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17、月下の奇剣士

行方が分からないリアをルークに託し、他の公爵家の人たちの元へと走るダニエラ。


暗い廊下を懸命に走る。

目指すは地下の食料庫。


シェルター替わりにも使えるその場所であれば、黒装束達の襲撃からも耐えられるはず。

パーティが始まる前に、昏睡状態のジェラルドもルークとともに運び込んでいる。


パーティ会場でルークが時間を稼ぎ、他の全員をそこまで避難させる。

そうすれば、全員が何とか生き延びる道も見えてくる。


これが彼女が唯一立てることのできた策だった。


ここまでは順調だった。


リアの姿が見えないのだけが不安だが、ここはルークに任せるしかない。


そう考え、ダニエラは走っていると、前方で大きな爆発音がした。



「!?」一瞬立ち止まるダニエラ。


しかし、すぐに慌てて走り始める。


「何かが起きた。いったい何?」


予想をしていなかった状況に、彼女の頭を不安がよぎる。


しかし、その不安が嫌な方向へと加速する音を聞いた。



キャーーーーーッ!ウワーーーーーーッ!ヤメローーーーーーッ!



公爵家の人たちの叫び声だ!


「何?いったい何が起きてるの!?」


ダニエラは速度を早める。頭の中では様々な状況が浮かび、パニック寸前だった。

爆発音のした場所が近づくことで脳内のパニックは最高潮に達した。。


それは、ダニエラが目にした光景のせいだった。


廊下いっぱいに、人が倒れていたのだ。


ダニエラは立ち止まり、息を呑んだ。

何がどうなっているの?何故こんなにたくさんの人が倒れているの?



その時、月を覆っていた雲が晴れた。


月明かりに照らされた廊下。


そこは辺り一面、血の海だった。

その中に、ダニエラのよく知る人たちが倒れている。

身体中を切り刻まれた者、首を切られた者、腕を切り落とされた者。


彼女がよく知る人達は、既に全員動かなくなっていた。



ダニエラはただ立ち尽くすしかなかった。


後少しで地下食料庫まで辿り着けたのに。

ルークがあんなに努力をしてきてくれたのに。

ルークが一人で戦ってくれているのに。


自分は何一つ役に立てなかった。

原因を掴むこともできなかった。

誰一人救うことができなかった。


焦点の合っていない目に涙が滲み出して来たその時、



「感傷に浸〜っている中、ちょ〜っとよろしいかぁ〜な?」


この場にそぐわない陽気な声が廊下に響いた。

ダニエラは意識をこの場に強制的に戻された。


目の前に片手に長剣(ロングソード)を握った長身の男性と思われる人物が立っていた。

男性と思われるというのは、その姿からは性別が判断できなかったからだ。


なぜなら、黄金色の長髪に白塗りの顔、服装はパントマイムをするピエロのようなタキシード風の衣装。


この状況下でのそのふざけた出で立ちにダニエラは思考が追いつかない。

その人物をただ見つめているだけだった。


そんなダニエラに対し、そのピエロが言葉を放つ。


「な〜んでこんなに手際よく逃げられたのか〜な?部下達だけでじゅ〜ぶんだと思ったんだ〜けど。もしかして、情報が漏〜れてた?」


この言葉でダニエラは悟った。こいつは黒装束達のボスであり、そしてたった今、公爵家の人たちを惨殺した人物なのだと。


「あ、あなたは誰なの!」


ダニエラは掠れた声で問いかけた。


「ん〜、そうだね〜、月下の奇剣士(マギアグラディエイタ)とでも言〜っておこうかね」


「月下の奇剣士?なぜ公爵家を襲うの!?」


「な〜ぜかって?そりゃあ愚問だ〜よ。君はポーカーで自分の狙いを口にするか〜ね?」


相手の話し方や内容に、ダニエラは苦虫を噛み潰したような表情をした。



「それよ〜りも、私の質問に〜は答えてくれない〜のかね?」


「あなたの質問に答えたら、私の質問にも答えてくれるのかしら?」


「な〜るほど。それが返答というこ〜とだね」


そういうと、ピエロは右手に持っていた剣を構えた。


まずいっ!ダニエラは直感的に悟った。


「情報源は、あとでゆ〜っくり探すとしよう」



ピエロがそう言い終わる前に、ダニエラは後ろへ振り返り走り出した。

しかし、斬撃が彼女の左腕を捉えた。

その斬撃の勢いに押されるかのように、ダニエラは前方へと飛ばされた。

回転しながら5mほど飛ばされた辺りで止まった。


後ろからはピエロがこちらへ歩いてくる。

ダニエラは右腕だけで立ち上がり、再び走り出す。


左腕はかろうじて繋がっているが、大量の血が流れ落ちている。


急激な運動と出血により、既に息が切れている。


しかしダニエラは走った。とにかく走った。

この男のことをルークに伝えなくては、との思いから。


この男を倒さなければ、この悲劇の夜は終わらない。


最悪今回で終わらせられなくても次回に繋げられれば。

そのためにも、少しでも詳細を明らかにしておく必要がある。


今にも倒れそうなダニエラは、それが最後の綱だと考えていた。



何とかパーティ会場の前まで来た。


中では今まさに戦いが行われているのが分かる。

でもそんなことには構っていられない。


この男のことを早く知らせなければ。

自分が追いつかれる前に。


ダニエラはパーティ会場に飛び込み、叫んだ。


「ルーク!」


部屋の中にはルークとその脇にリアがいた。

二人が自分へ目線を向けたのがダニエラには分かった。



しかし、続きの言葉は出なかった。


代わりに、ダニエラの胸から長剣の切っ先が飛び出していた。


「ル……ーク……」


ダニエラは目を見開いたまま、首をうなだれた。



「ダニエラさまーーーーーーーーーーーーーーー!」


ルークの絶叫が部屋中をこだました。


いつも最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


R15にしてあるんですが、このストーリーは果たしてR15なのだろうか?と今回の話を書いてて疑問に思いました。

そこまでの内容でもないかなと思いつつ、一応今後も日本人的発想でR15のままにしておきます。


いよいよ3回目の世界もクライマックスです。

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