表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/28

2、もう一人の存在

公爵家令嬢リアの亡骸を腕の中に抱え、ルークは一人嘆き続ける。


彼女の体はまだ暖かい。


「お嬢様!お嬢様!!リアお嬢様ーーー!」

そう叫び続けるルークの腕の中で、一瞬リアが動いたかのように感じた。


その直後、一粒の小さな光が現れた。


その粒はどんどん光量を増し続け、

ついにルークは目を開けていることさえできなくなり、

目を瞑った。


それでも瞼を通して脳が光を感じ続ける。


そして、辺りが完全なる光に包まれ何も見えなくなり、それと同時に意識が薄れていく。





少年は突如覚醒した。


目を開けると、そこには見慣れた光景があった。

茶色の天井、色あせた本棚、傷のついた机。

そこは公爵家の使用人一人一人に与えられた部屋だ。


そう、ルークの自室だ。



ルークは覚醒しきっていない頭で、天井を見つめている。

ぼんやりと天井を見つめながら、頭の中をいくつかのイメージが浮かんでくる。


仕事、誕生パーティ、メイド長、相談役、黒装束、死体、焦土、リア。



!?



リアお嬢様!


少年は一気に覚醒し、頭の中で凄惨な光景が鮮明になった。



ルークは寝床から飛び出し、リアの部屋へと全速力で走った。


「お嬢様!リアお嬢様!」


長い廊下を駆け抜ける。

そしてリアの部屋の前に着き、ドアを叩く。



「お嬢様!リアお嬢様!ご無事ですか!お嬢様!」



一向に返事がない。

ドアを蹴破るか、窓から中に入るか考えていたところ、


ガチャリ


徐にドアが内側から開いた。



「なんですか?こんな朝早くから」



寝間着の上に上着を羽織ったリアが、両肩を抱きながら眠そうな声で顔を出した。



「お嬢様!ご無事ですか!」


「あら、ルーク。おはようございます。どうしたの?そんな血相を変えて」

「え?あ、あの、リアお嬢様。えと、いや、その」


必死の形相で叫んでいたルークだったが、リアの普段と変わらない顔を目にし、一瞬対応に困ってしまった。



「お嬢様、特にお変わりはありませんか?」


ルークは何とかその場を凌ごうと、言葉をひねり出す。



「そうですね、ちょっと貧血気味かしら。多分、まだ頭に血が上りきっていないのでしょうね。まあ、低血圧なのはいつも通りですけど」


リアは少し笑みを浮かべながらルークに言う。


外見は特に問題もない。

話し方も少しだるそうな感じがするが、低血圧ゆえのことだろう。

リアが無事であることを確認したルークは、先ほど頭に浮かんだ光景はきっと夢であったのだろう、そう思い直した。ちょうどその時、



「一体何事ですか!」



廊下に大声が響いた。

ルークが振り返ると、そこに居たのはメイド長のダニエラだった。


その姿を確認し、ルークはドキッとした。


ダニエラはルークよりも10歳年上の猫人で、執事のジェラルドを除いて最年長であり、また以前はリアの家庭教師をしていたということもあるため、他の者達に対しても常に厳しいからだ。



「あ、お、おはようございます!ダニエラ様」

「おはよう、ルーク。一体何があったの?」

「あ、いえ、これは、その」


ルークが言いよどんでいると、後ろから声が飛び越えてきた。



「おはよう、ダニエラ」

「あ、お嬢様!?おはようございます。起きていらしたんですね。ルーク、あなたが朝から騒がしいから起こしてしまったのね!」


「ダニエラ、ルークは私が呼んだのです。今日はクラウス様がお越しになる予定ですから、その準備も必要だと思いましてね」


ルークはリアの口から思いがけない言葉が出たので、目を見開いてリアの方を振り返った。

するとリアは、ダニエラに気付かれないようにルークに目で合図を送った。



「お嬢様、そういうことは侍女のカミラに任せてください!いくらお嬢様がルークを弟のように可愛がっているからといっても、寝間着姿を見せるべきではありません!ルークだって男の子なんですから!」



ダニエラの言葉で、ルークはハッとした。

リアの寝間着姿など見たことがなかった。

そのことを改めて意識してしまい、ルークは顔を赤らめた。



「でもね、ダニエラ。それ以外にも、ルークにはちょっと話があったの」



その言葉にルークは思わず、何ですか?と聞き返してしまった。



「ほら、ルークも来月で17歳になるでしょ。やっと大人の仲間入りをするわけですから、そのお祝いをしたいと思ってね」



そう言われて、ルークは思い出した。

あと3週間ほどでルークは17歳になるのだった。


しかしそれと同時に大きな不安がルークを襲った。


まさか、あの夢が・・・



「ルーク?どうしました?」


リアに名前を呼ばれ、ルークは我に返った。

口を開けたまま、思索にふけっていたようだ。



「あ、申し訳ありません、お嬢様。思いもかけないお言葉だったもので」

「ルーク、よかったじゃないですか。でもルークももう17歳ですか。時が経つのも早いですね。お嬢様、それでしたら私にも手伝わせて下さいね」



ダニエラもルークの誕生日を祝ってくれるようだ。



「でも!それとこれとは話は別です!お嬢様!身の回りのことは全てカミラに任せて下さい!ルーク、あなたも屋敷の中では静かにすること!分かったら、すぐに部屋に戻って仕事の準備をしなさい!」

「は、はい!」



ダニエラに叱られたルークは、飛ぶように自室へと帰って行った。


そしてその場には、リアとダニエラの二人だけになった。



「お嬢様、いろいろと思うところはおありでしょうが、公爵様のことやヒルデ様の件もありますので、できる限り自重していただけると助かります」

「ええ、そうですね。分かっています」


ダニエラの言葉に、リアは顔を俯かせた。





そしてルーク17歳の夜。



辺り一面に広がる焦土と無数の死体。


瓦礫の中には倒れているハーフエルフの少女、

そして、その傍らで泣き叫ぶ()()()()()姿()



その後方で、17歳になったばかりの少年は、焦点の定まらない目で立ち尽くしていた。


今回もここまで読んでいただき、ありがとうございます!

何とか24時間テレビが終わるまでに間に合いました。

多分誰も気にしてはいないのでしょうが。

ただ、個人的には密かに『打倒24時間テレビ』を掲げていたりいなかったり。

とりあえず今日はもう一本追加しようと思いますが、

日付が変わってからになる可能性もあります。

明日は仕事の方も多いと思いますので、朝にでも見ていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よかったらポチッと応援お願いします!↓
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ