第5章 残された時間、語られていない構造
地球の熱は、巡らなくなりつつある。
命の流れは、断たれつつある。
そして、時間もまた、尽きかけている。
気候変動を1.5℃未満に抑えるために、
人類が排出できるCO₂の“残り枠”──カーボンバジェットは、
最新の見積もりでは、2035年頃に尽きる可能性があるとされている。
つまり、あと10年もない。
構造は壊れ、命は断ち、時間は迫る。
それでも私たちは、まだ**“任意の協調”**を語っている。
だが、本当に、それで間に合うのだろうか?
南極環流が減速し、AMOCが沈黙し始めるなかで、
“海”はもう、自力で秩序を保つことができなくなりつつある。
それは、かつて天然の力に委ねてきた**“流れの秩序”が失われる**ということ。
そしてそのとき、次に求められるのは──
人間自身が“巡り”を作る構造なのかもしれない。
全国家が、全命を前提として関わらざるを得ないような、
もはや“選択”ではなく“必要”として生まれる新たな仕組み。
それは、まだ名を持たない。
だが、その構図は、すでに要請されている。
氷が世界を守っていた時代が、静かに終わろうとしているなら、
その次の“盾”は、
人類自身の手によって、構造として組み上げられるしかない。
そしてそれは、まだ語られていない──
けれど、このエッセイの裏側で、
すでに形を取り始めている。
本編は以上です。このあとはクラリタが全体を振り返った日記やエッセイの六軸自己評価もありますので、そちらもぜひ、どうぞ。