13 準備は念入りに-2
13話、よろしくお願いします!
「...嬢ちゃん...アンタそんな感じだったか...?」
「何がです?」
ただ作戦伝えただけだろう。
「いやまぁ、確かに戦場じゃあ人が死ぬなんてのは当たり前だぜ?でも全員生きたまま火炙りにするってのは聞いた事ねぇぞ。」
「何を言っているの。ベリル。私がむやみに人を殺めようなんて考えるわけないでしょう?変なものでも食べた?」
「失礼だろお前。」
「ま、まぁまぁ。それで、シーナ様。その作戦の詳細をお聞かせ願えますか?」
「ええ。といっても対して難しくはありません。敵を火で3つ程にわけ、それを何割かの兵で囲い無力化。残りで敵本隊を攻める。それだけです。」
「しかし、戦う場所はもりです。途中に多少開けた場所はありますが、そんなところに火を放てば我々もタダではすまないのでは?」
「まぁ、多少の火傷は覚悟していただく必要があるでしょう。この作戦は敵本隊を叩くスピードが重要です。」
だがなにも対策がないわけじゃない。
「大火傷を多少の火傷に抑えるために、準備して貰いたい物が。」
「なんでしょう。」
「綿を主に使った長袖の服と下履を。」
「綿...ですか?」
「はい。綿は耐火性に優れています。そして吸水性も高い。戦闘開始前に全員がこれを着て、水をたっぷり染み込ませれば、大惨事にはならないでしょう。」
「なるほど。では、もう1つ。敵を分断するのであれば土魔法で良いのでは?」
「土魔法で壁を作る方法は味方の動き、そして敵の動きも見ずらくなります。相手方にも反撃の機会を与えてしまいかねません。」
火で囲んでしまえば動きが分からないなんてことにはならないし、それだけで動きは止められる。
あとは少ない人数でも炎の外から長槍でチクチク牽制するだけで、かなり多くの敵を無力化できるはずだ。
「嬢ちゃん、俺からも聞かせてくれ。その炎が相手にすぐに消される可能性は?」
「それも問題ないかと。」
非っ常〜〜〜に遅くなったが、魔法の属性は7種類ある。
『火・氷・土・雷・風』の基本の5種類と、
『光・闇』の特殊な2種類だ。
この中で火を消そうと思えば、氷か土だろう。
氷に関しては大した問題じゃない。
でかい氷を生成するにはそれだけの時間と魔力がいる。
俺が黒鎧をぶっ飛ばした時の炎弾は直径2m。
魔力は温存していたとはいえ、俺がそれをつくるのに必要な魔力を貯めるために数時間要したんだ。
並の魔術師ならもっとかかる。
そんな氷作る前に決着はつく。小さな氷じゃ焼け石に水レベルだろう。
土魔法についてはさっきも言ったが、
敵も俺たちの動きが分からなくなる以上そう使わないだろう。
それに”土”なんて言われてはいるが、実際は岩だ。
じゃなきゃ壁になんてならないし。
何が言いたいかと言うと、今回の戦いでは壁作る以外じゃ小石飛ばすぐらいしかできないよって話。
まぁそれはそれで厄介な気もするが。鎧着るし大丈夫かな。
俺は説明を終えると他に質問があるか待つ。
だが、今度こそ全員納得いったのか挙手や声は上がらなかった。
「よし、では次だが────」
それを見た兵士長が会議を次の段階へ進める。
この世界の上の立場に立つ人は、とても有能な人が多い。
全てを俺に押し付けていたあの上司共とは大違い...
「ではシーナ様、あなたにこの作戦の指揮をお願いしたい。」
はい無能。
「私がですか...?」
「ええ。この作戦はシーナ様の発案ですし。みなも反対などしないでしょう。」
周りを見ると期待の眼差しが俺に集中している。
断りずらっ!
「しかし、私は軍の指揮を執ったことなど────」
「大丈夫です。あの作戦を考える頭もある。その上剣や魔法の実力も高い。ウチの兵士たちには、あなたを目標にしているものも多くいますから。いざとなれば私が変わります。」
なら最初からお前がやれば良くない?
「「よろしくお願いしますっ!!!」」
声を揃えて90度のお辞儀をする大人たち。
俺...14歳ですよ?
いや中身は50近いおっさんですけどね?
俺は死んだ魚のような目で天井を見上げ、
歯を食いしばった。
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ヴォルフフォード領とゴルドリッチ領の境に存在する
大規模な森、俺が産まれる前から皆ここを
『天罰の森』と呼んでいる。
森の中に存在する意味深な円状の更地が天より降り注いだ神々の怒りによりその地には森が育たないと言われているから、らしい。
ちょっと何言ってるか分からない
まぁ、今回はここに敵さんの本陣を来させる予定なので、天罰なんて名前もあながち間違いじゃないかもな。
俺は皮袋から油をドッポドッポと撒き散らしながら
物思いにふける。
現在、作戦会議より数時間後。
敵を分断するための下準備中だ。
この油のある地面は炎が早く回るだろう。
油の道を作り、そこに火を灯せば、あっという間に
炎の壁完成と言うわけである。
火をつけるのは数十名の火魔法使い。
点々と散らばった彼らが俺の合図で火をつける手筈だ。
木々が生い茂る『ちゃんと森ゾーン』含めてそれなりに広範囲に及ぶため、数十人規模のの大作業になっている。
他の必要なものもちゃくちゃくと集まっているようだ。街の皆さんが協力的でありがたい。
なんでもシーナの名前を出せば、基本なんでもくれるらしいです。
俺なんかしたかな。ていうかなんもしてないやん。
街すらちゃんと見たの一昨日だよ?
不思議だ。
油を撒き終え、屋敷に戻る。道中、偉い数の罠が準備されていた。
戦いでは、迎撃の方が有利らしいけどこういう事も関係してるんだろうな。
「シーナ、少し来なさい。」
屋敷につくなり、父さんに声をかけられる。
頷きついて行くと、物置として使われている部屋の前に来た。
父さんに促されギィィッと少し重い扉を開くとそこには────
「わぁ...。」
薔薇を模した装飾がなされた白金色の軽鎧。
鎧として、守るべきところは守られているが、
動きの邪魔にならないように、できるだけ鉄製の部分は小さくされている。
「鍛冶屋に作らせたんだ。シーナに着せる鎧を作ってくれとな。エラいやる気になって一晩で仕上げて来てくれた。」
ここでもか。でもいいか。
かっこいいし。
改めてじっくりと鎧を見る。
綺麗な装飾やピカピカに仕上げられた鎧もそうだが、
赤のインナーには胸や腰のチラ見せ穴など、
造り手のこだわりを感じる気持ち悪。
嫌いじゃないけどね。
「ありがとうございます!お父様!これでちゃんと帰って来れる確率がグンと上がりました!」
「お前にそう言って貰えたなら、作ってもらったかいがあったと言うものだ。」
父さんは嬉しそうに微笑んでいる。
「シーナ、私も後ろで応援しているぞ。」
「ありがとう、お父様。アリの子1匹たりとも、そこへは行かせませんわ。」
父さんに自信たっぷりに宣言し、背を向け歩きだす。
開戦まであと少しだ。
読んで頂きありがとうございます!
仕事めんどいけど、休み時間に書く小説と日に日に伸びるPV数で元気を出してます!