26 隕石(メテオ)の炎も防いじゃう!
渦巻く暗雲から現れた――まるで月を間近で見たかのような物体は、現実の隕石ではない。アリスティアの体重10キロ相当である7万2千キロカロリーと引き換えに生み出された膨大なエネルギーの塊だ。
空気の摩擦で真っ赤に燃えた底が、烈風を巻き起こしながら森へと近づいてくる。まるで地獄の火球が落ちてきたかのような恐ろしい光景を目の当たりにして、狂ったように突進していた魔物どもの足が止まった。誰にも止められるわけがないと思われた魔物暴走が止まったのだ。
「皆、お姉さまより後ろへ! 急いでっ!」
エリスティアの悲鳴に似た声が響いた。魔物と同様、絶望と共に空を見上げていた騎士たちが正気に戻り、我先に走った。ある者は壁の内側へ駆け込み、ある者はともかく言われたとおりにアリスティア姫の後ろまで走って伏せた。
(さすが、エリス! 天使姫の言うことならみんな聞くものね!)
騎士たちは皆、無様に歯を鳴らしている。あの空を覆うような岩塊は投石機によって射出される岩の比ではない。直撃すれば、城はおろか街でさえ崩壊するのではないか?
隕石は灼熱の炎を纏いながら、魔法陣の光が立つ森の中央へゆっくりと迫っていく。樹齢何千年という大木が小枝のように揺らぎ、一瞬で炎を上げた。
――やがて、地が割れるような轟音と共に、激突によって生じた衝撃波が襲ってきた。
森から炎が吹き出し、見上げるような大きさの岩や巨木が飛んでくる。魔物どもはたちまち巻き込まれ、為す術なく潰されていった。
「広範囲防御!」
エリスティアを頂点として、壁を覆うように半球状の光が形成される。光は魔物どもを蹴散らした岩や巨木をものともせず、ハチの巣のごとき八角形を連ねた輝きを発しながら、いともたやすく弾き返していった。
「な……何という桁外れな……。お前が……やっているのか?」
呆然と膝をついて我が娘の背を見つめるグレゴリオに、脂肪がMPの最強魔法使いが振り返った。
「そう……知ってるでしょ? お父様。私は、この世のあらゆる魔法を授かったんだから」
「おぉ……おぉおぉぉ……アリスティア……父は……父はうれしいぞ……」
嗚咽を漏らす父を見つめる少女の頬は、幾分丸みが取れてすっきりとしていた。
次回はお正月開けの1/8(日)に『脂肪がMPの無敵お嬢さまは、美少女なのにちっともモテない!』をアップ予定です。
https://ncode.syosetu.com/n2028go/
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