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ノアの方舟  作者: 望月真昼
盗賊団編
10/41

stranger S treasure

8話


「オズ、ちょっといい?」

こんこんとドアをノックされる音とともにファイドが声をかけてきた。

「こんな時間にどうしたの?」

時刻は2時を少し回ったころ、明日の授業の準備はとうに終わっており、自己研鑽として魔術教本でも読み返していた時だった。

「第25回家族会議を始めます」

ファイドがいつにもまして変なテンションである。この会議に参加するのは初めてではない。3回目になる。

「議題はチキチキ、ノア君の誕生日プレゼントを決めようの会~」

「そんな大きな声出したら、こんな深夜に集まった意味がなくなるよ」

「失敬失敬、気持ちが逸っちゃった」

ノアの誕生日は6月21日。この家に来てからもうそんなに経ったのか。楽しいことばかりで時が過ぎるのが早い。

「ノアの誕生日なのに毎年、ノアより楽しみにしてるよな」

「当然、親だもん。ジェームズがすかしすぎなんだよ」

ファイドのバカ親ぶりは今に始まったことじゃない。彼女がノアにべたつきまくっているせいでジェームズが放置され気味であることも知っている。

「ちなみに今までは何あげたの?」

ひとり盛り上がるファイドをしり目にジェームズに耳打ちする。

「ノアはクールな奴だからな。誕生日がもはや自分のイベントではなく、ファイドのイベントだということを悟ってる。どんな代物をもらってもファイドのプレゼントが一番嬉しかったという出来た反応を返す。つまり、そういうことだ」

なるほど、花束みたいなもらって困るものを毎年ファイドが与えているということか。一番、乗り気な奴ほど微妙なものをというのはファイドらしい。

「私たちは親だから当然ノアにはプレゼントを渡すのだけど、(絶対に二人で一つのプレゼントなんて真似はしない。ファイド単体でノアにプレゼントしたいという強い意志)一応、客人だし、催促したいわけじゃないの。被りは嫌ってだけ」

「問題ないよ。私も送ろうと思っていたし」

「考えてくれてたんだ。ちなみに何を送るつもりなの?」

「現金」

「却下」

「なんでさ!? 一番合理的でしょ!? 特にノアみたいな聡い子には」

「それは俺もどうかと思うぞ。思春期ぐらいの子供ならその方がいいのかもしれないけど」

「とにかく絶対却下だから。もっとましなの考えて。自分が子供のころなに貰ったかでも思い出してさ」

「残念でした~。生まれてこの方誕生日プレゼントは現金オンリーでした~」

「可哀想に……、そういえば、親と上手くいってなかった時期があるって言ってたね」

確かに親と上手くいってなかった時期はあったが、それと誕生日プレゼントは別に関係ないです~。人の家庭に口出しするのもどうかと思いますよ。特にびみょ~なプレゼントを渡されるくらいなら現金の方がマシだと思うんですけど。

「ちなみにジェームズは何にするの? オズみたいなふざけたこと言ったら結婚生活の危機かもしれないよ」

「そんな脅しかけなくったてちゃんと考えてるよ。前にオズとノアで魔物狩りにいったろ?」

「行ったね。ヘルハウンドを狩ったよ」

「その時持って帰ってきたヘルハウンド。実は売りに出してないんだ。時季外れだけど、初めて狩った魔物の毛皮でつくったコートにしようかなって。ここらへん、冬になるとすごく寒いし、実用的で思い入れ深いだろ」

「めっちゃいいじゃん!」

「相変わらずこういう神経使うこと得意だね。変わってない」

私達二人に褒められて、いつも冷静な彼が少し、得意げになり顔が赤くなっていた。

そうだな。ジェームズの話を聞くと自分ももう少しいいものを上げたいという気持ちが湧いてくる。ノアは存外、子供らしい一面も多い。特に村の子供たちと遊ぶときは意図してそれを押し出している気がする。となると、子供みんなで遊べる子供らしいものを上げるのも喜んでくれるかもしれない。

「決めた。私はサッカーボールを送るよ。ノアの好きなイカサマができるよう魔術を組み込んでみるよ」

第四位ほど凝ったものは作れないが、ブービートラップくらいなら容易なはずだ。容易と言っても腐っても魔道具、私レベルでないと作るのは難しい。ん、私でなくでは作れない唯一の品物だし、悪くないんじゃなかろうか。

「いいと思うぞ」

「さっきよりは随分良くなったんじゃない?」

こいつはどの口で偉そうにしているのだろう?

「そういうファイドは何を渡すつもりなの?」

「百パー手作りのうさぎのぬいぐるみを送ろうと思うよ。こういうのは手作りってのが大事なんだよ」

私とジェームズは閉口した。

「ふぁ~、よく寝た。さてさて」

本当によく寝れたものだ。連日連夜、己の誕生日が近づくにつれざわざわして、例年同様サプライズとして己の寝ている間に置くつもりなのは知っていた。まあ、己は前世のころからクリスマス当日はぐっすり眠れるよう調整する方の子だったし、肝心のプレゼントの内容も出来る限り耳に入れないようにするタイプだったしね。だからこそファイドのプレゼントが余計怖いのだが。

「それはそれで楽しみではあるんだけどね」

眠気眼であたりを見渡す。プレゼントのひとつはすぐに見つかった。

「……。へえ、これは凄いな」

一瞬、息を呑んだ。その精巧さは浮世離れしていた。正道をいくようなものではなく、むしろ怪しげな妖艶さを纏っていた。プレゼントをこのように評すのは良くないのだろうが、一目見ただけでこれは高いものだと分かった。両親ともども名のある名家出身だ。おそらくだが、その家宝の一つではないかと推測する。

「こんな綺麗な業物、アニメや漫画でも見たことなかったよ」

ノアが抱きかかえたそれは本来は片手で扱うものなのだろうが、彼の今の身体では両手でぎりぎり扱える代物であった。妖刀、名をムラクモ。


№3妖刀ムラクモ。至高の二振り、その片割れ

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