14 開戦
14話です!
よろしくお願いします!
俺がヴォルフフォードに戻って2日たった。
朝焼けが見え始めた早朝、
ゴルドリッチの軍が天罰の森に入ったとの情報が入り、急いで準備を整えている。
「思ったより早かったな。」
独り言を呟きながら鎧を身に纏う。
ゴルドリッチはかなりのスピードで軍をかき集めた。
相当大金をはたいたのだろう。
もはや金を惜しむことはなく、ただの意地でヴォルフフォードを落とすつもりか。
手早く鎧を着込み、訓練所へ向かう。
扉を開け、目的のものを手に取り、昨日より味方兵展開済みの戦場へ。
昨日までなんてことなかった森が、今は俺を拒絶しているような雰囲気を醸し出している。
いや、逆か。
俺がためらってしまっている。この森に入ることを。
「お嬢様。」
突然声をかけられ振り返ると、カリーナが真顔で俺を見つめていた。
「カリーナ...。あなたの持ち場は真反対、ゴルドリッチ側のはずでしょう?」
「もちろんすぐに向かいます。ですが、行く前に一つだけ。」
カリーナはスっと息を吸って俺に言う。
「あなたの作戦は良いものだった。あなたの実力は確かなもの。臆してはなりません。きっとあなたはこの戦場で誰よりも強い。あなたが声をあげ、その目に光が宿る限り、我々が負けることはありませんよ。」
それだけ言うとカリーナはすごいスピードで駆け出した。メイド服で。あの長いスカート出よくあんな動きできるな。さすがぐう有能メイド長。
正直カリーナの言葉を聞いてもまだ不安だ。
でも覚悟は決まった。
やってやる。
俺を誰だと思ってる。
15年続いたあの地獄と比べれば、たった数時間の戦争なんて屁でもない。
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役8000の兵の中心。
セルゲイ・ゴルドリッチは歯ぎしりしながら
体験したことない怒りと味わったことの無い屈辱、
そして変えられようもない自身の勝利を感じていた。
たった14歳の少女に煮え湯を飲まされ、そのせいで余計に自身の財源を消費したのだ。
財を何よりも重要視しているセルゲイからすればそれだけで屈辱。ひとつの領地どころか国一つ潰す事も視野に入れるレベルである。
「あの小娘だけは消さねばならん...!何としても...!」
余計にはたいた財のおかげでかなりの駒を買うことができた。
もはやヴォルフフォードなどどうでもいい。
狙うはシーナただ1人だ。
まだ見えない敵兵、その先にいるであろうシーナを睨み進軍を続ける。
開けた場所に出たその時、突然前方から炎の柱が出現し、それが見えた直後前横から多数の火の手が上がった。
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更地の広場てまえにて、見張りの兵士と合流した。
「様子はどうですか。」
「シーナ様。まだ敵軍は見えないようです。広場周りに等間隔に兵を配備しています。敵が見えたらゴルドリッチ側から、合図があるはずです。」
話を聞いていると、視界の端に赤い光が見える。
見ると火のついたランタンが等間隔に灯っている。
「これが?」
「合図です。敵軍、平地に入ります。」
その言葉のすぐ後、更地に多数の傭兵が足を踏み入れた。
俺は彼らを注視しつつ、敵本隊の平地入りを待つ。
先行した敵兵が安全を確認し、敵本隊を呼び寄せる。
そして本隊が更地に侵入し、しばらくたった後、合図を送る。
立ち上がり、空に向けて、手から魔力を放出する。
柱状に伸びた魔力から次々と炎が発生し、大きな炎の柱となる。
「全隊!作戦開始!!!」
俺の合図でまず、更地の周りの部隊が突撃。
敵が混乱している隙に火魔法使いの一部が点火。
更地に入っている敵を分断し、森の中へ追いやる。
さらに火を放ち、先行していた兵と共に囲う。
後退しようとした敵をふたつに分断し森へ。
残すは中心の少数のみ。
敵の分断に成功し、そのほとんどが森へ下がったのを確認し、中心へ駆け出す。
敵将セルゲイを打倒するため。
ヴォルフフォードを、俺の、兄達の故郷を守るために。
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敵の分断はあっさりと成功した。
やはり寄せ集めだと連携も取れないのだろう。
俺は周りをチラ見しつつ、真っ直ぐに中心へ走る。
ベリル、元ゴルドリッチ領兵士たちの情報でセルゲイが安全な中心に陣取ることを知っていたため、タイミングも合った。
俺が向かっている場所も間違いは無いはずだ。
一緒に待機していた数十人の兵の先頭を駆けていると前方にこちらへ向かって来る多数の敵を発見。
「長槍部隊!準備!」
掛け声を聞いた味方兵半数の長槍持ちが俺の前に出てくる。
敵部隊とぶつかる直前に槍を前へ突き出す。
敵の先頭が槍の餌食となり、怯んだのを見て
「目標、敵の殲滅!全員戦闘開始!!!」
俺は訓練所から持ってきた剣を抜き放つ。
それは刃が潰された、殺意のない剣。
訓練用の剣だ。
戦いで殺しを封じるなど甘い考え、馬鹿のやることかもしれない。
でも、ベリルたちと同じように、
戦いを望まない、ただ、自分の周りの平和を望む。
そう、俺たちと同じ者たちがいるだろう。
そう思うと自然と俺が使うべき剣はこれだろうと思った。
それにこの剣はラーマン兄さんと打ち合った剣。
これを持っていとなんだか勇気が湧いてくる。
敵部隊とぶつかり、激しい戦闘になる。
敵の装備は、鉄製の部分が、胸やスネなど限定的な部分しか守っていない軽装だ。
守られていない部分を刃無の剣で叩く。
後ろから来た敵は剣を逆手で持って無造作に突く。
動きの止まった敵の襟首をつかみ前方へ背負い投げ。
敵の数が減ってきたためまた前方へ駆け出す。
────そこか。
兵士が周りを囲み、その姿は見えないが明らかに何かを守る陣形。
俺は貯めていた魔力を手のひらに集め、
魔法を発動する。ソフトボール程度の大きさの炎弾を生成し、陣形の1人に炎をぶち当てた。
読んで頂きありがとうございます!
まじでどうやって7~10万文字に届かせればいいかわからないです!