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005 初めての服屋

リュージとジローは冒険者ギルドを出てから、北に向かった。

リュージの見立てだと、北に商業ギルドがある。

必然的に店もそちら方面なら、宛てなく彷徨うより、確率が高いと思ったからだ。


「リュージさん、あれ、服屋ではないですかね?」


見ると木の看板に服のような装飾がしてある。

ウィンドウはない。

明かりとりの小さな窓はあるようだ。

木製のドアがあり、そこから入れるようだ。


リュージの今の格好は黒のジーンズ、ワイシャツ、皮ジャン。

ジーンズはもともと大きなものを裾を折って使っていたため、伸ばせばこと足りた。

皮ジャンもシンプルなオールドデザインのもののため、ジッパーなどはない。

異世界において、全く違和感ないと言えば嘘になるが、見る人が見たら明らかに珍しいものとわかる。

ジローの姿もリュージに憧れているだけあって、黒のジーンズ、皮ジャンだ。

ただし、こちらは背が縮んだだけあって、裾をだいぶ折り曲げているし、皮ジャンも見たところ、だいぶ大きい。子供が無理して大人の服を着ている感じだ。


「リュージさん、とりあえず入って見ましょう。」


「だな、入るか。」


中に入ると、中年の男性がいた。

他に店員はいなさそうだ。

おそらく、ここの店主だろう。


「いらっしゃいませ。当店にようこそ。」


「何かお探しですか?」


「リュージさん、ここは自分に任せてくれませんか?」


「わかった。任せる」


リュージは短く答える。

ジローは土木作業場で働いていた関係もあり、いろいろな人間と関わっていた。

人が足りない時は、現場監督として、人を動かしたり、資材を調達したりしていたため、交渉ごとも得意だ。


「こちらのものを買い取って頂けないかと思いまして。」


と言ってジローは店の前で予め、脱いでおいた皮ジャンを、中年の男性に見せる。

中年の男性は訝しむ様に皮ジャンを受け取り、査定する。

すると、中年の男性の目がクワっと見開き、やがて皮ジャンのあちこちをみる。

しばらくすると、中年男性はリュージ達に向かって非常に和かな笑顔を向ける。


「これは大変珍しいものですね。皮はオークのものの様でオークではない。縫製も丁寧で測った様に均等に縫われています。

もっとも驚くべきは裏生地。きめ細かな生地、ソフトな毛皮、暖かく外側の皮は風を通さない。いったいどこでこの様なステキなものを?」


「俺たちは東の遠い異国から旅をしてきた。暖かくなってきたので、不要と思い売りに来たのだ。ものがいいのはわかっている。自国でも、相当値がはるものだ。ここで無理なら他で買い取りを依頼するつもりだ。ここは店構えもいいし、一等地にあるから、安心かなと思って立ち寄ったのだ。店主、いかがか?」


「わかりました。買い取らせていただきます。金貨10枚でいかがでしょうか?」


ジローの顔を店主は見る。

ジローは困った。

相場が分からない。金貨10枚は日本円でいったいいくらぐらいだろう?

異世界ラノベも相場はまちまちだ。

イメージ的に10万円?

ジローは取りあえず、考え込むフリをする。

日本で買った時、この皮ジャンは15万円した。

まだ、買ってから間もないため、できればもう少し欲しい。

そう思っていたら、


「12枚ではいかがでしょう?」


と店主が言ってきた。

すると、横で、リュージが店主に尋ねた。


「店主、話の途中ですまないが、今晩泊まる宿を探している。この街で高すぎず快適に泊まれる宿は知らないか?」


店主は交渉の途中で、話を全く関係ない方向に振られて、驚いた様子。

しかし、二人の上下関係は明らかにリュージの方が上だとわかっていたので、ここでへそを曲げられても、いけないと思い、リュージの問いに答える。


「それでしたら、東区にありますトワイライトと言う宿屋がオススメです。宿内も、広く清潔ですし、周りに食堂や雑貨屋などもあり、便利です。宿賃もお二人で大銀貨1枚程度。連泊すると割引になります。食事なしだと1ヶ月金貨2枚程度になったと思います。」


リュージは頭の中でいろいろ計算する。

大銀貨はよく分からないが、宿泊が二人で日本円にして1万円だとしたら、大銀貨1枚が1万円に相当する。

1ヶ月金貨2枚というかことは大銀貨30枚が金貨2枚?

割引を考え、10進法だと信じるなら1ヶ月大銀貨20枚が金貨2枚。

金貨2枚は日本円にして20万円かぁ。

まぁまぁかかるな。

まぁ、快適さを求めるから、その金額。

安宿は探せばあるだろう。

リュージが思っている間に、店主とジローは交渉を続ける。


「12枚で如何でしょうか?」


再度、店主が言った途端に、急に寒気を店主が感じる。

そして、膝がガクガクしてきた。

動けない。

声も出せない。

店主は急な体の変化に驚愕して、その場で固まった。

やがて、その寒気や硬直はおさまった。

リュージが威圧を放ってしまった様だ。

金貨12枚なら120万円と言う計算がリュージの心の中で成り立ったためだ。

ただ、ジローに任せたと言った手前、口は出せないと思い直し、慌てて威圧を引っ込めた。


「金貨15枚で如何でしょうか?」


この店主、プロだ。

威圧を受けた直後だと言うのに、交渉を続ける。


「交渉成立です。金貨15枚の内、金貨4枚は大銀貨で頂けますか?」


ジローはリュージの思わぬ援護威圧に感謝しながら、店主に返答した。


「あと、こちらの上着とアンダーウェアをいくつか下さい。」


そう言って、この異世界で着ても不自然じゃない衣服を購入した。

良い交渉ができた。

当面の金もできた。


「リュージさん、腹減りませんか?食べものを見に行きませんか?」


リュージも腹が減ってきたので、同意した。

東区に向かう。

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