22 かわいい妹のためなら大激走
“魔物止め”を恐れず、杭に突進するオークたち。その屍を乗り越えて、続くオークが、グレイハウンドが、ゴブリンが押し寄せてくる。
応戦する騎士たちは傷つき、倒れ、それでも魔物に向かっていった。
「【聖回復】!」
門の内側すぐに作られた救護所で、エリスティアは重症の騎士を手当てしていた。
「ああ……ありがとうございます……」
騎士たちは涙を浮かべながら感謝を述べるが、エリスティアは首を振った。
「完全に治せなくてごめんなさい。私にもっと魔力があれば……」
それでも多くの騎士たちが命を長らえていく。
白い部屋着のドレスを赤く染めたエリスティアは、傷ついた騎士からはまさしく天使に見えただろう。
そこへ、きらびやかな金糸に彩られた男が駆け込んできた。
「はぁ……はぁ…………おぉ……ドレスが汚れることもいとわず治療にあたられるとは、まさしく天使姫……」
肩を大きく揺らして息を切らしているのは――
「アーヴァイン殿下! 駆けつけてくださったのですね!」
「無論だ。百やそこらの魔物など、我が剣で切り伏せて見せよう」
「え……そのようなわずかな数では……」
「我が勇姿を見ておれ!」
大きく息を吸い込み呼吸を整えたアーヴァインは、門の外へとかっ歩していく。
「お姉さまは!? アリスティアお姉さまはどこに!?」
アーヴァインの背から返事はない。代わりに追いついてきたジャレンスが答えた。
「はぁ……はぁ…………アリスティア様は……遅れて走っておいでです」
視線を送ったジャレンスの先には、門から真っ直ぐ続く大通りをドタドタと走るゲイブルの姿が見える。アリスティアはさらにその先だろう。
(あぁ……人目がなければ、魔法でひとっ飛びなのに。お姉さま、どうか急いで……)
両手を合わせるエリスティアの祈りは、エリスティアを起点に【探索】の魔法を巡らせているアリスティアにもちろん伝わった。
「エリスが呼んでる! ……えぇい、出し惜しんでる場合か! もってけ体重1Kg! 【身体強化・加速!】
7200キロカロリーが一気に燃焼し、三重顎が少し小さくなった。
砲弾のように打ち出されたアリスティアの体が、、大通りを疾走していく。目も留まらぬ速さで回転する足は、まるで駆け出した形で止まっているかのようだ。
そして――ヒィヒィとあえぎながら走るゲイブルの右腕が、いきなり何かに引っ張られた。巨漢の足が宙に浮き、大通りを飛び抜けていく。
「な、何だアァァアァァァァ……!?」
泡を食ったゲイブルだったが、すぐにアリスティアが自分をつかんで走っていることに気づいた。
「ア、アリスティア様!? この速さは……」
「黙ってないと、舌噛むよ?」
脂肪がMPの最強魔法使いは自分よりも遙かに大きい騎士を引っ張りながら、音を置き去りにして駆けていくのだった。
次回更新は、10/30(日)に『転生少女の七変化 ~病弱だった少女が病床で作った最強7キャラで、異世界をちょっと良くする物語~』をアップ予定です。
https://ncode.syosetu.com/n2028go/
↑もしくは画面上の、作者:イリロウ のリンクから
どちらも読んでもらえるとうれしいです!
【大切なお願い】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
応援して下さる方、ぜひとも
・ブックマーク
・高評価「★★★★★」
・いいね
を、お願いいたします!




