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【社長のおもちゃ箱】

【社長のおもちゃ箱】



 この会社の経営するお店を紹介していこう。



・豆腐料理店 1号店



 実は、神宮近くに出店している豆腐料理店は2号店だ。こちらが記念すべき店舗1号店でもある。


 2号店と違って朝粥は出さず、豆腐料理一本でやっている。2号店一番人気の朝粥がない、2号店のような立地の恩恵がない、という厳しい状況ではあるが、大丈夫かどうかはわからない。


 一応、店舗の中では頑張っている方らしい……、ほんとに?



・うどん屋



 豆腐は???


 そう疑問に思われるかもしれないが、大丈夫。ちゃんと関係している。このうどん屋さんの売りは、きつねうどん。つまり油揚げが自慢のお店だ。


 実際、きつねうどんは結構迫力がある。油揚げがぎっしりひしめき、下のうどんが見えなくなっている。


 ……ただ、このきつねうどんの油揚げ。所長の話によると、味がしないらしい。味がしない油揚げがぎっしり詰まったきつねうどん。味付けしようよ。


「味のしない油揚げをたくさん食べると気持ち悪くなる」という異常に使えない豆知識は所長から教えてもらった。


 きつねうどんを食べた所長の奥さんが、帰り道で吐いた話はあまりにも有名。



 ちなみに麺は旨いらしい。(麺は外注)



・パン屋



 豆腐は????


 そう疑問に思われるかもしれないが、今回も大丈夫。ちゃんと関係している。このパン、豆腐が入っているのだ。豆乳、豆腐、おからの入ったパンなのである。


 この店の食パンは後々、わたしたちの移動販売でも販売することになる。一日数本限定で、なかなかに人気が高い。リピート率も高かった。


 わたしも食べたことがあるが、食パンは実際おいしい。やわらかいがずっしりとした食感で、風味も少し変わっている。それと異常に腹持ちが良い。普通の食パンとはまた違った旨さがあった。




 ……しかしこの食パン、値段は1本1000円。金持ちの食い物。さすがに1000円出すならもっと旨い食パン買えるわ。(移動販売時はなぜか700円)




 ちなみにこの食パン、移動販売ではひとり3本取り扱えるのだが、必ず売り切らなくてはならない。売れ残りは許されない。残った場合は、自腹買取である。


 暗黙の了解で自腹で買い取るわけではなく、実際に口頭で言われた。一度問題になったのだ。他営業所で売れ残ったパンを廃棄したらしく、会議で注意された。



「パンはきちんと売り切ってください。もし売れ残るようなら、自腹で買い取ってください。この食パンは工場の人たちが忙しい中、無理して作っているものです。だからきちんと売り切ってください」



 自腹で買い取ってください、っていう言葉があまりに耳心地良すぎてはっきり覚えている。「ほかの人が頑張って作ったものだから、自腹で買い取れ」もなかなかに良い。お前らが作らせたんやろがい。



 食パンは旨いのだが、ほかのパンは軒並みイマイチ。一時期、試食と称して営業所にたくさんパンが送られてきていたが、みんなのウケは今一つだった。


 何がダメって、すべてのパンに豆乳、豆腐、おからが入っている。そのせいで、食感や味が全部似たようなものになっていた。飽きは早い。


 それと、この店は毎月新商品を3つ出さなければならない。そうノルマが課せられている。なので迷走しがち。特に、季節限定のパンプキンパンは食べられたものではなく、死ぬほどでかいのに一口でギブアップしてしまった。


 しかし、みんな文句を言いながらも、試食は毎回全部持ち帰られていたので、なんだかんだで気に入っていたのかもしれない。わたしも食パンは旨いと思うよ。クソたけーけど。



 ちなみにあんぱんは旨いらしい。(あんこは外注)




 それとこのパン屋、後々店舗で唯一黒字になるというレジェンド的存在である。


 しかし、突如閉店した。社長が「お年寄りは意外とパンが好き」という豊富な人生からの経験論を展開し、パンの移動販売を決定したからだ。「パンの移動販売やったら、1日でも最低10万は堅いと思てる」という発言から、かなりの期待を寄せていることがわかる。


 そして閉店した。店舗用のパンを作りながら、移動販売用のパンをプラスに作るほどのリソースはない。なので、移動販売に切り替える予定だったのだ。


 が、のちにパンの移動販売の計画がとん挫。そのあと、ひっそりと営業再開したらしい。




・ファミレス



 これはもう完全に豆腐関係ない。ただのファミレス。


 元々あったファミレスを会社が買収した、とかだったかな……? 面接会場がなぜかこの店だったが、雰囲気はまぁ普通のお店だった。


 それなりに繁盛していたらしく、この店だけはバイトも雇っていたらしいが、のちに潰してあげ工場に変わっていた。なんで。




 いかがだったろうか。


 このお店の数々は、通称『社長のおもちゃ箱』と呼ばれている。次から次へと新しいおもちゃに手をだし、飽きたらさっさと次のおもちゃを見つけるから、だそうだ。上手いこと言う。


 実際この時期にも、社長は豆腐料理店の3号店を出すためにテナントを見に行っていたくらいだ。


「2020年のオリンピックまでには、東京に進出するぞ」と会議で鼻息荒く語っていたが、間に合ったのだろうか。




 ちなみにこれらの情報は大体総務のお姉さんから聞いた。会社の数字の話や、店舗の赤字黒字の話はこのお姉さんが話してくれる。会社のだいぶアレな話も教えてくれる素敵なお姉さんだった。


 店舗の方針も彼女が担っているらしく、「社長がすぐ無茶言う」とげんなりしていた。会社のブログもお姉さんが担当しているのだが、わたしが辞めてしばらくしたあと、ぷつりと更新が途切れてしまったので、もう退職したのだろう(だれか引き継げよ)



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