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008 初めてのスキルボール屋

いつもより、長めです。

リュージは武器屋との話しで、スキルの話題が出たので、この世界にスキルが存在することがわかった。

また、それは武器防具と同じように、販売されていることも、その口振りからわかった。


「リュージさん、アレじゃないですかね?」


「だな。あっ、ジロー、スキルの店の筋向かいをよく見てみろ。宿屋があるだろ。トワイライトと書いてある。服屋がすすめていた宿だ。偶然にしろ、探さなくてよくなったな。」


「ですね。結構、大きな宿っすね。基本石造り。細部は木造り。基礎はわかりませんが、きちんとした職人が作った建物ですね。中の構造はあまり見えませんが、造りがしっかりしているのは安心できますね。あっ、今、馬車が奥に入って行きましたね。奥が馬車のパーキングになっているんでしょうね。これだけ大きいと、大勢泊まれそうですね。あとは、ラノベ的に風呂があれば最高なんですけどー…。」


「少なくともこの世界に風呂はあるようだぞ。さっき雑貨屋で、[お風呂セット]を見た。宿にあるかどうかが、わからなかったから、買わなかったが、トワイライトにはあるようだ。風呂の匂いがする。構造的にあの辺りから、湯気が出ているから、あそこが風呂だろう。日本にあるような浴槽があるタイプかどうかわからない。今晩、ここに泊まるようなら雑貨屋に戻って買い足してもいいだろう。」


「リュージさん、風呂入りたいです。トワイライト泊まりたいです。リュージさんと風呂入りたいです。背中流しますね。リュージさんと二人でトワイライトに宿泊。そして風呂。最高っす。」


いや、なんか、その言い方、いろいろヤバいから。

異世界転移の話が、間違った話になるからジロー君やめて下さい。

そんなキャラ設定じゃなかったのに。


「まだ、ここに決めたわけじゃないぞ。まぁ、まだ、時間もまだあるし、先にスキルの店、行くぞ。」


「ヘイ、わかりやした。」


宿屋を名残り惜しそうに見るジローをリュージは引っ張るように、スキルの店へ誘導した。


丸い印が看板についた店の前に来た。

スキルの店だ。

服屋と同じような店構え。

入ると、廊下が続く。

かなり奥に商品の陳列棚があった。

昼間だと言うのに、薄暗い。

ほかの店に寄った時は、店内でも明るかった。

イルミネーションの魔道具が使われていたらしい。


この世界はいろいろな便利魔道具があるらしく、それは魔石によって支えられていた。

例えば、ライトの魔道具は光る鉱石に魔力を通せば光る。

ただし、ずっとは光らない。

魔力を遮断したら光らない。

人が意識して、魔力を放出し続けるのも、面倒くさい。

また、魔力が枯渇したら動けなくなる。


そこで登場したのが、魔石である。

ライトの魔道具は魔石から魔力を得て光る魔道具である。

この魔石は元の世界で言うところの乾電池だ。

魔石の魔力を使って、この異世界ではいろいろな魔道具が開発されているようだ。

大きい魔石は魔力量も多く、長持ちする。

小さい魔石はその分魔力量も少ないが、軽量で、小さな魔道具に使われる。

この魔石はダンジョンや、鉱山などで見つけることができる。

需要があるため、供給する仕事も存在する。

ダンジョン探索だと、ここでは冒険者がそれに該当し、職業として成り立っている。


店内に入り、陳列棚を見て、二人は驚愕した。


「リュージさん、あれって、あの時のアレと同じじゃないですか。」


「あぁー、俺もそう思った。」


二人の驚きはもっともだった。

棚に陳列されていたのは、籠やケースに入ってはいるが、二人がこの異世界に来ることになったキッカケになった、薄暗い通路の途中で見た、光る玉だった。


「いらっしゃい。ここはスキルボールの店だよ。スキルを売買しています。」


そう言われて、この店の店員さんを見ると、なんとネコミミ獣人さんだった。


ジローは尋常じゃないほど、興奮した。


『ネコミミ獣人さん、キター!!!!!キターーーーーーー!!!。かわいい。もふもふしたい。やっぱりもふもふだよな。でも、ここで慌ててしまっては、ラノベ展開としては碌なことにならない。我慢我慢。リュージさんもいるし。ここで、もふもふお願いして、仮に了解が得られても、リュージさんに引かれるのは目に見えている。うぉーーー、獣人、しかもネコミミ獣人さん、マジヤベェ。』


ジローは何故か、ガッツポーズのまま、固まっていた。

リュージは不審に思ってジローの肩を叩く。

ジローは戻ってきた。


「リュージさん、すみません。なんかスキルに興奮してしまいました。もう大丈夫です。」


そう言ってジローは店員さんに再度向き直る。


「えー、あのぉ、ダンジョン行くんすけど、役立つスキルとかありやすか? 仕事は何時に終わるんすか?」


「ダンジョン用のスキルはこちらの[ダンジョンスキルセット]がオススメです。ここは大体夜の7時までですが、私の店なので、お客様がいらっしゃれば何時でも開けていますよ。」


ネコミミ獣人さんはジローの問いにもそつなく答えていた。

プロだ。

しかも、店員さんかと思っていたが、店主だったようだ。

獣人は初めて見たが、若く見えるようだ。


「じゃ、じゃぁ、ダンジョンスキルセットでー。」


「あー、ちょっと待て、ジロー。早すぎだ。店主、すまないがまず、これを見てくれないか? 俺たちは東の遠い異国からきた。そこでは高額商品は宝石とかにかえたり、蓄財として宝玉を溜め込んだりしている。これはその内の一部だが、もし、こちらで買い取ってもらえるなら、お願いしたい。」


そう言って、ダメ元で、ビー玉3個を出した。

リュージはスキルボールを見た時に、なんとなくビー玉と似ているなと思ったのだ。

玉が売れるのなら、ビー玉も売れないかな?といった発想だ。


店主はリュージから渡されたビー玉3個を驚きの目で見ている。

店主は獣人だ。

獣人の国は宝石が産出されることで有名だ。

ここエロイムで、一等地とされる場所に高価なスキルボールの店を、開くことができたのも宝石を掘り当てたからだ。

宝石の鑑定はできる。

売買も何度もしたことがある。

そのため、宝石にはかなり詳しい。

鑑定してもアンノウンだ。

つまり、鑑定できないもの。

アーティファクトとも言えるものだ。

宝石にもいろいろあるが、この宝石は見たことがない。

しかも、正球。

全くのまん丸なのである。

そして、丸い形の中に色とりどりの飾りのような綺麗なものが入っているもの、マーブルのような色合いのピンクのもの、真っ黒なのに、反対側が僅かに透けて見えるもの、そのどれもか美しい。


『欲しい。例え万一、東方では価値が低いとしても、こっちでは価値がある。欲しい者はいくらでもいるだろう。』


『しかも、こんなにも正確に研磨されている。この飾りの入ったものはどこから見ても同じ形に見えるように研磨されている。普通はありえない。これだけでも金貨数百枚の価値があるだろう。』


獣人の本能が告げている。

欲しい、この宝石なら、一日中眺めていても飽きない。

丸いから、絨毯の上で、コロコロ転がしたり、撫でたり触ったり、頬ずりしたりできたら幸せだなぁーって告げている。


「店主、どうかされたか?」


リュージにそう言われて店主は戻ってきた。

どうやらマイワールドにトリップしていたようだ。


「失礼いたしました。集中して鑑定しておりました。ご容赦くださいませ。」


そう言ってリュージの方をみる。

この人族、背が非常に高い。

着ているものも立派だ。

何よりかっこいい。

イケメンだ。

イケメンは正義だ。


「買い取りさせて頂きます。いえ、是非、させて下さい。金貨900枚で如何でしょうか?」


リュージは驚いた。

ビー玉にそんな価値は無い。

金貨900枚と言えば日本円にして9000万円。

ありえない。


「店主、東の国では何というか、今更言いにくいのだか…」


リュージは言葉に詰まった。

今更あまり価値がなかったとは言いづらい。


「それでは金貨1200枚で如何でしょうか?この飾りの入ったものだけでも、この金額でお譲り頂きたい。」


店主は食い下がる。

リュージは言うきっかけを、失った。


『ヤベェ、店主、目がいっちまっている。あの目はジャンキーの目だ。相当、厄介だぞ。』


リュージはかつての喧嘩相手を思い出す。

ジャンキーは痛覚が麻痺しているために、殴ってきても、セーブせずに殴ってくるので、破壊力がハンパない。

また、防御もしない。

痛覚が麻痺しているから、ひるまない。

いわゆる、ゾンビと同じだ。

薬が切れるまで意識が飛ばないため、非常に厄介なのだ。

リュージはその時、足を固定して、動かないようにしてやった。

ジャンキーは薬で細かな作業はできないので、それで無効化できた。


「店主、ものは相談なのだが、ここはスキル屋だろう。俺たちはスキルを、買いに来た。ダンジョン散策に必要なスキルを求めてだ。ダンジョン散策意外にもいろいろスキルはあるのだろう? 中には貴重なスキルもあるのでは?それと交換というのはどうだろう?」


と、リュージは提案した。

仕入れ価格と販売価格が違うのはリュージもわかっている。

仕入れ価格を下回らなければ、店主としては損は無いわけで、あまりの高額ゆえのリュージの配慮だ。


「それはいい考えです。当店はエロイム1です。珍しいスキル、 貴重なスキル、便利なスキル等々、品揃えは素晴らしいとよく言われます。」


「スキルは通常、スキルボールでインストールされますが、相性があります。相性がいいとその当人だけにスキルボールが輝いて見えます。その場合、通常のインストールより、数倍、時には数十倍の効果を発揮すると言われています。私の場合は鑑定が相性良かったようです。このお陰でものの価値やスキルボールのスキルの内容がわかります。この商売はこのスキルがないと始まりません。当店は相性関係なく、非常に便利なスキルボールをたくさん置いてありますので、きっとお客様に満足して頂けるスキルボールが有ると思います。」


リュージは棚を、見渡す。


「特にめっちゃ光っているようには見えないな。」


「でしたら、当店でも非常に価値のあるスキルボールをいくつかご紹介させて下さい。」


「こちらが、ファイヤー系ウィンドー系ウォーター系ストーン系の中級のスキルボールです。各種の中級までを使用可能となります。この辺は相性もありますので、できれば相性の、いいものをオススメします。 」


「そしてこちらが空間系、闇系、光系の低級のスキルボールです。それぞれの属性の低級魔法を使えることができます。」


「 あと、ダンジョン以外に使える便利スキルボールとして ホットウォーターボールボール、付与魔法ボール、製薬ボール、製錬ボール、経験値アップボール、スキルアップボール、召喚モンスターボール、モンスターキャプチャーボール、モンスターテイムボール等で、ございます。」


「リュージさん、どれもかなんか良さそう過ぎて、目移りしますね。」


「ん?そうか?俺は決めたぞ。これもラノベからの漫画のおかげだな。聞いた途端、ピンときたわ。」


「なんスカ?リュージさん、教えてくださいよ。お願いします。」


「まぁダンジョンセットは確定だろ。残りは経験値アップボールとスキルアップボールだ。」


「えー、何故ですかか?中級魔法とかよくないっすか?地味にホットウォーターボールボールとか毎日、風呂簡単にできそうですよ。」


「バカヤロー、忘れたのか?俺たちの目的はダンジョンだ。そのダンジョンに少しでも早く慣れるのが最優先だ。その為には、ダンジョンスキルは必須だ。それを早く伸ばせるのが、経験値アップボールとスキルアップボールだ。違うか?」


「おー、なるほどぉ。さすがリュージさんですね。自分、思いもよりませんでした。確かに優先すべきはダンジョンスキルですね。」


「お客様、さすがお目が高いですね。実は当店にあるスキルボールの、中でも今の2つは

1番の貴重なスキルボールです。1つ金貨600枚です。経験値アップ系はダンジョンの中でも特に貴重品です。ずっと有効である上に複数インストールもできるので、高ランカーの冒険者も人気なのですが、それ故に中々売りにも出されないのが現状です。そして、また、アップ量は運不運があるようなので、予めご了承ください。」


「リュージさん、アップ量は運不運らしいデスぜ。」


「らしいな。店主、ここに玉が全部で6個ある。俺とジローの今言ったスキルボールを2セットくれ。ちょっと不足しているが、そこは6個渡すから、サービスしてくれや。」


「リュージさん、いいんですか?さっきの話だと、1つでも金貨1200枚払うとか言っていたようですぜ。」


「まぁ、構わないだろ。もともと、幾らで売れるかわからなかったんだしな。」


「リュージさんがいいなら、自分は何もないっす」


「お客様、お買い上げ、ありがとございます。今言ったスキルボールお渡し致します。」


「それ以外にも、ホットウォーターボールボールと隠蔽ボールをサービス致します。ホットウォーターボールはあいにく、在庫が1つしかありませんが、ダンジョンスキルセットの中にプチウォーターとプチファイヤーがあるので、2つを組み合わせれば、量が確保できると思います。隠蔽ボールはスキルのいくつかを隠蔽できるボールです。野盗とか良からぬ者から要らぬトラブルを避けることができます。これはお二人ともお使い下さい。」


「言い忘れましたが、ダンジョンスキルセットは4大属性のプチスキルが入っています。」


「こちらでインストールしていかれますか?お持ち帰りしますか?」


「ここでインストールしていこう。店主お願いする。」


「承知しました。では、手をお出し下さい。順番にのせていきます。」


2人は店主に言われるがまま、手を出して、スキルボールを受け取る。

店主はトングのようなもので、スキルボールを交互にのせていく。

スキルボールは手のひらにのると、やがて光を放ちながら、体に消えていった。


「以上で、インストールされました。リュージ様には鑑定小をサービスで入れさせていたました。ジロー様にはホットウォーターボールを入れさせて頂きました。」


鑑定小で、スキルが入っていることを確認の上、隠蔽をお使い下さい。

リュージは言われた通り、自分を見てみる。


鑑定小を行使。


名前:リュージ

種族:人族

年齢:20歳

スキル:鑑定小、プチファイヤー、プチウォーター、プチウィンドー、プチストーン、経験値アップ、スキルアップ、隠蔽魔法、空間魔法


隠蔽魔法を行使


名前:リュージ

種族:人族

年齢:20歳

スキル:鑑定小、プチファイヤー、プチウォーター、プチウィンドー、プチストーン、

[隠蔽中]経験値アップ、スキルアップ、隠蔽魔法、空間魔法


やっぱりあった。あの薄暗い部屋の中でインストールされたのは空間魔法だった。


ジローを鑑定する。


名前:ジロー

種族:人族

年齢:19歳

スキル:ホットウォーター、プチファイヤー、プチウォーター、プチウィンドー、プチストーン、経験値アップ、スキルアップ、隠蔽魔法、土魔法


『ジロー、オメェ土魔法あるよ。オメェらしいわー。まぁ、宿についたら、隠蔽させよう。』


「お客様、スキルはきちんとインストールされていましたでしょうか?」


「あぁー、大丈夫だ。きちんとあったよ。ありがとよ。店主の配慮に感謝する。」


『おそらく、この店主には空間魔法とかのスキルはバレている。知った上で、知らないフリをして、隠蔽と鑑定をつけてくれたようだ。』


たから、リュージの言葉として、出たのは感謝の言葉だった。

異世界優しいぜ。

スキルで困ったら、またここに来よう。

そう、思いつつ、スキル屋を後にする。

さぁ次は宿探しだ。

だいたい13話ぐらいから無双予定です。

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