表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/34

24 無能だけど、かっこいいんじゃない?

「……俺は……お前と同じく……何の力もない……。何の恩恵も授かっていないんだ!」


 アーヴァインの告白に、周囲の者たちが凍りついた。アリスティアはもちろん、エリスティアも、ポールソンも、ジャレンスも、ゲイブルも、耳にしてしまった騎士たちも、呆然と立ち尽くしている。


 アリスティアは、どう答えていいものか窮した。この世のあらゆる魔法を授かりながらMPマジックポイントがないために、宝の持ち腐れとされる辺境の姫――。MPマジックポイントの代わりとなる脂肪を蓄えたがゆえにオーク姫呼ばわりされ、心ない言葉を浴びせられてきた。


 ――この王太子は、“神託”で何も授からなかったことを隠すために虚勢を張り、剣の腕を磨いてきたのだ。


 アリスティアにはその気持ちがよくわかる。自身も太った体が弱みとならぬようにと、剣技を磨いてきたのだから。


「殿下は――」


 アリスティアの言葉を狂気じみた声が遮った。


「何て事だ! 無能であることをさらけ出してしまうとは! やはり、バカ王子に次代の王は務まらぬ!」


 アリスティアが振り返ると、そこには騎士に囲まれて連れ出された宰相ジェラルドがいた。大きく広げた両手が天を仰ぎ、いつも整っていた髪が粗雑に乱れている。


「不敬だぞ、ジェラルド」


 ジェラルドを囲む騎士の横に、マント姿の小柄な少年が現れた。――エルウィックだ。


無能バカをバカと言って何が悪いのです!? 無能な王太子が生まれたことで困るコーエル王に“軍神の威光”の策を授けたのは私! 私がいなければ、あの無能バカはとっくに病死として葬られているのです!」

「兄上には比ぶ者のない剣技がある。幼少からどれほど鍛錬されたか――」

「その剣技も魔物の軍勢の前には役に立たぬようですぞ? 戦う前から無様に膝を屈しておられるのですから」


 ジェラルドの言う通り、地に膝を着いたアーヴァインはうな垂れ、戦意を喪失してしまっている。“軍神の威光”が通じぬ魔物の群れに立ち向かう勇気など、持ち合わせていないのだ。


「まったく……兄弟揃って“神託”で何も授からないとは……。王家も終わりですな」

「それは違うぞ、ジェラルド!」


 いつの間にか、アーヴァインの背後に血まみれの大男が立っていた。鎧の上からでもわかる屈強な肉体は、人というよりまるでオークだ。


 大男は膝を着いて、アーヴァインに顔を寄せた。


「殿下、そなたに“神託”がないことを漏らすような者は、ワシが首を刎ねましょう。“軍神の威光”の力が揺るぐことはありませぬ。王家の威光にひれ伏さぬ者などおらぬのですから」


 無能の王太子は、ゆっくりと顔を上げた。


「グレ……ゴリオ……」

「鍛えた剣技は嘘をつきませぬ。どうか、殿下の力をお貸し下さい」


 エリスティアが駆け寄った。スカートを持ち上げることもせずに膝をついたので、白いドレスが泥で汚れた。


「アーヴァイン殿下……殿下は無能などではありません。賢明な――王に相応しいお方です。私は……殿下の真意を察せなかったことを恥じます」

「エリスティア……姫……」


 妃にと懇願した美しい姫が、我が前に跪いている。この世の誰よりも求めたというのに、得られなかった“神託”である“聖魔法”を授かった天使姫が――。


 アーヴァインが立ち上がった。瞳には力が戻り、ふてぶてしい面構えの上で威を放っている。腰に携える王家の剣が抜かれ、天を指した。


「グレゴリオ! ジャレンス! 騎士たちよ、我に続け! 魔物などいくら来ようが蹴散らしてくれる!」


 おーっ! と騎士たちが力強い声を発した。


 死地を前にして、アーヴァインは己の剣のみで立ち向かう強き王子となったのだ。


 アリスティアは思う。――殿下がホントの自分を晒したんだから、私も力を隠してる場合じゃない、と。


 脂肪がMPマジックポイントの最強魔法使いは、ついに人前でその強大な魔法を発する決意を固めた。


次回はまた1週お休みで、12/4(日)に『脂肪がMPの無敵お嬢さまは、美少女なのにちっともモテない!』を更新する予定です。

『転生少女の七変化キャラクターチェンジ ~病弱だった少女が病床で作った最強7キャラで、異世界をちょっと良くする物語~』の更新は、3章の構想がまとまるまでもうしばらくお待ちください。


【大切なお願い】

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 応援して下さる方、ぜひとも

 ・ブックマーク

 ・高評価「★★★★★」

 ・いいね

 を、お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ