003 異世界ついたよ
目を開ける。
すると、そこは石造りの街並み。
目の前に、老人が座っていた。
「おめえら、いったい、どこから出てきた?壁をすり抜けてきたのか? 飛んできた?人間か?」
日本語である。
正確には日本語同然に聞こえる別の言葉。
何故か理解できる。
「爺さん、ここはどこだ? 」
リュージは爺さんの質問には無視して、尋ねる。
「言葉はちゃんと通じるのか。ここはエロイムの街だ。おめえらはどこからきたんだ?」
「遠い、異国からきた。足が速いから、爺さんの死角から、素早くきただけだ。」
ジローはとても言い訳にもならないような返答で、爺さんの質問に答える。
「あぁー、そうなんか。異国からきた奴は足も速いんだなぁ。ワシも若かった頃は速かった。若かった頃はあちこち旅もしたなぁ」
何故か誤魔化せたようだ。
「リュージさん、これはラノベよくある、異世界転生?もしくは、この場合、異世界転移じゃあないですかね?」
爺さんとは少し離れたところに行き、ジローは冷静に分析する。
「異世界転移だとぉ?漫画は読んだことはある。でも、まさか、自分の身におきるとはなぁ。まぁ、なっちまったもんは仕方ない。となると、最初は食住の確保か。ジロー、ダンジョンを探せ。」
「リュージさん、異世界転生のラノベは自分もよく読んだことがあります。ちょっと聞いてください。ラノベのだいたいのパターンとしては、森やダンジョン近くに飛ばされて、街に向かって歩くんです。
そう言った場合は、だいたい街中に入れず、途中に出会った親切な方に手伝ってもらい、街中に入って、冒険者ギルドや商人ギルドに登録して、IDを発行してもらい、生計を立てていくのが、王道パターンです。リュージさんと自分のパターンは最初から街中に転移しています。しかも、なぜか言葉も話せています。明らかに日本語とは思えない言葉も理解できています。文字はわかりませんが、この調子だと、書けるかもしれません。
もしかしたら、ここに来るまでの違和感と、肉体の変化がその原因のひとつかもしれません。普通は神様とかにあってチート能力とかもらえるのがパターンなんですけどね。まぁ言葉が理解できるだけでも、ありがたいです。」
「そうか。なら、ダンジョンはまだ、早いんだな。なら、ジロー、次は冒険者ギルドか?IDをつくるのか?」
「ですね。文字が書けるのか、その辺も行けばわかるかもしれません。」
「その前にリュージさん、肉体の変化に関して、チェックしましょう。リュージさんは以前に増して背が高くなりました。筋肉量は同じ?背が高くなった分、細く感じます。細マッチョて感じです。年齢も少し若くなった感じですね。16歳ぐらいに見えます。」
「ありがとよ。ジロー、おめえは逆に背が縮んだな。その分 筋肉量が増えた感じはする。背が縮んだから、若く見えるぞ。15歳ぐらいに見えるぞ。」
「全然、嬉しくありませんぜ。リュージさんみたいに強くなりたくて、背を伸ばす運動したり、筋トレしたりしていたのに、泣きたいっす。」
「まぁ、そう悲観することもないだろう。筋肉は増えたようだから、ゴリラの子供みたいで、かっこいいぞ。」
「リュージさん、それ褒めてませんよね。まぁいいです。リュージさんの配慮ありがたいっす。リュージさんは以前も、背が高かったですけど、今は190センチぐらいになりましたね。自分、今めちゃ見上げています。この世界の人間がどの程度かわかりませんが、あの爺さんを見る限り、かなり高いと思います。」
「まぁ、人がいるところにいってみようぜ。そうすりゃ否が応でもわかるだろ。」
「ヘイ。いきやしょう。」
しばらく歩くと、大通りに出た。
人も結構歩いている。
馬車もある。
流石に車は走ってない。
建物から想像していたが、異世界ラノベでありがちなヨーロッパ中世時代の街中の雰囲気。
街中に行き交う人を見ると、そんなに高い人は見かけない。
リュージはこの世界の平均よりかなり高い方だろう。
「ジロー、冒険者ギルドはどこだ?街中にあるのか?」
「だいたい、街中にあります。塀の外に出やすく街の中心地よりもさほど離れないところにある筈です。異世界ラノベ的に。」
「じゃぁ、あっちだな。」
リュージは確信を持って、スタスタと歩き始める。
ジローはリュージの後をついて行く。
リュージはバイク便を商売としてやっていた。
ただ、最近は転職しようとしていたため、仕事は休業していた。
ただ、バイク便を始めようとしたきっかけは、並外れたマッピング力があったからだ。
リュージはバイクで走ったところや自分で歩いた場所は絶対に忘れない。
また、写真やTVで見た場所も一度でも見たら、思い出せる。
周りの状況も類推することができる。
地図はもちろん、ビルの構造や立体的な空間把握もできるため、ビルからビルの宅配も連絡を受ければ、直ぐに駆けつけて誰よりも早く届けることができた。
バイクを走らせ、喧嘩や無茶なこともいっぱいした。
ただ、その度に、この能力に助けられた。
バイクで、限界ギリギリまで、走らせることができたし、喧嘩でも逃げながら、各個撃破して、最終的に全員倒したりした。
自分で、自分の位置を素早く把握して、相手からの距離を計算して放たれる武器や手足による攻撃を避け、勝てそうにない相手にも、勝ってきた。
マッピング力<空間把握能力 である。
やがて、歩いているうちに、立派な建物が見えてきた。
基本的には石造りの建物。
ドアや、窓枠は分厚い木を使ったかなり年季の入った建物。
入り口のドアの上には{冒険者ギルド}と大きく日本語ではない文字が書いてある。
「あー、つきましたね。流石 リュージさんです。リュージさんについていけば間違いないと思っていました。しかも、文字、読めますねー。これなら問題なさそうです。」
「うむ。ここから見えているあっちが、南門だろう。そう考えると、北門は見えないが、西門はあっちだな。人がそっちから流れてきているから、出入り口はあるはずだ。東には飲食店街がありそうだな。食べ物の匂いがする。ここから北に行くと、商人ギルドがあるかもな。行商人の荷馬車がたくさん北に向かっている。」
「流石、リュージさんですね。街を少し歩いただけで、もう街全体を把握してしまいましたか。」
「バカヤロー、聞いていただろ。まだ、見てねーんだから、あくまでも予想だ。鵜呑みにするんじゃねーよ。」
「すみません、リュージさん。先走り過ぎました。許して下さい。」
「怒ってねーよ。さぁ、入ろうぜ。俺としちゃ、異世界ラノベ的な展開を期待するぜ。」
そう言って二人は冒険者ギルドの中に入っていった。
「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」タイトルにつられて読み始めてハマりましたね。