傷兵を早く救護班のところに。」
「はっ!」
「嬢ちゃんは俺が連れていく。」
「頼んだ。」
そのままベリルの背中に身を預け救護班のもとへ。
救護班は本陣の少し後ろにテントをいくつか立て、
怪我人の応急処置に当たっている。
俺たちがついた時は戦いが終わった後だが、
まだまだ手が足りないようで、元ゴルドリッチ領の住人の女性、ヴォルフフォードの屋敷のメイド中心に全員が忙しなく動いている。
「すまねぇ!アンタ、嬢ちゃんを見てやってくれねぇか。」
「えっ...シーナ様!?分かりました、直ぐに!こちらへ。」
近くのテントへ運ばれた俺は装備を外し寝かされる。
「少し失礼しますね。」
「つッ!」
「すみません!少し痛みます!」
「どうだ、酷いか?」
「目立つ傷は脇腹の深い切り傷くらいですが、内側は見た目以上です。折れるまでは行かないまでも、おそらくはかなりの箇所にヒビが入っているかと。」
「よく動いてたなコイツ。」
ほんとにね。
多分アドレナリンドバドバだったんだろう。
事実今は全身痛くて動けない。
これでも我慢してるのよ?
「ひとまず、脇腹の傷は消毒と、ガーゼ、包帯で処置を。骨のヒビは安静にさせるしかないですね。すみませんシーナ様、染みますよ。」
小学校の保健室で見たことあるような茶色とかオレンジ色みたいな薬品を綿に染み込ませ脇腹の傷にチョンチョン。
それは想像以上に染み、あまりの痛みに俺は再び意識を失った。
━━━━━━━━━━━━━━━
次に目を覚ましたのは屋敷の俺の部屋のベッドの上だった。
別に目覚めたら2年だの9年だのだってた訳じゃなく
普通に数時間たった後だった。
しかしたった数時間でもそれなりにことは動く。
目覚めたことを聞いたら一目散に俺の部屋に飛び込んできた父さんと母さんに事後処理について話してもらった。
まず、敗戦したゴルドリッチ領はセルゲイを失ったため、他の代表を立て父との話し合いを行った。
その結果、ヴォルフフォードに併合、財産の全てが
ヴォルフフォードのものとなった。
これでヴォルフフォードはランブル王国で一番大きな領土となった。
もう他の領土から責められるなんてことは間違っても起きないだろう。やったね。
俺の作戦で燃やした森についてだが、
実は作戦開始直後、カリーナが土魔法を使い、薄い壁で戦場周りを軽く囲っていたらしい。
そのため予定より火が広がるといったことも無く被害は最小限に抑えられた。
さすがはカリーナ。オーエンと戦った時遅れてたのもこれがかるからなのかな。
まぁすごく簡単に話すと、ヴォルフフォード大勝利といったところ。
死傷者は現在確認中だが、
ヴォルフフォード側は負傷は多く居れど死者は最小限。
ゴルドリッチ側は死者、負傷者合わせておよそ2500人。あの規模で争ったんだからこれでも少ない方だろう。
とまあ、以上があらましだ。
とりあえず、兄さんより託されたこの地は何とか守り通すことが出来たと言えるだろう。
「そうだシーナ、ちょっと待ってなさい。」
そういうと父さんは出ていった。一体何事だろう。
父さんが出た後、母さんがおもむろに話し出す。
「シーナ。」
「はい。」
「約束は覚えていますか。」
はて。約束...なんだったか。
「無傷で帰ってきなさいという約束です。」
......そういえばそんなこと言ってたっけ。
てか、そんなん無理に決まってますやん。
14歳が初めての戦争で無傷で生還とか...
帰ってきただけでも十分すごいことだと思いますよ私。
「無傷で帰ってこなければ何と言ったか覚えていますか。」
「え、え〜っとぉ〜何でしたかね〜」
「...はぁ、兄さん達を追って王都に行くことを許可しません。という話だったでしょう。」
「あ、はい。そうでしたね。」
えぇ〜本気ぃ〜?
よく帰ってきましたね。あれは冗談ですよ。とかそういう流れ違うの〜?
「お母様、私は─────」
「何と言おうとこれだけ怪我をしてきた娘に過保護にならない母はいません。今のままでは、王都行きはやはり認める訳には行きませんね。」
「...」
そ、そんな...。兄さんたちに会いに行けないとかこの先どうやってモチベ保てば...
俺が絶望していると顔に出てしまっていたか
俺を見た母さんが続ける。
「話は最後まで聞きなさい。今、お父さんが王都より腕のたつ剣術指南を呼んでいます。後1年、必死で腕を磨きなさい。そうすれば許可するとは言いませんが、1年経ってあなたが見違えるほど強くなれば、もう何も言うことはないでしょう。」
1年さらに修行してもっと強くなれと。
俺の答えは決まっている。
「はい!このシーナ、1年で兄すら超えた騎士へとなって見せます!」
まぁ元々修行は続けるつもりだったし、
母さんも認めてはくれたってことだろう。多分。
なんにせよ、目標は変わらずだな。
俺と母さんの話が終わったのと同時に父さんが戻ってきた。
「さぁ、入りたまえ。」
「失礼しまーす。」
父さんに促され入ってきたのは
「ベリル?」
「よう嬢ちゃん、元気そうだな。」
...なんでベリル?
俺が頭に?マークを浮かべていると父さんから説明が。
「実は元ゴルドリッチのものたちから正式にヴォルフフォード領の兵士として雇ってくれと頼まれてね。」
「はぁ...それでなぜベリルがここに?」
「俺が頼んだのさ。ヴォルフフォードの兵士に、お嬢ちゃんの部下にして欲しいってな。」
─────ん?え?
「私の、部下...?」
「おうよ。みんなで話し合ってな。やっぱみんな嬢ちゃんの下で働きてぇんだとよ。俺含めてな。」
話が飛躍しすぎではないだろうか。
さらに困惑した表情になる俺。
「私としても、シーナを守る存在は大歓迎でね。シーナが迷惑じゃなければ、彼らをお前の部下として雇ってやろうかと。」
「私も賛成します。」
母さんは賛成か。まぁ当然だろうね。
「で?どうなんだよ。」
ほんの少し不安そうに聞いてくるベリル。
まぁ断る理由は...特にないか。
「...構いません。よろしくお願いします。」
「...ふぅ、ちょっとヒヤッとしたぜ。断られんじゃねって思っただろ。」
「別に断る理由はありません。急な話だったので驚いただけです。」
「まぁ、シーナの部下という扱いなだけで、基本やることは他の兵士と変わらんだろうから、シーナの一声で動く兵士が出来たと考えてくれ。」
14歳で部下ねぇ。
あのころは勤めて10年くらいでそれなりの階級に昇進したから部下と呼べるやつらは結構いたけどね。
でもここの人たち程のやる気はなかったか。
やる気はなかったが、やるしかねぇという必死さはひしひしと伝わってきていた。
さて、物思いにふけるのもこれくらいにして、
身体を休めるとしよう。何しろとっとと修行を始めないといけないし、
何より、片付けなきゃ行けない問題もあるからな。
読んで頂きありがとうございます!
1章も終盤です!