11 兄の懸念、嫉妬、辟易。
5章11話です!
よろしくお願いいたします!
ランブル王国・王都、ヴォルフフォード別邸。
今日も今日とて優雅に紅茶を嗜む長男アイン・ヴォルフフォード。それをつまらなそうに見つめる次男、ラーマン・ヴォルフフォード。
日も落ち始め、空は別世界に来たような綺麗なオレンジ色に染まっている。ラーマンが帰ってきたのはついさっき。剣術クラブの手伝いを済ませてからである。つまりアインの方が早かった訳だが、アインもアインで生徒会の仕事や卒業に向けての論文作成などやることは多い。何が言いたいのかと言うと2人の帰る時間はそれほど離れていないはずなのだ。
だと言うのに今、次男の前で鼻歌混じりに紅茶を飲む長男はバスローブを身にまとい、ロッキングチェアに腰掛け、どこで拾ってきたのかと問いたいクロネコを膝にのせ、優しく撫でている。
次男は長男の生態がいまいちつかめないでいた。
「シーナは今頃何してるんだろうね?」
「......んだよ急に。」
「少し気になってね。」
「別に、部屋で友達とだべってんじゃねぇの?つーかお前、平気なんだな。」
「何がだい?」
弟から見て、兄の妹に向ける愛情というのは非常に重いものである。アインの行動原理は基本シーナがゆる〜く暮らせるようにするため。そんな兄がだ、妹が男子もいる3泊4日の旅行に行ったというのに平気な顔して紅茶を飲んでいる。はっきり言って予想外である。
「てっきり、王宮に行った時みたいに取り乱すもんだと思ってたからな。」
「何言ってるんだい?あの時の僕は冷静そのものだっただろう。」
どの口が...
「それに、あの子もダンジョン調査を楽しみにしてたからね。邪魔なんてできないよ。」
そういえばそうだったなとラーマンは考える。自分からしてみれば、行ったところでそれから関わることの無い洞窟探検なんて何が楽しいのかさっぱりだが...
「何が面白いのかねぇ...」
「日常には無いもの、非日常的なものが好きなんだってさ。」
「シーナが言ってたのか?」
「ああ。シーナは冒険者に向いているね。」
「やらせんわ冒険者とか。」
「僕もオススメする気は無いよ。命の危険と隣り合わせなその日暮らしなんてね。」
街にもいないことは無いが、やはり妹が冒険者になりたいと言った時素直に背中は押せないだろう。
「僕はそれよりも海の方が気になるよ。」
「なんでだよ?」
アインはティーカップを置いて少し真剣な顔つきになる。
「実は昨日、アベレージ領の領主から学園に1報が入ったんだ。海の様子がおかしいってね。」
「何?」
「なんでも、漁に出た船員の話では、魚たちが随分興奮していたそうでね。加えて、そこ辺りでは見ない深海からの生物も現れ始めてるんだとか...」
「......」
「何もなければいいんだけどね。」
アインはロッキングチェアに身を預け天井を見上げる。
「俺はてっきり水着の話すんのかと思ったぞ。」
「ラーマン...僕が妹の水着に欲情でもすると思ったのかい?たしかにシーナのことは好きだけれど、ちゃんと兄、妹としての自覚は持っているつもりだよ。」
「そうじゃなくてよ。あいつの水着とか俺たちだって見たことはねぇわけだろ?同級生の奴らに先越されて悔しがってんじゃねぇかってな。」
「........」
アインはもう一度天を仰ぐ。そのままの状態で、1度大きく息を吸った。
「スゥーーーー.......なぁ、ラーマン。」
「んだよ?」
「お風呂で水着っていうのも乙だと思うんだよ」
「絶対着てくんないと思う。」
そんなヴォルフフォード兄弟のくだらない馬鹿話を聞き流しながら、今日もミリアは仕事に励む。
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「シーナ...」
カノンはシーナとそのクラスメイトの男子が落ちていった縦穴を見つめる。
「シーナァァァ!!!」
大きく叫ぶ。返事は帰ってこない。ただ自分の声が虚しく響くだけだった。音からしてかなり深い。そのまま地面にぶち当たれば当然生きてはいられないだろう。
「いや、大丈夫...きっと彼女なら生きてる...!」
カノンはシーナが生きていることを信じて覚悟を決める。後ろでは他の生徒が呆然と見つめている。
「みんな!1度戻るよ!早く救助隊を編成してもらうから!」
引率のネリトが声を上げる。他の生徒はその声に反応し、出口に向かって走る。
「何してるんだ!君も早く!」
穴を見つめしゃがんでいたカノンに声をかけるネリト。その声を聞いたあと、カノンはゆっくりと立ち上がり、ネリトたちの方を見る。
「僕は2人のもとへ向かいます。」
「何っ!?」
「必ず戻ります...救助隊の要請、お願いします。」
それだけ言い残し、穴に飛び込んだ。向かいの壁に当たりそうになった瞬間に両手両足で壁を押す。反対の壁に当たる前に反転。そしてまた壁を押す。反転する事に何メートルか落ちていく。長くなるだろうが、しょうがない。剣がない今はやれることをやるしかない。
「シーナ、無事でいてくれ...!」
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