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元社畜令嬢 〜今世こそは良い人生を!〜  作者: 神代レイ
第1章 初めての異世界
17/91

17 黒鎧と呼ばれた者-2

17話です!

よろしくお願いします!

1番古い記憶はまだ5才の頃だ。

貴族生まれではなかった彼は、暇な時間は近所の子供たちと遊んでいた。


ある日、自分の家の魔法は何属性なんだという話になった。


己が使える魔法は祖先より直系の属性を受け継ぐもの。

まだ自分の属性を知らなかった彼は父に尋ねた。

帰ってきた答えは土魔法。


翌日子供達で集まり、話した。

皆火や雷、氷など、案外バラけた属性だった。

そして自分が土属性であることを話し

各々将来どんな魔法が使えるようになるだろうと盛り上がった。


しばらく話していると、ふと1人が言った。


土魔法ってなんか地味じゃないか?


5才なら言っても不思議はない、悪意のない発言。

彼はそんなことないだろうと返したが、

周りは土魔法が地味であるという発言に同調していた。


彼にはこらえることが出来なかった。

自分だけではなく、家をバカにされたような気がした。


だから戦った。


自分を、家を、家族をバカにした報復として。


自分への、家への、家族への謝罪を求めて。

1人ずつ顔を、腹を、急所を執拗に痛めつけた。


彼はこの時初めて自分が周りよりも強いのだと知った。彼の戦いに飢えた人生はここから始まったのだ。


時に年上のガキ大将のようなものに喧嘩をふっかけるようになり、

それを叱る父に抵抗を示したりした。


成長するにつれ、彼の歯止めは効かなくなっていき、

ついには昔大切に思っていた家族に見限られ、

若くして家無しになった。


それから彼は戦いに明け暮れた。

自分に喧嘩を売った雑魚を痛めつけ、金を貰い、

鎧を買って目に付いた戦場に割り込む。


同じ領土の者たち同士の小競り合いや、

山賊とそれを制圧しに来た騎士、兵士たちの戦い。


乱入してはどちらの者も殴り、切りつけ、

覚えた魔法を使い岩で体を砕いたりした。


その頃から彼は黒鎧コクガイと呼ばれるようになった。

銀に光る鎧に浴びた返り血が固まり、黒く変色した気味の悪い黒い鎧。


その姿は戦いの少ないこの時代でも、

いや、この時代だからこそ、

ランブル王国内にその名を轟かせるに至った。


ある時は鬼神。

ある時は戦場の悪鬼。

ある時は血に飢えた黒。


様々な名で、多くの戦場を渡り歩いた。


彼を止めることが出来るものはもう居ない。

だが、彼はどこか満たされなかった。

昔のガキ大将のように、

自分の前に立ち塞がる、大きな壁を自分でも分からない無意識下で求めていた。


彼が戦い始めてどれほどの月日がたっただろうか。


彼は自分が求めていない形で、

初めて負けた。


彼を負かしたのは

セルゲイ・ゴルドリッチと名乗る男だった。

冗談でも戦いが強いとは言えない。

セルゲイの強さはその財力。


彼の差し向けるものたちなど道ばたの石ころ同然に蹴り飛ばした。


それでもセルゲイは何度も差し向けてきた。

幾度返り討ちに逢おうとも。

休みなく戦い続けた男はやがて疲弊し、その膝を大地につけた。


そんな彼をセルゲイは見下ろし、言った。


「お前のようなものを余は求めていたのだ。選ぶといい。今死ぬか。余の下へ来るかだ。」


なぜ自分がこのようなゴミのような男の下へくだらなければならないのか。


だが、このまま死ぬのは果たして正しい選択なのか。


「貴様の求めているものを当ててやろう。自身を負かしてくれる強者であろう?」


「っ!?...なぜ...」


「余はこれまでの人生、未だ負けたことがない。故に確実に勝てる勝負しかせん。お前は違うな。負けたことがない故に負けを求めてどんな勝負でも挑む。余の考えの真反対だ。違うか?」


強者などではないただの男が初めて自分の考えを当てた。

いや、強いか弱いかは関係ないのかもしれない。

自分と近しくも遠い、そんな男だからこそなのかもしれない。


彼は思った。

この男について行けば、自分の求める好敵手に出会えるのではないかと。


「名を聞こうか、黒鎧。」


「......オーエン。そう呼べ。」


そうしてセルゲイの駒のひとつとなり戦い続け、


ゴルドリッチ領の街の中で、


ようやく見つけた。あの“女”を...。


奇襲と言う形ではあるが、自分に初めて傷をつけた。


この女なら、自分を超える存在になるやもしれない。

いや、もしかしたら既に...。


━━━━━━━━━━━━━━━


「お待ちください、ヴァリス様!」


「待たん!俺は行かせてもらうぞ!」


「そんな死ぬ未来しか見えないようなことを言ってないでちょっと待ってください!」


近衛の騎士の静止も聞かず、戦場へ赴こうとするヴァリス。

それを周りの兵士総出で何とか説得し、この場にとどめようと皆必死である。


「あなたが敵の手に落ちれば、このヴォルフフォードは終わりです!それに相手はあの黒鎧ですよ!?」


「そんなことは関係ない!ヴォルフフォードが終わる?黒鎧相手?それがシーナを見殺しにする理由になるというのかっ!俺の前でよくそんなことが言えたな!?」


自分1人が行ったとて変わらないだろうことはわかっている。それでも、今は娘を助けに行ってやりたいのだ。


ヴァリスは肩を掴む兵士の腕を振り外し、森へ歩き出す。


「話は聞かせてもらったぜ。」


森側から声が聞こえた。

現れたのは


「ベリル...。」


「まぁ落ち着けよヴァリスさんよ。アンタ1人が行っても何も変わんねぇのは自分でもわかってんだろ?」


「だがッ......それでも私は─────」


「残念だがアンタ1人で向かわせる訳には行かねぇな。どうしても行きたいってんなら」


「わかった。ベリル、君を倒し、シーナの元へ!」


「違う!俺も行ってやるって言ってんの!」


「本当かね...?」


「ああ。嬢ちゃんには返しきれん貸しがある。この辺で少しでも返しておきたいのよ。」


「...ありがとう。心強い。」


「フッ...。あんたらもそれでいいか?」


ベリルは呆気にとられていた兵士たちに問う。


「あ、ああ。了解しました。くれぐれもお気をつけて。」


「よし、行くぜ、ヴァリスさん!」


「うむ!」


ベリルとヴァリス、そして、元ゴルドリッチ領の住人兵100数十人。

シーナの元へ、駆ける。

読んで頂きありがとうございます!

休日は2話くらい書きたいよね!

でも、休まないと文字浮かんで来ないよね!

でも書くよね!!!(´∀`)

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