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仕事

そうやって、紫貴と穂波の関西詣では終わった。

帰りの飛行機で、穂波があれからの事を話してくれたのだが、克彦は一気に老け込んだ顔をして戻って来て、宗太にどうして相手の事を教えてくれなかったんだ、と責めるようなことを言っていたらしい。

宗太は、父さんのプライドが許さないかと思って言わなかった、と留めを刺すようなことを言い、食事の席は気まずい雰囲気で終わったのだそうだ。

結局、後で百乃が根掘り葉掘り彰の事を聞かれたらしいが、海外帰りのお医者様、とだけ答えたらしい。

あまり詳しい事を話して、めんどくさい事になってもと思ったのだそうだ。

そもそも、医者という職業だけでこんなに贅沢はできないので、こちらに祖父の遺した不動産が山ほどあるからなのだが、その中には会社もあって、知られて何かされたらまずいのだ。

生活しているのは関東だが、経済の基盤はこちらにあるからだ。

そんなわけで、お茶を濁すようなことを言って、詳しい事は知らぬ存ぜぬで通して、もっぱら凌いでいると百乃が知らせて来てくれていた。

彰は、もうそんな克彦の事は忘れていつもの毎日を過ごしていて、きっちり一緒に行動した十回に一回は、今回は一人がいいか、と聞いてくれるようになった。

とにかくしっかり覚えているので、その十回に一回が、結構近い頻度でやって来るので、紫貴もいちいち答えるのが面倒になって来た。

何しろ、朝に聞かれて夜になってまた聞かれるということがあって、いくら何でもこう毎回だと、自分から言い出したものの、さすがに自然な生活ではなかった。

なので、言った。

「彰さん、あの、大抵は一緒でもいいですので。むしろ、もう十回に一回とは言わず、一人が良かったらこちらから言いますので。毎回十回に一回聞いてくださらなくてもよろしいですわ。」

彰は、驚いたように紫貴を見た。

「え、もういいのか?」

紫貴は、頷いた。

「はい。その代わり、一人が良い時にはそう言いますから。ほとんど一緒でも構わないと思っていますから、問題ありませんわ。」

彰は、そんなことでも嬉しそうに紫貴を抱きしめた。

「そうか、ほとんど一緒でもいいのならもう聞かないでおく。一人で居たい時だけ言ってくれ。」

紫貴は、いつまで経ってもこんな感じなんだなあと微笑ましく思いながら、彰を抱きしめ返した。

彰は、それにまた嬉しそうに笑って、そうして幸せそうに紫貴の髪に頬を摺り寄せていた。

紫貴は、そんな彰を見上げながら、そういえば、もうすぐ彰さんのお誕生日だなあと、何をプレゼントしようかと思っていたのだった。


彰に何かあげる時というのは、基本的に買って来るものは渡さなかった。

彰は何でも買えるし、そもそもが彰のお金だからだ。

だが、手作りといってあまり良いものも渡すことができず、最初はケーキだ何だと紫貴が作って食べさせてそれで凌げていたのだが、段々に渡すものも無くなって来た。

こうなって来ると、何かを買いたいところだが、自分のお金というのがない。

どこかで働いて、彰からではないお金で、何かを買ってあげたい、と紫貴は思っていた。

だが、働くとなるとまた彰に許可を得なければならないし、そもそもそんなに屋敷を空けたら彰が探し回って大変だろうと思われた。

どうしたものかと悩んで細川に相談してみると、細川がそっと要に聞いてくれて、そして要からそれを聞いた、博正が紫貴に会いにやって来た。

博正は、研究所に住んでいるわけではなく、街に妻の美沙が住んでいるのでそちらへ帰って基本的には暮らして居た。

狼になれるので、博正はいい運動だと走って山を降りて帰るらしい。

森の中を最短コースで走り抜けるので、特に時間は掛からないと言っていた。

車で道をうねうね行くと一時間はかかるので、確かに効率的だった。

そんな博正が、彰が研究所へ出勤した日の朝に、突然に現れたのだ。

アカリとハオウが騒ぐので、何事かと思うと、博正は困ったように立っていて、言った。

「オレが人狼なのがあいつらには分かるんだなあ。こりゃ乗馬は無理だな。」

紫貴は、驚いて言った。

「乗馬に来たの?だったら無理かもしれないわ。二頭とも、厩舎に入ってしまったもの。」

博正は、苦笑して首を振った。

「いや、そうじゃねぇ。要から聞いたよ。仕事を探してるんだって?短期のやつ。」

紫貴は、そのことか、と頷いた。

「そうなの。彰さんのお誕生日が近いから、できたら私が稼いだお金でお祝いしてあげたくて。内職みたいなものでもいいのですけど。」

博正は、笑った。

「内職じゃあそう稼げねぇよ。もうすぐバレンタインだから、美沙の知り合いの店で人手が欲しいらしいんだ。その間だけでいいみたいなんで、困ってたからどうかなって。洋菓子の店で、カウンターのこっちから注文聞いて売るんだけどよ、この季節はラッピングを頼む人が多いらしくて。そのラッピングをして欲しいって。」

紫貴は、胸の前で手を叩いた。

「まあ!ラッピングなら若い頃スーパーのパートでやったの!できるわ。」

博正は頷いた。

「だと思った。紫貴さんは器用だからな。じゃあ決まりだな。繁忙期がもう始まってて、できるだけ早く来てもらいたいらしい。オレが送り迎えするから、出勤できる日は外に出て来てくれねぇか。拾って連れてくよ。で、また送って来る。あいつが出勤の日にシフト入れとくか。」

紫貴は、頷いた。

「そうしてくれたら助かるわ。ありがとう、何もかも。週に三日でも、大丈夫かしら?」

博正は、頷いた。

「美沙が話をつけてくれてるから大丈夫だと思う。とにかく一度店に行って話を聞いて来ようや。今から行けるか?」

紫貴は、慌てて屋敷の中へと足を向けた。

「待って、着替えて来ないと。履歴書は?」

「要らねぇよ、ただの手伝いなのに。そもそも履歴書見たらびっくりするぞ。歳が見た目と合ってねぇしな。」

言われてみたらそうだった。

今の紫貴は、とても61には見えないのだ。

「じゃあ、スーツじゃ堅苦しいかしら。でも、ちょっとかっちりした服に着替えるから、待ってて。」

博正は、また頷いた。

「急がなくていいよ。」

それを聞いていた細川も、紫貴の服選びを手伝ってくれた。

紫貴は、これで彰に何かお祝いをしてあげられる、と、嬉々としてその洋菓子店へと向かったのだった。


それから、紫貴はその小さな洋菓子店へと、彰を見送ってから出掛ける日々を続けた。

久しぶりの仕事はとても楽しくて、彰が下界と呼ぶ場所での皆との語らいが、とても久しぶりで新鮮で仕方がなかった。

毎日ウキウキとしていて、さすがに彰も紫貴の様子に気が付いた。

なんだか最近、楽しそうなのだ。

「紫貴?何か良いことでもあったのか。最近何やら楽しそうだな。」

彰が言うと、紫貴はギクリと肩を震わせた。

彰を驚かせたいので、まだ言えないからだ。

「…そうでしょうか。あの、確かに毎日楽しいですわ。」

店でも頼りにされるようになった。

紫貴は英語も話せるようになっているので、客の中に外国人が居ても難なく対応できるし、重宝がられている。

ラッピングにも慣れていて、速いのでよく褒められた。

なので、楽しいのだ。

彰は、怪訝な顔をした。

「ほう?毎日代わり映えしないと思っていたのだが、それなら良かった。」

本当に納得しているのかはわからないが、彰はそう言った。

細川もメイド達も、会話は聞いているはずなのにどこ吹く風といった様子だ。

彰は解せなかったが、それでも特に何も言う事なく、その日は暮れたのだった。


次の日、彰と要がいつものように出勤しようと迎えのヘリを待っていたのだが、エンジンの不調で急遽他のヘリを準備していると言って、少し遅れていた。

紫貴は、出勤時間が迫って来るので内心焦っていたが、彰が出て行ってくれないとここを出ることもできない。

なので、ただ黙ってヘリが来るのを待っていた。

やっとのことで、半時間遅れでヘリが来て、彰と要が乗り込んで行くのを見た後、すぐに細川が言った。

「奥様、お時間が。もし良ければ門の外まででもお送りしますか。」

紫貴は、首を振った。

「駄目よ。メーターが動くし分かってしまうから。きちんとあの車に乗ったら表に付けているでしょ?大丈夫、もしかしたら遅れるかもしれないって言ってあるの。主人の見送りが終わらないと家を出られない事情は話してあるから。もう博正さんが待っていてくれるだろうし、急いで着替えて来るわ。」

細川は頷いて、いつもならヘリが遠ざかるまで玄関扉で見送っている紫貴だったが、その日はそれをメイド達と細川に任せて奥へと駆けて行く紫貴を見送ったのだった。


一方、彰はヘリからその様子を見ていた。

いつもなら、ずっと見送っていてくれる紫貴の姿が、スッと奥へと消えたのだ。

…どうしたのだろう。

今日は、特に何をするとか、何も言っていなかった。

だが、あの急ぎ方だと、恐らく最初から決まっていた何かがあったはず。

彰は、じっと地上を見つめた。だが、どんどんと屋敷が遠ざかって行って、紫貴が出て来る様子を見ることはできなかった。

彰が、眉根を寄せて地上を見ると、ふと見慣れた車が目についた。

…あれは、博正の車ではないか。

よく見ないと分からないが、森の影に隠れるように、そこにあった。

そういえば、最近博正の顔を研究所で見ない。

彰は、眉を寄せた。

博正は、どうしてあんな場所で、いったい何を待っているのだ。まるで、ヘリから見えないようにと、あんな森の中に潜むように…そもそも、あいつは車など使わないのではないのか。狼で走って出勤して来る、はず…。

彰は、背筋を寒いものが走るのを感じた。

もしかして、博正は紫貴を待っているのか。

思えば、博正は最初から紫貴と仲良くしていた。

紫貴は大きな犬が好きだと言い、博正は犬ではないが、よく研究所に居る間は狼になって紫貴とフリスビーを取って来いという犬がする遊びなどに興じていた。

犬扱いされることを嫌がる博正が、紫貴には快く応じてそんなことをしていて、紫貴は紫貴で狼の姿の時は博正に抱き着いたり、頭を撫でたりと可愛がる様子を見せていた。

狼の姿でも博正なのだと彰が引き離したのでそれからはそんな事は無いが、もしかしたら隠れて会っていたのだろうか。

考えてみたら、昨日も乗馬をしようとアカリを呼んだが、あれだけ懐いている紫貴の臭いを嗅ぐと、怯えたような目をして少し距離を取っていた。

紫貴は、気分が乗らないのなら仕方がないとすぐに離れて乗馬を諦めたが、あれはもしかしたら、博正の臭いが残っていたからではないのか…?

そう思うと、全てが繋がる気がして、彰は愕然とした。

そうだ、紫貴は彰が居ない間、外で博正と会っていたのだ。

最近の、妙に楽し気でうきうきとした様は、そういうことだったのか…!

彰は、遠ざかって行く屋敷を見つめながら、しっかり確かめなければと、震えて来る手を抑えるのに苦労したのだった。


執務室へと入っても、何も頭に入って来ない。

要が、上の空の彰に困惑したように言った。

「彰さん、どうしたんですか?さっきのデータの解析も、上の空だったじゃないですが。なんか自動的にやってるロボットみたいな。」

彰は、要に話そうかどうか、悩んだ。

だが、紫貴が博正とそんな関係になっているかもしれないなど、とても口に出すことができなかった。

なので、言った。

「…最近、博正を見ないがあれは出勤しているのか。」

要は、話題が変わったので目を細めたが、頷いた。

「来ていますよ。でも、彰さんが出勤している日には来てない事が多いみたいなんで、会わないかもしれませんね。真司なら居ますけど。呼びます?」

彰は、首を振った。

「いや。別にいい。」

言われてみたら、真司だって狼なのだ。

それなのに、博正。

そもそも博正は、美沙という妻が居る。同じ人狼で、今も若々しい姿を保っていると聞いている。

それを今さら、どうして私の妻を…。

考えれば考えるほど、彰には二人が怪しいとしか思えなかった。

要は彰のそんな様子に困惑していたが、結局一日満足な仕事もできず、研究所を後にすることになってしまったのだった。

「彰さん?聞いてます?」要が、ヘリから降りて歩くのに、脇から言った。「だから明日ですよ。今日、満足な事ができてないんですから、明日も来てくれないと後が続かないんです。分かりました?」

彰は、息をついた。

「…分かった。分かったというに。うるさいぞ、要。」

言えるものなら要に言いたい。

だが、こんなことを要に言うのは、憚れて口に出せなかった。

トボトボと屋敷へとたどり着くと、玄関では細川と、紫貴とメイド達が出迎えていた。

「おかえりなさいませ。」

皆が彰に言って頭を下げる。

彰は、頷いた。

「…今日は空腹ではないのだ。先に一人で風呂に入って来たい。」

紫貴は、慌てて頷いた。

「分かりました。お着替えを脱衣所に持って行っておきますわ。どうぞ、お風呂へ行っていらして。」

彰は頷くと、さっさと風呂へと向かい、皆が驚いているのを背で感じながら、脱衣所へと入った。

…どんな顔をして紫貴を見たらいいのだ。

彰は、服を急いで脱ぎ捨てると、風呂へと飛び込んだ。

湯の熱さも何もかも、もう彰にはどうでも良いことだった。

紫貴が、博正と会っている。

自分が居ないところで、一日一緒に居るのだろう。

そんなことが、許されてもいいのか。

自分はこんなに愛しているのに…裏切られるということが、どんなに苦しいことなのか、知っているはずの紫貴が、ああして私を裏切って、博正と会うというのか。

彰は、涙が流れて来るのに、湯船に顔を付けて堪えた。

こんなに苦しい事なのか…どうして紫貴は、あんなに平気な顔をしていられるのだ。

彰は、ひとしきり泣いた後、顔を上げた。

だが、まだはっきり分かったわけではない。

紫貴が毎日ほど出掛けているのなら、細川やメイド達が知っているはず。怪しいと自分に報告して来ないのだから、そんな事があるはずがない。

彰は、気を取り直して勢いよく湯船から出ると、紫貴が置いておいてくれた服に着替えて、出て行った。

すると、細川がやって来て、言った。

「旦那様、お食事はもう召し上がりませんか?奥様も、だったら軽く済ませると仰って。先ほど部屋へとお帰りになりました。」

彰は首を振った。

「今夜は要らない。ところで細川、聞きたいことがあるのだ。」

細川は、眉を上げた。

「何でございましょうか。」

彰は、じっと細川を睨むように見て、言った。

「紫貴だ。毎日、私が仕事の時はどこへ出掛けているのだ?」

細川は、驚いた顔をした。

彰が、それを知っている事実に驚いたのだ。

だが、そんな時の対応は心得ている。

なので、言った。

「奥様には、最近街の洋菓子店に、菓子の作り方を習うと仰ってお出かけになられます。もうすぐバレンタインデーでございますので。」

彰は、眉を寄せた。

「…ならばなぜ送り迎えをしないのだ?車の走行距離は、伸びていないだろう。」

言われて、細川は全てを把握している彰に取り成すのは難しいと思いながらも、言った。

「運動のために歩いて行かれると。なので、徒歩で向かわれております。」

運動のため…。

街まで、結構な距離があるのに。

彰は、せっかく気を取り直したのに、また疑惑の芽が伸びて来るのを感じた。やはりそうなのか…町へ出掛けると言って、歩いて出て博正の車で出掛けているのか。

「…わかった。」

彰は、そう答えたが、しかし心の中では激しく感情の波が荒れ狂っていた。

やはりそうなのか…!だが、調査をさせなければ分からない。それでも自分が普段使っている調査班にはこんなことは言えない。ここは…。

「…少し出掛けて来る。紫貴は先に寝ていろと伝えてくれ。」

「え?」細川は、こんな時間からと驚いた。「お待ちください、では車を…、」

だが、彰はそのまま出て行った。

そして、自分で運転して出て行ったのだった。


「別に私は構いませんが、兄さん。」樹は、言った。「どうしたんですか?こんな時間に。あんな大きな車を路上に放置しては駐禁取られますよ。コインパーキングに停めてください。」

彰は、言った。

「それどころではないのだ、樹。頼みがあるのだ。」

樹は、自分のマンションで寛いでいたのだが、頷いた。

「分かりました。とにかく、待っていてください。私が停めて来ますから。」

樹は、路上に放り出されたセンチュリーを移動させ、きちんとコインパーキングに停めてから、部屋へと戻って来た。

彰は、樹のマンションのリビングでソファに座り、憔悴し切った様子で下を向いていた。

樹は、驚いて車のキーをテーブルの上に置いて、言った。

「コーヒーをお淹れしましょう。」樹は、側のサーバーへと歩み寄って、言った。「特別に焙煎してもらった豆で。」

彰は、答えない。

樹は、ため息をついて彰好みと聞いている、砂糖をガバガバと入れて、牛乳を入れたコーヒーを持って、彰に手渡した。

「さあ。」と、自分もコーヒーのカップを手にして、彰の前に座った。「どうしたんですか?兄さんらしくないですね。こんな時間に、何も言わずに来るなんて。」

彰は、その甘くてぬるいコーヒーに口を付けて、思い切ったように顔を上げた。

「…すまない、いきなり来て。もう、君にしか頼めないと思って。実は、紫貴のことなのだが。」

樹は、眉を上げた。

あの、兄が下にも置かないほど愛している女性がどうしたというのだ。

「…義姉さんが何か?」

彰は、下を向いて言った。

「…実は、私の研究所に田代博正という男がいるのだが。その男と、最近私が居ない間に会っているようなのだ。」

樹は、驚いた顔をした。

あの、穏やかそうな義姉が、不倫?

「え…あの義姉さんが?あり得ないと思うのですが。」

そんなタイプではないはずだった。

そもそもそんな隙もないだろう。屋敷には執事やメイドが居て、出掛けるとなったらどこへでもついて来るし、一人で出掛けるにしてもどこへ行くだの、いつ帰るなどうるさいのだ。

隠れて会うなど、無理だろう。主人である彰に、絶対に知られることになるからだ。

だが、彰は首を振った。

「紫貴は、街の洋菓子店に菓子作りを習いに行くと言って、屋敷を出ているらしい。歩いて行くと言っているらしいが、私はヘリから、潜むように森の脇に博正の車が止まっているのを見た。あちらは隠れて居るつもりだろうが、私には見えたのだ。見つけてしまった…見なければ良かったと、本当に思っている。」

この兄がここまで憔悴し切っているということは、恐らく本当のことなのだろう。

樹は、まだ信じられなかったが、言った。

「それで、私に何をしろと仰るのですか。離婚に強い弁護士の紹介でも?」

彰は、慌てて顔を上げると、首を振った。

「違う!離婚など…ただ、紫貴と博正が、私が居ない時に何をしているのか調べさせて欲しいのだ。私の使っている調査会社には、こんなことは頼めなくて。君に頼むよりないと思って。」

樹は、じっと彰を見て言った。

「でも、もしそれで本当に二人が深い仲であったらどうなさるんです?不貞の証拠を押さえて、あちらに慰謝料を提示して離婚するのが得策なのでは。」

彰は、それにはブンブンと首を振った。

「もしそうなら、その証拠を見せてやめさせなければ。離婚など考えていない。紫貴は、私の事が嫌になったのなら一方的に出て行く権利を持っている。結婚する時に、書類を作らせたのだ。だが、ああして出て行かないということは、私と婚姻関係のままで居たいということだろう。だったら、やめさせるだけでいい。やめてさえくれたら…私は、それで。」

明らかに、彰はつらそうだった。

そんな彰に、樹は同情した。

こんなに愛している女性に、裏切られるというのはどれほどにつらい事だろうと思えたからだ。

樹は、頷いた。

「分かりました。私が知っている調査会社に、調べさせましょう。でも兄さん、もしそれで不貞の証拠が見つかったら、私は離婚することをお勧めします。そういう癖がある人というのは、また繰り返すと聞いておりますから。何度もこんなことがあっては、兄さんの心がもたないでしょう。離婚はつらいかもしれませんが、それでも一時の事です。時間が解決してくれるでしょう。私は、何度も兄さんのそんな姿は見たくありませんから。ちゃんと考えて、判断してください。」

彰は、それを聞いて目に涙を溜めたが、首を振った。

「いや。私は離婚はしない。紫貴が居なくなるなど、考えたくもない。本当に、やめてさえくれたら良いのだ。もう、こんなことが無いように私も目を光らせるようにするし。君はとにかく、調べて欲しいのだ。」

樹は、頑固な兄がこういうのだから、今は何を言っても無理だろうと、頷いた。

「わかりました。では、今夜はこちらに泊まって行かれたらどうですか?帰っても、落ち着かないでしょう。部屋は余分にありますし、ゲストルームが空いていますから。研究所の方には、こちらから出勤なさっては。幸い、車もありますし。」

彰は、少し考えて、頷いた。

「…そうさせてもらう。では、細川に連絡を。」

樹は、頷いた。

「はい。私がやっておきましょう。ゆっくりして行ってください。」

彰は、つくづく弟が居て良かった、と思った。

こんなことを、誰に相談したらいいのか分からなかったのだ。

その日は、彰はそのまま樹のマンションに泊まったのだった。


次の日、あまり深く眠ることができずにフッと目が覚めると、時計の表示は朝の6時だった。

自分のスマートフォンを開いて見ると、今日の日付が目に入る…今日は、二月十四日、バレンタインデーとか言う日であり、彰の誕生日でもあった。

それでも、特にその日を昔から、特別だと思った事は無かった。

そう、紫貴と結婚するまでは。

彰は、重い体を起こして、昨日樹から借りた服のまま、リビングへと出て行った。

するとそこには、樹がもう起きて、朝食の準備をしていた。

「兄さん、目が覚めましたか?」と、側の鴨居を指した。「同じぐらいのサイズなので、スーツとシャツを出しておきましたよ。それを着て出勤なさってください。細川が昨日連絡した時に、朝から届けるとか言ってましたけど、断っておきました。」

彰は、頷く。

そして、樹が準備してくれた、パンとサラダ、スープにハムエッグという一般的な朝食を前に、椅子に座った。

「君は、料理をするのか?」

彰が言うと、樹は頷いた。

「はい。昔から、私ぐらいしかこんなことができませんでしたからね。お母さんだって炊事などしているところを見たことはなかったでしょう。とはいえ、常なら朝は食べないのです。一人だし、面倒なので。でも、兄さんはきっちり食べるでしょう?普通の朝食ですが、どうぞ。」

彰は頷いて、フォークを手に取ってその料理を食べ始めた。

樹は、それを見ながら自分もパンをちぎって口へと放り込みながら、言った。

「ところで、昨夜連絡を入れて置いた調査会社が朝から動いてくれるようです。逐一私に連絡を寄越してくれるそうなので、その都度兄さんに連絡します。」

彰は、首を振った。

「いや、私も一緒に君の仕事について行く。」樹が驚いていると、彰は続けた。「どうせ出勤しても仕事が手に付かないのだ。昨日もそうだった。ならば、君の所に連絡が来るなら、君と一緒に執務室に居た方がいいだろうし。」

樹は、渋い顔をしながらも、頷いた。

「まあ…私は今日は執務室から出る予定はありませんし、よろしいですけど。では、迎えの車が来るので、一緒に乗って行きましょうか。兄さんの車は、細川に取りに来させましょう。」

彰は、頷いた。

「それで頼む。」

そして、食事を続けた。

そんな兄を見ながら、兄はずっと誰かに指示してさせる生き方をして来たので、自分で何かしようという考えが無いのかもしれないなあ、と思っていた。

料理も然り、恐らくその気になればできるのだろうが、しない。

運転ができる事実も、樹は初めて知った。いつでも、運転手付きの車に乗って来るところしか、見たことがなかったからだ。

困った兄だったが、それでも樹はこの兄が、とても好きだったので、仕方なく彰を連れて、出勤して行ったのだった。


そんな事になっているとは露知らず、紫貴は今日は最後の出勤だと出掛けた。

出る前に、細川とメイド達に指示をして、夜のパーティの準備をしてもらう事にした。

ケーキは、今日は洋菓子店で紫貴自身が作ることになっている。

チョコレートケーキと、誕生日用のデコレーションケーキ、それに、紫貴も彰も大好きな、イチゴのタルトを教えてもらって作って持って帰る予定だった。

少し遅くなるかもしれないので、細川には紫貴が買いものに出ていると言ってもらう事になっていた。

要や穂波も呼んでいるし、今回の手助けをしてくれた、博正と美沙も招待していた。

博正は、美沙と一緒に紫貴を迎えに来て、そのまま屋敷へと向かうつもりでいる。

何もかも、上手く行けばいいなと紫貴は思っていた。

紫貴が歩いて外へと出て行くと、博正がいつものように、車で来て待っていてくれた。

その車に乗り込むと、そのまま街の洋菓子店へと、最後の出勤に出て行ったのだった。


「…そうか、分かった。そのまま追跡してくれ。」

車の中で、樹が言う。

彰は、気ばかりが急くのだが、黙って電話が切れるのを待って、言った。

「どうだった?」

樹は、ため息をついた。

「義姉さんは、博正の車に乗って街の方向へと向かったそうです。車は、屋敷の敷地の外の、森の入り口辺りで待っていて、慣れたように乗り込んで行ったと。」

やっぱりそうか。

彰は、覚悟はしていたが、紫貴が博正の車で街へと向かっている事実は、やはり心に堪えた。

それでも、真実を知らなければ紫貴に問い質してやめさせることもできない。

なので、気力を奮い起こして頷いた。

「思った通りだ。そのまま、先の報告を聞こう。」

樹は、このままホテルにでも行ったら何と言おうかと今から案じていた。

彰が、どれほどにショックを受けるかと思うと、とても口に出せそうにない。

確かに博正という男と会っているのは事実だったが、これから先が面倒ではないようにと、樹は心の底から祈った。

あの女性が、信用にたると思っていた、その気持ちを踏みにじられるような気がして、樹自身もショックなのだと、それで知った。

「…あれ。」

樹は、来ているメールを見て、思わず声を出した。

彰が、樹を振り返る。

「なんだ?」

樹は、彰を見た。

「兄さん、もしかして誕生日ですか?」

彰は、誕生日、と聞いて、結婚してからはいつも紫貴が祝ってくれると思い出し、暗い顔をした。

「別に…だからといって、特別ではない。」

紫貴だって、今年は何も言わなかった。

そこに、博正に夢中なのかと彰は胸が掴まれるようだったが、樹は言った。

「今夜、誕生日のパーティをするので私に来て欲しいと細川から連絡が来ております。兄さんには知らされていないんですか?」

彰は、首を振った。

「紫貴が毎年祝ってくれていたが…今年は、何も言わないので。」

それが何を意味するのか、樹にも分かった。

やはり、あの義姉は他の男に現を抜かしているのだろうか。

樹の会社について、二人でエレベーターに乗って樹の執務室へと入ると、秘書が今日の予定がどうのと言って寄って来た。

樹は、そこに置いておけと秘書に行って、秘書を追い出した…何しろ、電話が鳴っているのだ。

秘書は、思いもかけず樹に追い出されてしまったので、仕方なく自分の部屋へと戻って行ったようだ。

樹は、急いでさっきからなり続けている電話に出た。

「すまない、すぐに出られなかった。どうだ?」

彰も、固唾を飲んで待っている。

樹は、じっと聞いていて、言った。

「…わかった。引き続き見ておいてくれないか。」と、彰を見た。「本当に洋菓子店に。博正が送り届けて、そこで帰ったようです。義姉さんはその洋菓子店に入って行って、見ていると慣れたように従業員達と話していて。エプロンと三角巾を付けて、どうも働いているように見えるそうです。」

彰は、思ってもいなかったことに、目を丸くした。

働いている…いったい、なぜ?

「なぜそんな。何も不自由はさせていないはずだ。紫貴は働く必要などない。」

樹は、顔をしかめた。

「わかりません。調査員も、自立したいと思っている人が働き出すことが多いのだと聞いてはいると。つまりは…離婚後の生活の事を考えたりするとき、そのように動くことがあるとか言うのです。」

彰は、頭を殴られたような気がした。

紫貴は、離婚を考えて居るのか。出て行かないのは、まだ自立できていないからと。

だが…関西には、紫貴の名義に変えたマンションもある。

そこの収入があれば、離婚したとしても問題なく生きて行けるはずだった。

つまりは、結婚していようといまいと、今の紫貴には働く必要などないのだ。

「…どちらにしろ、紫貴は働く必要などない。私のマンションを一棟、紫貴の名義に変えてある。あれは離婚後も、返す必要はないから、紫貴は充分に働かなくても生きて行くことができるのだ。だから働くなど…おかしいのだ。」

そう、おかしい。

紫貴は、彰と結婚した時点で、もうそれから先の人生は、金銭的な苦労などせずに済むと約束されたも同然だったのだ。

それなのに、今更働く意味はなんだろう…。

彰は、立ち上がった。

「…その洋菓子店は、どこにあるのだ。」

樹は、驚いた顔をした。

「え、ちょっと待ってください、まさか行くんじゃないでしょうね。」

彰は、頷く。

「行って実際に見てみないと、働いているのか菓子の作り方を学んでいるのか、それとも…何かを誤魔化すためにそこに居るのか、分からないではないか。」

それは、樹も考えたことだった。

働く必要がないのに働いているという事は、そう見えるように取り繕う、その影に何かを隠しているのではないかと考えるのが普通だ。

紫貴は、働いているという姿の裏で、何かを隠しているのではないかと彰も樹も思っていた。

「仕方がない、では私が。会社に車を置いているので、それで行きましょう。私の車は兄さんの物のように大きくないし、普通の乗用車なので、きっと目立たないでしょう。」と、秘書を呼んだ。「高瀬。ちょっと出掛けて来る。すぐに戻るので、何かあったら電話をくれ。」

高瀬を呼ばれた若い男性社員は、驚いた顔をしたが、頷いた。

「はい、分かりました。ネット印証が必要なものは全てパソコンにお送りしておきますので。」

樹は、頷いた。

「頼む。」

そうして、樹は彰と共に、自分の車を運転して、調査員から連絡があった、洋菓子店へと向かったのだった。


現地に到着すると、樹が到着したのを知った調査員が、慌てて寄って来た。

「神之原様、お越しになっては困ります。あちらはお顔をご存知なんでしょう?」

樹は、頷いた。

「確かにそうだが、見えないようにするから。」と、彰を見た。「兄さん、ほら、あちらの。」

彰は、言われるまでもなく、紫貴の姿を見つけていた。

紫貴は、何やら店の中で、色とりどりの紙を相手に、箱を包んだりしている。

そしてそれを、紙袋に入れて、客に笑顔で受け渡していた。

彰と一緒に居る時より、明らかに生き生きとしていて、楽しそうに回りの仕事仲間達と笑い合って、確かに働いていた。

…紫貴は、窮屈だと思っていたのだろうか。

彰は、それを見て思った。

一般人の中に立ち混じる紫貴は、確かに生気に満ちていて、見た事もないほど表情豊かだ。

あんなにキラキラと輝く紫貴を見るのは、彰は結婚以来初めてだった。

「…紫貴は、一般人と一緒に居る方が楽しいのだろうか。」彰は、それを見て呟くように言った。「私と一緒に居る時に、あんな顔を見た事がない。それほど快活でもなく物静かな方だと思っていたが、ああしてみたら、まるで別人を見るようだ。」

言われて、確かにそうだ、と樹は思った。

物静かで穏やかな紫貴を、兄にはお似合いだろうと思っていたが、ああしている所を見たら、紫貴は本来、ハキハキとした快活な女性だったのだと知った。

回りの仲間達ともよく話し、笑い合っている姿がまた、屋敷では見ない顔だ。

つまり紫貴は、自分を隠して生きていたのだろうか。

樹は、彰を気遣わし気に見た。

「兄さん…それでもあれは義姉さんですし。その、気持ちが変わったとかでも、その…」

彰は、樹を見た。

「気持ちが変わったとはなんだ?紫貴が私を想っていないと?」

樹は、首を振った。

「いえ、兄さんが愛した紫貴さんとは、違った感じなのでしょう。失望したのでは?」

彰はすぐに首を振った。

「どうして失望などするのだ。私は…紫貴にあんな一面もあったのかと、もう私など顧みてくれなかったらどうしようかと思っていたところだ。まだまだ紫貴には、知らない側面がある…やはり博正と何かあったとしても、離婚などできない。」

そう思うのか。

樹は、どこまでも兄があの義姉を好きなのだと悟った。

何があっても愛しているのだ。

「…でも、この様子だと博正とは何もないようですが。」と、紫貴の働きぶりを見つめながら言う。「多分、ああして働いていただけなんでしょう。博正が、たまたま送り迎えをしていただけではありませんか?」

彰は、そうであったらどんなにいいだろうと思いながらそれを見つめていると、調査員が樹の車へとやって来た。

「神之原様。どうやら、この後奥へと引っ込まれる様子です。」

「え?」

樹と彰がどういうことだと思って紫貴へと視線を移すと、紫貴は、奥の白い扉から店のバックルームへと消えて行った。

「…バックルームの仕事が?それとも、休憩時間だろうか。」

彰は、途端に不安になった。

「博正は今どこに居る?」

調査員が、それには答えた。

「今は自宅へ戻っていると、あちらの調査員から連絡がありました。車も、そちらに確認されてます。」

では、博正に会うために引っ込んだのではない。

彰がホッとしていると、調査員が言った。

「あの、動きがありましたら動画でお送りします。ここに長く居たら、ターゲットに知られる可能性がありますから。ここはもう、お戻りになって後は私達に任せてください。」

邪魔だから帰れと言われているようだ。

樹と彰は、仕方なく言われた通りに、車を出して樹の会社へと戻って行った。

紫貴は、そこから昼を過ぎても出て来なかった。


樹も仕事をしなければならないので、彰に自分のスマートフォンを渡して、送られて来る動画を見せて自分はサクサクと事務仕事をこなしていると、もう退社時間が迫っていた。

その間、紫貴は外国人の対応に何度か出て来た以外は、ずっとバックルームに籠って、表に出て来ることはなかった。

夕闇も迫って来る中、一台の車がやって来るのが見える。

どうやら、博正が来たようだった。

「…博正の車だ。」彰が言う。「迎えに来たのか。」

見ていると、紫貴は笑顔で博正と話してヨーロッパの挨拶のように肩を抱き、軽くチークキスをした。そして車に何やら大量の紙袋を二人で乗せていた。

…あんな挨拶をする姿など、見たことがない。

彰は胸が痛んで顔を歪めた。

「…そろそろ帰らねば。」樹は言った。「とにかく私も招かれているので、一緒に行きます。屋敷へ帰りましょう。」

彰は無言で頷いた。

あのまま帰るのか…それとも、博正の家に戻るのか?

家には美沙が居るはずだ。

動き始めた車を離れて追う動画を見ながら、彰は考え込んでいた。


一方、博正はそんなことにも気付かず、言った。

「思ったより美沙の準備が早く終わってなあ。」博正は苦笑した。「パーティーなんか久しぶりだからって、朝から準備しててめちゃくちゃ早く終わって、退屈だから準備を手伝いに先に行ってるって。送って来たんだ。」

紫貴は、笑った。

「ケーキもお昼から頑張って焼いたの。みんな手伝ってくれて、とても満足だわ。後はこのお給料で、注文してあったプレゼントを受け取って帰るだけ。ごめんなさいね、足に使ってしまって。」

博正は、首を振った。

「いいさ。ガソリン代はもらってるんだし。」と、スピードを緩めた。「あの店か?」

紫貴は、慌てて言った。

「あ、そう!」と、路肩に寄せて止まった、車のドアを開けた。「ちょっと待っててね。」

紫貴は、急いでその、洋装店へと入って行った。


それを、樹の車で彰も見ていた。

「…なぜに紳士服の店などに。」

博正に何か買うつもりか。

そう言えば、博正に何か与えたいと思っても、彰のカードを使うとそれがバレてしまう。

もしかして紫貴は、働いて、そこまでして博正に何か贈ろうと…?

今日は、バレンタインデーだ。

想う相手に花やチョコレートを贈る日…。

彰が暗くなっていると、紫貴は小さな紙袋を手にそこから出て来て、そうしてその後花屋にも立ち寄り、帰路についた。

そこで調査は終了したが、確かに二人は会っていた。

だが、深い仲だと裏付ける決定的な何かは何も、見付からなかった。

ただ、限りなくグレーだと彰も樹も思った。

そもそも日本人同士でチークキスなどするだろうか。

確かに店の外国人客が紫貴のラッピングに喜んで、チークキスを交わしているのは見たが、博正相手にはおかしいだろう。

…例え外国人でも腹が立つのに。

彰は悶々としながら、樹の車で屋敷へと戻って行ったのだった。


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