万能の魔女
今回で一章の盗賊団、フラテル編は終了です。一応かなり設定を作りこんでいて、
最終回までのある程度のプロットは出来ています。ゆるりと投稿を続けていきたいと思っていますので
ブクマ等々で応援お願いします。
12話
己の誕生日、ムラクモをめぐっての騒動から約2か月後、ついにその日がやってきた。
「もうちょっとゆっくりしていってもいいんじゃない?」
「限界ギリギリ。さすがにあの手で長旅するわけにもいかなかったからね」
包帯を巻いた右手をひらひらと今見ても痛そうである。印を結ぶ手は魔術師にとって生命線。ファイドの魔法では完治させることは難しく、自然治療と掛け合わせでなんとか形にはなった。王都に行って本格的に治療するらしい。ただしファイドの応急の治療も役には立つ。後遺症は多分残らないらしい。あの傷で後遺症残らなそうなのはファイドがかなり優秀であるかららしい。
名残惜しそうなファイドの声、しかし地理を把握している己からすると、本当にぎりぎり、ポンコツ入ってるオズのことだから、おそらく始業には遅れるのではと感じている。
「オズ、これを受け取れ」
ジェームズが小包の袋を手渡す。オズは紐を解き、封を開けると、そこにはそこそこな金貨が。
「いらない、いらない。悪いよ」
「いいから、取っておけ。気に病むなら今度、ノアに高い飯でも連れてってやれ」
旅にトラブルはつきもの、路銀はどれだけあってもいい。オズは渋々といった感じで受け取った。
「寂しい? ノア」
膝を丸め、己と同じ目線にかがむ。
「別に。あと3年もすればそっちに行く予定だし、いやでも、寂しいかもしれないな。オズがクビになってたら会えないもんね」
「生意気な。最後まで変わらない奴だな」
「オズが最後にしなきゃいいんでしょ」
あと3年、10歳にもなれば己は王都の学校に行こうと思っている。将来設計としては両親のどちらかの家の当主になろうと思っているので、経歴的に行かざるを得ない。
「そっか~、ノアももう少ししたら出ていくんだもんね。ちょっと気分悪くなってきた」
王都の方に骨を埋めるつもりはない。必要な地位をあちらで築いたら、両親を王都でなくとも、実家の方へと招待するつもりだ。
「私はノアより君の方に興味ある」
「やっぱり、私も王都に行った方がいいのかな?」
オズの瞳には傍らのメヌエット、彼女の才覚はオズ、現時点での己をも上回る。えぐい法陣を普通に使いこなしてる。正直なことを言えば、羨ましい。あれがあればいつかは白髪に追いつく日も来るはずだ。己の当分の目標はフラテルよりも強くなることだった。オズはちょっとどうでもよくなった。
「確実に行った方がいい。親元を離れることになるわけだし、強制はできないけど。昔の私なら嫉妬で軽くヒス起こすレベルの才能」
相変わらず、オズの学生生活には気になる部分が多い。今までの言動から考察するに強気で敵愾心むき出しの嫌な女だったんだろうな。分かる。
「ノアは王都に行かなくとも大成するだろうなとは思うけど、メヌエットは教えられて伸びるタイプ。この2カ月で大分様になったと思うよ」
この2カ月、メヌエットも己同様にオズから教鞭を受けていた。
「私なんかが受かるのかな」
「その法陣がある以上、絶対受かる。むしろ試験で良く見せないといけないのはノアの方」
学園とは才覚ある若者を鍛える場所、将来性込みでメヌエットが受かることはほぼ確定と言える。逆にノアは法陣を持っていないので、試験で魔法や剣技を見せなければいけない。第三位階魔法を扱えるのはかなり希少だが、相手は世界一の学園。数検1級だけで東大には入れないだろう。
「あまり話過ぎたら乗り遅れてしまう。そろそろお別れさせてもらうよ」
「うう、バイバイ、オズ。今度は私達が王都に遊びに行くよ」
「うん。待ってるよ、みんな」
己の在学期間が何年になるかわからないが、ファイドも何度かはこちら側に来ることもあるだろう。長期休みになればこちらから出向く。ただ、片道一カ月かかるかというくらいの距離感なのでそう気安く行き来は出来ない。
「私は君と離れるの寂しく感じたよ、ノア」
少し歩いたオズは、振り返りそういう。まったく素直になれないのは己の方だけらしい。最初こそ、口の悪い態度に面食らったが、日々の授業も窮地に助けに来てくれたことも、善性を持ち合わせた尊敬できる大人だ。
「やっぱ己も寂しい! 大好きだ」
大声で叫んだ。オズは恥ずかしいやつだなと流石に顔を赤らめ、ファイドは口を手で覆い、悶えてる。メヌエットは機嫌が悪い。
齢7歳、今までどうしても後ろ髪を引かれるように生きてきた。
全てに恵まれたこの環境なら第二の人生を謳歌できるかもしれない。
オズ
魔力量D(S)
魔量操作A
肉体強度E
継戦能力E(B)
知力S
結界B
精神C
彼女の低い自己肯定感が根を張る深層意識はまだまだ、幼げな良識を
手放せずにはいられない。精神の成長にはノアとの出会いは最良だろう。
近い未来、ノアを支えられない足手纏いの自分に絶望するから。




