氷城の紅月 その6
23話
元第三位と一戦交えてすぐに、霧の森へと子供たちを連れて戻った。
より重傷の己のために、ぐじゅぐじゅの足を引きずらせながらおぶらせたのは流石に申し訳が立たなかった。
彼は決して痛そうな素振りを見せなかったが、額に絶えず浮かぶ脂汗が彼の状態を物語っていた。
「ごめんな。僕のせいで。人を傷つける魔法ばかりで、癒す魔法はどうにも」
「いいよ。君が無事ならそれで」
心の底からノアの身だけを案じていることが分かるいやに優し気なピットの声音。
それはまるでカルト教団の教祖かのような危ないカリスマ性を覚えさせる。
「っち」
きゅんと乙女のような顔をするノアさんを見て、メヌエットは不愉快に舌を鳴らす。
ピットが居なければ、ノアは死んでしまったいたのだろうことは理解しているし、最大限の感謝も覚えている。
ノアがピットに対し、強い信頼を覚えるたびにメヌエットは焦燥感や危険を覚える。
彼は果たして、背中を預けるに足る人物なのだろうか。
信用は出来るが、信頼は到底できそうにもない。
「ただ、王都には急がないといけないかもしれない。治療は早ければ、早い方が後遺症も少ない。日程自体は少し無理をさせてほしい」
「当然だ」
それは自身のためというだけでなく、ノアの状態を鑑みての判断。
彼らはひと月の旅の予定を半分にまで詰めて、王都に到着した。




