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コロン様主催企画参加作品。

菊池のえじき


俺はひきこもり、1年近く前までは高校1年生だったけど陰湿な虐めにあい、不登校を経てひきこもりになった。


親父が爺ちゃんの遺産として受け継いだ賃貸しマンションの最上階にある俺の部屋に閉じこもり、朝から晩まで筋トレをして1日を過ごす。


筋トレを始めたのは、虐めの原因が身体だけが大きいだけのウドの大木、脂肪の塊のデブだったから。


筋トレのお陰で身体が引き締まって逆三角形の体格になり、150キロ近い体重の脂肪の塊だったデブの面影は無くなっている。


筋トレを終えそろそろ寝るかって時間、外が異様に騒がしい事に気がついた。


窓を開け高台にあるマンションの眼下に見える街の中を見渡す。


パトカーや消防車に救急車のサイレンが街の至るところから響いていた。


何かあったのか? と久しぶりにテレビを点ける。


点けたテレビには緊迫した表情のアナウンサーが映し出され、次々と渡される原稿を読んでいた。


「世界各地で死者が起き上がり生者に襲いかかり、襲った人の身体を食べています。


襲われた人もその場で亡くなると同じように起き上がり、他の人に襲いかかっています。


国立細菌研究所の木口首席研究員の話では、何らかの感染性のある病原菌が蔓延しているのではと語っていました。


今入ってきたニュースです。


総理官邸で事態の把握に努めている釈氏(きくち)総理が、戒厳令を発令し国防軍に出動を命令しました」


ニュースを観ている俺の耳に拡声器から流される音声が入る。


ベランダに出て下を見るとパトカーがゆっくりと走りながら、マンションから1キロ程離れた場所にある通っていた高校が避難場所になった事を告げていて、今直ぐに避難するように促していた。


マンションの前の道をゆっくり走り去るパトカーの赤色灯を暫く眺めていたら、マンションの出入り口からマンションの入居者が次々と出てきて高校の方へ向かうのが見える。


周囲を見渡すと、他のマンションや住宅からも人が出てきて高校の方へ向かって歩きだしていた。


俺も避難しようかどうしようか迷った後、避難するのを止める。


通っていた高校、自然災害などの避難場所としては適していたと思うけど、ゾンビみたいなモンスターパニックの避難場所としては心許ないように思えたからだ。


それに部屋の冷蔵庫に詰まっている肉が勿体ないからね。


隣の両親の部屋に行き、親父の趣味で数丁あった狩猟用散弾銃の1丁の銃身と銃床をぶった切り短くした散弾銃とサバイバルナイフ、それにマンション内の部屋と1階の賃貸し店舗の錠の全てを開けられるマスターキーを持ってくる。


5階建てマンションの最上階は俺と両親の部屋だけなんで、4階の部屋から入居者が在宅してるかしてないか調べていく。


1フロア4室で2階から4階の都合12室、いくつかの部屋は空室だったけど全ての入居者が高校に避難したのか無人。


次にマンションの裏手にある入居者と貸店舗の来客用駐車場に行く。


自家用車持ちの入居者は車で避難したのか、駐車場はガラーンとしていて1台の車も停まっていなかった。


駐車場の普段は開け放しの観音開きの格子状の門を閉める。


ガシャーン!


と音を立てて門を閉めたら、道路側から血まみれの男が「ウ、ガガァァ」と言葉にならない声を発しながら、格子状の門に縋りつきガチャガチャと門を揺する。


もしかして、此れが死者に襲われた人の成れの果てか? 


格子の隙間に頭をねじ込もうとしてる奴の頭にサバイバルナイフを突き立てねじ回す。


死者が起き上がって生者を襲うって事はゾンビだろうから、頭を傷つければ倒せるはずだとの思いからの攻撃。


案の定血まみれの男はその場に崩れ落ちた。


それからマンションの出入り口のシャッターを下ろす。


此れでマンションの隔離は終わった。


此の日そのまま部屋に戻り眠りすに就く。


翌日からは各入居者の部屋や貸店舗、不動産屋、イタリア料理店、喫茶店、インドネシアだったかカンボジアだったかの人が営んでる東南アジアの食料品店などから、水や食料品などを持ち出し両親の部屋に置いた。


あと、各入居者の部屋や貸店舗から冷蔵庫や洗濯機などの家財道具を持ち出して、エレベーター前や階段の踊り場などゾンビがマンションに侵入しても妨害できるように、マンションのあちらこちらにバリケードを築く。


うちのマンションは屋上にソーラーパネルがあるから電気は当分大丈夫だし、水は飲料水にするには躊躇するけど駐車場の片隅に井戸があるから水も何とかなる。


数日で籠城の準備が終わった。


籠城の準備が整ってから最上階の俺の部屋からマンション前の道路を見下ろす。


マンション前の道路を多数のゾンビが徘徊している。


道路のゾンビを眺めていたら、高校のある方角から自動小銃や拳銃の発砲音が立て続けに響いてきた。


高校のある方角に目を向けると黒い煙が立ち上っていくのが目に映る。


発砲音に惹かれてマンション前の道路を徘徊していた多数のゾンビが、高校がある方向に移動していく。


と、高校がある方から鉄パイプやバットを振り回しゾンビの頭を叩き割りながら、5〜6人の人が此方の方へ走ってくるのが見えた。


俺は銃身と銃床をぶった切った散弾銃をベルトに差し込み、自動式散弾銃2丁のうち1丁を背負い1丁を手に持って1階のシャッターの前にいく。


シャッター脇の扉を細めに開けて此方に走ってくる人たちが近寄るのを待つ。


近寄ってきたとき扉を開け、彼らに声をかける。


「オイ! 此方だ」


俺の声に気がつきマンションの前を駆け抜けようとしていた男女が、マンション内に転がり込んできた。


転がり込んできた男女6人を見て俺は顔を顰める。


男4人に女2人のうち、男3人と女1人は俺を虐め不登校に追い込んだ奴等。


俺は6人に散弾銃の銃口を向けながら結束バンドが入っている袋を6人の前に放り、話す。


「それで手と足を結束しろ」


「なんでだ? アレ? お前菊池かぁ?」


「菊池ってデブの?」


「体型変わってるけどコイツ菊池だろ。


菊池の癖に上から目線で話してるんじゃねー!」


最初に虐め主犯の鬼口が気がついて俺を脅してくる。


だから俺は躊躇う事無く、鬼口の足目掛けて散弾銃の引き金引いた。


ドォーン


「ギヤァァァー!」


「舐めてもらっちゃ困るなー。


助けてもらったら、ありがとうって言うもんじゃないのか?


まぁお前らみたいな屑を助けた事を俺は今凄く後悔しているよ。


結束バンドで手足を結束しろってのは、ゾンビに噛まれると数時間後にゾンビになるってテレビでやってたから数時間、動けないようにする為だ」


「痛ーえ! 痛ーえ! 頼む止血してくれー!」


「お前ら手足を結束する前にコイツを外に放り出せ、さっきの銃声で外にはゾンビが集まってきてるだろうから、直ぐ骨にしてくれるだろうさ」


「ヒィ! た、助けてくれ、頼む」


「だったら舐めた事言うんじゃねー」


「わ、悪かった、謝る、謝るから助けてくれ」


「くださいだろ? 頭悪いなー」


「助けてください、お願いします」


「フン、まあ良いだろう。


オイ! お前、袋を破って結束バンドを取り出して他の奴等の手足を結束しろ。


引き千切られるとヤバいから手は後ろ手にして1人5本、足は10本使え。


確認するとき緩かったらお前の足にも鉛玉撃ち込むからな」


名前を知らない女の方へ袋を蹴り飛ばして指示する。


女が他の奴等の結束を終えると俺が女を結束した。


銃声と鬼口の罵声などでシャッターの外にゾンビが集まったきているらしく、シャッターが外から叩かれ揺すられる。


揺すられるシャッターを見ながら結束した奴等に声をかけた。


「此処でちょっと待ってろ、動けないんだ騒ぐなよ。


此れ以上騒ぐとゾンビが雪崩こんでくるかも知れないからな」


そう言い捨てて俺は部屋に戻りミネラルウォーターのペットボトルの蓋を外し、お袋が医者から処方してもらっていた睡眠薬を溶かし入れる。


睡眠薬入りのミネラルウォーターを持って奴等の下にいき水を飲ませた。


「此処は暑い、熱中症で死なれたら目覚めが悪いんで1人1杯ずつ飲ませてやるからありがたく思え」


眠り込んだ奴等を両親の部屋に運び込む。


此れで肉の備蓄が増えた。


親父とお袋の肉だけじゃ心許無かったから助かったわ。


ただ鬼口だけは、小説のザ・ロードに出てくる哀れな男のように、生きたまま手足を切断して食料にするのも良いかも知んないな。






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