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ノアの方舟  作者: 望月真昼
盗賊団編
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ナイトウォーカー

4話


「団長、足はえーよ。疲れてきた。あ~~もう、ごめん」

そう言って同年代の男の子がおさげの女の子にタッチする。

「えぇ……」

女の子はどうしよう、どうしようとおろおろしている。

「あ~、あ~、ダッセ、ダッセ。かっこ悪う」

今は村の子供たちと鬼ごっこをして遊んでいる。魔術が使えたり、剣術も使えたり、元が成人してる人格だから知識という部分だけでなく性格も大人っぽく見えるのだろう。子供たちからは団長と呼ばれている。ガキ相手にお山の大将気取るっていうのも元の年齢を考えれば大分痛い行為だ。遊戯王でガキ散らしてるオタク君以下だけれど、子供の内は子供らしくこれが己のモットーだ。

己に続いてほかの子供たちもダサーと囃し立てる。

「しゃあーないじゃん!? もう10分も鬼してるんだもん」

ぜーぜーと膝に手をつき、汗をたらりと流している。少年の体は日焼けをしていてる。所々にかすり傷や瘡蓋があるのは、この年ならあった方が健康的と言えるだろう。

「女子はタッチ返しありだからな~。ロイが疲れてる今のうちにやったれ~」

「ちょっ、だんちょ、余計な事いうなっての」

「女子に捕まったらダサいぞ~」

おさげが少年を追いかける。息を切らしながら逃げるが、このまま粘着されるといくらロイでも捕まってしまうだろう。そもそもが、ここにいる男子の中では一番足が遅いから鬼になっていた。女子に捕まってしまうのは可哀想だし、頃合いを見て、変わってやろう。

と、ロイが鬼を擦り付けに走ってきた。捕まってやってもいいんだが、なんだかな、擦り付けられるのは気が悪い。そうだな、気が変わった。逃げるか。

己は体を翻し、逃げる姿勢をとると、30メートルほど先の木陰から少女の人影を視認できた。ポカンと鋭い八重歯を見せながら、しげしげと。仲間に入れほしいのかと思い、ひらひらと手を振る。

「あ……」

逃げられた。

己がにかっと笑うと、自身を認識されていることに気づき、そそくさと逃げ去っていく。

「わっ、振られてる。団長が振られたぜ~」

そうやって己をバカにするのはルイ。ルイ、レイ、ロイのアホ三兄弟の長男だ。

「子供のくせに変に大人ぶってるからさ。ナルシ気取ってさ。そういう痛さが伝わったんだよ、きっとさ」

レイが本質をついたいじりをしてくる。よっぽど己の羞恥が嬉しかったらしい。語尾が単調になっている。

やぁだな。はっずかし。

「うっさいなああ!」

おさげのもとへ行き、手をパンと弾き、鬼を変わってもらう。レイの反応速度は速かった。すぐに自身がターゲットになっていると気付き、逃げ始めるが、遅い。

レイの目前に2メートルほどの土壁が出現する。

「魔術!? 印結んだの見てないぞ!?」

「はい、タッチ~」

「くっそ~。そもそも、魔術禁止だってのぉ」

「ルールは破るためにある」

「知ってるよ。あんたすぐルール破るし、警戒しとったよ。あ~、あれか、鬼変わってもらった時、人の手を借りての象印か」

「よく、気づいたな。才能あるよ」

気づかれるとは思っていなかった。結構、頭いいんだよな。いじりも的確でユーモアがある。己が修行でいないときはみんなのまとめ役になっている。

「うっせ、うっせ。上から目線うぜ~。みんな集合!」

ぞくぞくとレイの周りに子供たちが集まる。己を倒すための作戦会議か。

ふと、さきの少女について思慮を深める。あの少女、ここの子供たちにはない独特な気配がした。というより、己たちとは少し在り方が違うような、人ではないのかも。

濡烏の髪は夜闇に溶け込むような、他の色を吸い込むような、ベンタブラックという単語が脳裏を過る。己も今はこんなバカみたいに明るい青色のふざけた髪色をしているが、前世は当然、日本人であったので黒髪には懐かしさを感じる。

「っと、危ないな」

作戦会議が終わったのか、次々と子供たちが己へと襲い掛かってくる。己はそれらを軽くいなす。ちらちらと作戦会議を盗み聞きしていたのだが。

この作戦は鬼が誰かを惑わすためではなく、誰でもいいから己にタッチできたものが鬼だったことにするという悪逆な作戦だ。ひでえ。

ロイにああも言ってしまったことだし、十五分は魔術なしで耐え、後十分は魔術ありで耐えたが、子供の体力というのを見誤っていた。最終的には捕まってしまった。

子供とガチで遊ぶというのもいい修行になる。バカにはできないなと思った一日だった。


吸血鬼は自身の特性を発揮することによって紅く目が光るものもいる。

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