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ノアの方舟  作者: 望月真昼
霧隠れ編
26/41

質の悪い悪戯 その1

20話


「ワイバーン?」

「魔物の一種、鬼とゴブリンの関係に近しいな。知性を持たない龍の成り損ない」

己はメヌの疑問に答えを示す。

ワイバーン、説明した通り、龍の成り損ない。知性は低いが飛行能力に図体が無駄にでかい。一体だけでも周囲の2,3の村を焼き滅ぼす凶悪なモンスター。

それがなぜ話題になっているかというと。

「近隣の村に目撃情報、それも4、5体と。結構、ヘヴィーだね」

「合同討伐依頼。みんな気合入ってるなあ」

周囲は20人行くか行かないかほどの冒険者がいる。見た感じローブを羽織った軽装の魔術師が多いが、筋骨隆々で己には持ち上げることも困難な重装備の戦士も見受けられる。

己たちもだが、パーティーで受けている。己たち含めて5、6くらいのパーティーだな。

「にしても良かったのかな? めっちゃ見られてるんだけど」

子供である己たちがこんなガチの現場に採用されているのはおかしなことだ。飛び級でC級になったとはいえ、C級なんてプラスの要素にはならない。

「龍殺しの子供なんて縁起物だよね」

それでも文句を言われないのは目前のこの男の存在が大きい。ピットはA級の上澄み、ここのメンバーでも頭一つ抜けて位が高い。

「親がその名に恥じないくらい強ければよかったんだけど」

正直に言って、メヌを彼女の両親から預っている以上、こんなちょいとでも危険なクエストなんて受けたくもないんだが、ここでこのワイバーン共を退治しとかないといえない理由があった。

ワイバーンの軌道に故郷がぶち当たってるんだよな。飛行能力がなければ、親父でもどうにでもできそうだが、厳しいだろう。飛ぶ斬撃というのもあるにはあるのだが。

たんまりお金を貰いながら、故郷の安全も守る。断る理由のないクエストだった。

「ただ、嫌な感じだな」

己を見つめる奇異の瞳の中に少ないが、敵意が混じっている。チビがA級引き連れてお遊び感覚でC級になったと面白く思わないのだろう。実際、事実ではある。

しかし、戦争の際には子供を縁起物として担ぐという習わしがこの世界にも存在する。ピットのいうように龍殺しの子供なんて縁起物、好意的に受け止めてくれるかと踏んでいたが、こればっかりは仕方がないな。

彼らの気持ちも理解できる。働きで見返してやればいいさ。

馬車を進めて30kmほど、ワイバーンの群れが視認できる。一体当たり、3~4m、先頭のおそらくはボスであろうものは6mは優に超えるだろうか。

「畜生のくせに頭は回るみたいだな」

真ん中の一体と右翼左翼のワイバーンの二体ずつが散開する。リスク分散、全員生存を目的とせず、種を残すために散開する。自身の命を平等に非情に秤にかけられるのは動物の貴い部分だな。人ならここまで思い切った判断はなかなかできない。

「真ん中のはボクが引き受けるよ」

この中で最も実力のあるピットが真ん中のボスを相手取るのは決まっている。

「僕は右を追いかける」

「じゃあ、私も」

当たり前のようにメヌは追随しようとするが、己はそれを制止する。

「いや、メヌはピットについてやってくれ」

「どうして?」

「めんどくさいことになりそうだからな」

それでもてくてくと付いて来ようとするメヌをピットに押し付ける。

これ幸いにと右翼に参入しようとしてくる輩の目は上空ではなく、己を映している。


別れてから5kmほど、ワイバーンの方も巻こうとくねくねと入り組んだ軌跡をたどるため、本隊が見えなくなるところ、つまりは第三者の目が入らない場所まで来た。

「だよね」

暗器の投げナイフと、風魔法の鎌鼬がまず、己を襲った。それをもともと張ってあった塵芥の盾で防御し、続いて大振りの力任せの攻撃を受け流す。この程度の攻撃なら技を使う必要もない。

己に追随したのは三人、シーフと魔法使いと剣士のパーティだ。己が孤立するなり、すぐに襲ってきた。ワイバーンには目もくれずにだ。そのせいで目標を逃してしまった。ワイバーンを倒すことは簡単だが、目標を取り逃すより、こいつらに手を出させて、己を狙う理由を聞く方が重要だと判断したためだ。

「なっ、防がれた!?」

「落ち着け! うまいことはけたなとは思っていたことだ」

魔法使いが慌てふためくのと対照的に、戦士の方は互いに誘い出しあっていたことに気づいていたようだ。

「お前等、パーティーを組んでCランク止まりの一般人に毛が生えた程度の味噌カスだろ? 僕を狙う理由がどこにある?」

「ガキのくせに!」

シーフが蛇のような動きで距離を詰めてくる。魔法が当たらないようにうねうねと、確かに魔法は当てづらいし、スピードはある。

「嘘だろ? 素で力負けしたのか?」

「ぬるい。本気で来い」

迫りくる兇刃が己を貫く前に手首を掴んで止める。相手が子供ということもあって無意識にでも力をセーブしていたのだろう。簡単に止められた。

「セロ」

既に印は済ませてあった握った手首を爆発させる。ピットの真似事だ。シーフの手首は骨がむき出しになり、薄皮一枚繋がっているという形になる。

「があああ!!」

握った手首を軸に回転、右足を振りぬき、苦痛に叫ぶ彼を吹っ飛ばす。

5mほど吹っ飛ばされた彼は強く地面に衝突、意識を失い戦闘不能。

「援護しろ」

「了解。恵みの雨は形を変え、信仰なき者に神罰を与う。水龍」

空気中から集めた水分が水球となり、徐々に龍へと姿を変えていく。魔法使いの詠唱からして第四位階魔法の水龍に違いない。その水龍が己のもとへ一直線に向かってくる。

「龍というにはちと貧相だな。水龍」

「詠唱破棄!?」

己の詠唱破棄された水龍は彼女のそれと衝突、いとも容易く打ち破り、打ち破ってなお、進む水龍は彼女の体を爆ぜた。

「あと一人」

詠唱破棄が凄いわけでは無く、詠唱破棄された魔法が詠唱込みの魔法を打ち破ることが魔法の練度に大きな差がある証明ということだ。

「ジェーン! ヤバい、このガキ!」

間合いに入った戦士が大剣を振り下ろす。スピードはないが、かなりのパワーだ。シーフの時と同じことをしたら死んでしまう。しかし、ムラクモを使うほどのことでもない。己は武具生成で生成した出来合いの剣で大剣を軽く流す。

「妖剣・九重」

九回の浅い斬撃が大男を襲う。そして最後の一撃で大男の手首を切り落とす。


魔力操作

魔法の真価をどれほど発揮させられるか、練度を示す指標。

詠唱破棄にはそれなりの練度が必要であるし、詠唱破棄した魔法が

完全な魔法を打ち破るのにも練度の差が必要である。

そしてそれは本人のセンスも重要な要素であるが、魔法の練習に必要な

魔力量とは一定の関係が存在する。

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