006 初めての食堂・雑貨屋
毎日1話ずつ更新予定です。
東区についた。
辺りには、屋台や雑貨を売る店、武器防具の店、薬やポーションらしきものを売る店、宿屋、食堂、非常に賑わっていた。
人通りも雑多で、今まで通ってきたどこよりも多い。
「いらっしゃい。いらっしゃいー、今日はドリアン瓜が安いよー」
「肉ー肉ー、オーク肉の串焼き、美味しいよー」
「魔石ー、ゴブリン魔石から中級魔石ー、ダンジョン製のアイテム〜、いろいろあるよー。見てってー。」
露店や雑貨屋の呼び込みの声があちこちからきこえる。
「リュージさん、この辺りはだいぶ賑わっている様です。異世界にきたって感じかします。あの串焼き美味しそうです。あっちの煮込みも見たことないですが、いい匂いがします。あっちに武器とか売ってますね。」
「落ち着け、ジロー。一度にはできない。順番にやるぞ。まず、腹ごしらえだ。次にダンジョンに行くための装備を整えよう。武器も最低限必要だろう。それが済んだら寝床の確保だ。皮ジャンを売って、幾らか金が手に入ったが、物を買ったら物価によっては宿もグレードダウンする必要が出てくるだろう。その順番でいいか?」
「すみません、リュージさん、俺っち、浮かれていました。リュージさんの言う通りだと思います。まず、腹ごしらえしましょう。マジに腹ペコっす。」
「俺もだ。行くぞ」
リュージたちがまず、向かったのは串焼きの店だ。
遠くからでも匂いがしていたし、辺りの人もたくさん串焼きを買っていたからだ。
「リュージさん、まず、この串焼きで、腹を落ち着かせましょう。」
「だな。この串焼きはオーク肉らしいから、食べたことないし、匂いからして、豚肉に近い感じがする。焼肉好きにはたまらない。」
「おや、お兄さん、オーク肉の串焼きは初めてかい?うちの串焼きは新鮮でタレも秘蔵のタレを使っているから、美味いと評判だよ。エロイム1の串焼きと言っても過言じゃないよ。」
「4本買うよ。」
そう言ってジローは大銀貨を渡す。
それを見た串焼き屋は少し渋い顔をする。
「串焼き4本で銀貨1枚です。お客さん、すみませんが、お釣りが不安なんで、できれば串焼きをもう4本買っちゃくれませんかね?少し多めに刺しておまけしやすから。」
まぁ、1000円の買い物に対して10倍の1万円を出す様なものだから、仕方がないか、、おまけしてくれるようだし、2人とも食う方だから、良いか。
ジローは大銀貨を払うと串焼き8本とお釣りの銀貨8枚を受け取った。
「リュージさん、この串焼き、チョー美味いっす。マジ最高っす。お土産に欲しいっす。」
「確かに美味いな。串焼き屋が自慢するだけあるな。タレも美味いが、焼き加減も絶妙だ。もし、ダンジョンでオークと会ったら、積極的に狩ろう。」
食べ盛りの二人はアッと言う間に、串焼き八本を平らげる。
「リュージさん、のど乾きませんか?飲み物屋を探しましょう。」
「だな。雰囲気として、あっちだな。ジロー、行くぞ」
二人は串焼き屋から更に東方面に向かう。
リュージの予想通り、飲み物屋兼食堂のような建物が見えてきた。
そこには、素焼きのグラスに入れられた飲み物を販売していた。
エールだ。
「エール1杯、冷たいやつ」
「おまたせしました。エールです。氷魔法でキンキンに冷やしてあるので、冷たいですよー。」
そんなやりとりが店先では行われている。
「リュージさん、エールです。異世界ラノベの飲み物の中でも 大人気の飲み物です。ビールに近い飲み物とされています。自分、一度はエール飲みたかったんです。飲んでみてもいいっすか?」
「飲もうぜ。きちんと冷えているのなら、大歓迎だ。ただし、まだ、これからやることがあるから、飲み過ぎるなよ。」
「ヘイ、わかりやした。」
「こっちにエール2杯。冷えたやつー。」
ジローは喜んで頼んでいる。
「お客様、お待たせしました。エールになります。」
「ツマミに何か賜りましょうか?本日は野菜煮込みがオススメです。」
「リュージさん、これ、さっき屋台で美味そうな匂いさせていたやつじゃないですかね。自分、食べたいっす。頼んでいいすか?」
「頼もう。美味そうだ。」
野菜煮込みはすぐに出てきた。
二人はまず、キンキンに冷えたエールを飲む。
「うめー、エール、マジ最高っす。ラノベではぬるくてイマイチと言う場合も、ありますか、これはマジいけるっす。もう1杯頼んでいいすか。」
「確かに、これはマジに美味いな。喉を潤してくれる。材料はよくわからないが、初めて口にする味だな。もう1杯は頼もう。」
そう言って二人は2杯目のエールを頼む。
そして、いい匂いがする野菜煮込みを口にする。
「煮込み、普通に美味いっす。野菜のうま煮って感じですね。醤油とは違った味付けですが、とろみもあって美味いっす。冷えたエールに合います。体に優しいです。」
「ジローの食レポは的確だな。確かにエールにめっちゃ合うわ。」
二人とも、エールと野菜煮込みを気に入ったようだ。
その後、エールをもう1杯ずつ追加注文して、それを飲み終えると、清算して店を出た。
「ジロー、この店はなかなか良かったな。また、来よう。」
「ですね。拠点が決まったら、また来やしょう。」
二人はそう言って次の店に向かう。
二人が次に向かったのは、雑貨屋だ。
ダンジョンに何が必要かわからないから、調査だ。
雑貨屋に入ると、さっき呼び込みしていた店員とは別の店員がいた。
「いらっしゃい。何をお求めでしょうか?」
ジローがまた、自分に任せてくれと目で合図する。
「ダンジョンの低層を軽く、散策しようかと思っているのだが、オススメの道具はあるか?」
「お客様は散策と言われましたね。では、護衛がいると言うことですね。でしたら、こちらの基本的な魔道具[散策セット]をオススメしています。 水袋、簡単な飲み物を温められる魔道具、ダンジョンが暗い階層の場合の照らすトーチ、簡単な温めや調理のできるコッヘルセット、軽量と拡張魔法が付与されたマジック袋 全部セットでなんと金貨15枚!! のところ、本日は格安セールにつき金貨12枚!!」
「高い。散策行くのにそんなにかけれないわ。親父、もうちょい何とかならないか?」
「ご冗談でしょ。この、マジック袋は容量は小さいですが、3メートル四方のものが入ります。このマジック袋だけでも金貨12枚は楽にします。」
リュージは一瞬、威圧した。
店主は、何が起こったか分からないが、物凄く体が重くなった様に感じた。
実はこのマジック袋は、亡くなった冒険者のものであった。このマジック袋を持った冒険者としては3人目で3人とも死んでいる。
と言うことで、普段はもっと高いはずのこのマジック袋は格安で売っていた。
他の店員も気味悪がっていたので、早く売ってしまいたいと思っていたのは事実である。
そして、ここにきての倦怠感である。
「金貨10枚。これ以上は無理です。お願いします。」
店員は何故か、必死の表情だ。
「リュージさん、少し財布寂しくなりますが、買っていいすか?マジック袋は便利す。必要なら、また、なんか売りにいきます。」
「ジローに任せるよ。」
「ヘイ」
「[散策セット]買うよ。」
ジローはそう言って、[散策セット]を手に入れた。
寒いー、寒すぎる。