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妹が招いたモノ 8

 

 檻を壊し、少女を外に出そうとしますが、彼女は私と目が合うと体を震わせ怯えた表情を浮かべてしまいます。


 こういう時は……目を合わせる方が効果的でしたね。と過去の経験を思い出し、膝を折って彼女と目の高さを合わせ、


「もう大丈夫ですよ。私はあなたのお母さんに頼まれて、助けに来た者です」


 と母親の事を口にすれば、やや少女の表情が柔らんできました。


「……お母さんに?」

「ええ。ですので一緒にお母さんの所まで帰しましょう」


 そう言って手を差し伸べると少女は笑顔になり、手をすり抜け私に抱き着いてきます。

 可愛いですね。向日葵ちゃんの小さな頃を思い出します。


 向日葵ちゃんは最初私に怯えてましたからね。

 それも仕方ないです。あの頃の私は不愛想でしたから、顔を合わせるだけでよく泣いてましたっけ?

 そう思うとあの子はよく私に懐きましたよね? 今の姿を思い浮かべるとそう言った過去があるとは思えないほどです。


 と助けた少女の姿を見て、そんな事を思い出しながら彼女を抱き上げます。


 つい癖でやってしまいましたが、NPCでもこういった事ができるようです。

 それかこのクエストだけの仕様かもしれませんが、この方が守りやすいのでいいですかね。



 それから、来た道をたどり森の外を目指していると、「見て! お姉ちゃん! なにかあるよ!?」と助けた少女――トアちゃんが何かを指さし声を上げます。


 彼女の指す方を見れば、白くぼんやんりとした何かがいます。


 私は自身の警戒レベルを最大限に引き上げ、武器を召喚します。

 召喚した武器は魔銃フェンリル。反動が小さく連射性が高く装弾数も多いですかね。トアちゃんを抱えてるこの状況ではこれでしょう。


 銃口を白い何かに向け、周囲にも気を配ります。


 さて、どうしたものですかね。

 できれば、近づかずに処理したいのですが。


 ――――て。


 なにか聞こえたので「なにか言いましたか?」とトアちゃんに聞きますが返ってきた「ううん」という声と首を横に振る動作。


 そして「何か言ってるみたいだよ? いってみよ!」と続けるトアちゃん。


 私としてはいい予感がしないので行きたくないです。

 なんといいますか、映画とかでよくある演出のようで……。

 ですが行かないと話が進みませんし、困りましたね。


「ど…………て」


 今度は明らかにトアちゃんとは違う幼い女の子が聞こえました。

 何を言っているのかまではわかりませんが、察するに『どうして』でしょうか?


「やっぱり何か言ってるよ! 早くいこ!」


 仕方ないですね――行きますか。


 白い何かに数歩近づくと、先程から聞こえる声が鮮明になってきました。


「どうして……どうして……」


 こちらに背を向け蹲ってる少女の姿。

 どうやらこれが白い何かにの正体のようです。


「ねえ! どうしたの?」とその白い少女にトアちゃんが声を掛けます。


 私としてはなるべく見なかったことにしたかったのですが、トアちゃんのお陰でドンドン話が進んでいきます。

 だってこれ、明らかに罠でしょうから。

 こちらの警戒をよそに話しかけられた少女はゆらりと立ち上がります。


 後ろから見ても前にだらんと首を下げてるのがわかるぐらいに猫背になってます。

 そして、ゆっくりこちらを振り返りつつ、


「どうしたの、て。それは……私が知りたいわ!!」


 ああ、やっぱりですか。

 彼女の叫び声に合わせるようにして地面から鎖が突き上がりこちらに殺到してきます。

 凡そ、こんな感じではないと身構えていたので、私はそれらを躱しながら彼女から離れ距離を取る。


「まったく……向日葵ちゃんが好きそうなB級っぷりです、ねっ!」


 腕の中でトアちゃんが悲鳴を上げてますが、楽しんではいませんか? と聞きたくなるような悲鳴です。


「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてっ! ねぇ!! 答えてよ!!」


 まさに狂気と言わんばかりに叫び同じ言葉を繰り返す白い少女。

 その感情に合わせるかのように動き回る赤黒い鎖。


 殺到する鎖を躱しきると、少女が顔上げこちらを見据えます。


 大きな瞳に整った顔立ち。まさに人形のような、と思ってしまう程で、

 瞳はサファイアのような澄んで濃い青色ですが、本来なら白いはずの部分は真っ赤に染まって、よく見れば目から涙の様に血が垂れています。


 その様を確認したと同時に私の目の前にテキストパネルが浮かび上がります。


【緊急クエスト『少女に捧ぐ鎮魂歌(レクイエム)』――狂気に染まった少女の魂を鎮めろ】


 やはりクエストでしたか。


 向日葵ちゃんのしおりに書いていましたね。

 こういった突発的なクエストがある、と。

 そして、そういったクエストの報酬はレアリティが高い。

 更に攻略難易度も高い、とも


 それにしても妙なのが、倒せではなく鎮めろ、ですか?

 ではこれは討伐クエストではない可能がありますが、私の手札には、そういった用途のアイテムもなければ、スキルも、魔法もありません。


 これは困りましたね。


 とスキルパネルを見ながら、置かれた現状では攻略が困難だと判断した所で、トアちゃんが話しかけてきます。


「お姉ちゃん降ろして! あの子とっても苦しそうだよ!」


 降ろすのはいいですが……苦しそうとは何なんでしょうか。


 とにかく言われた通りに降ろすと、彼女はその場から飛び出し白い少女の方へ走ってきます。


 するりと私の脇をすり抜けて行ってしまうので、急いで後を追います。

 この子供特有の機動力は何度経験してもヒヤリとしますね。

 向日葵ちゃんもよくこんな風にスルスルと動き回っていました。


 そういえば、何度か本気を出して捕まえようとして逃げられた事がありましたね。

 あの時は驚愕したものです。

 それはいいとして、今はトアちゃんです。


 一応今は護衛クエスト中で、その対象が彼女ですからね。


 ですが、こう勝手に動かれると……非常にやりづらいです。

 それ込みのクエストなんでしょうけども。


 ゆらゆらと揺れる鎖に警戒していましたが、先程の様に殺到する事もなく、易々と少女の近くまでたどり着く事が出来ました。













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