16、使用人と闘い方
黒装束達に囲まれたルーク。
ジリジリと狭まる間合い。
ギリギリまで引き寄せたルークは、発動させていた魔法を解除した。
すると辺りが一気に暗くなる。
部屋を灯していたのはルークの魔法だったのだ。
暗転により、黒装束達の注意が一度逸れた。
その瞬間を見逃さず、ルークは相手の脇をすり抜ける。
鋭い風圧が頬を掠めたが、何とか黒装束達との距離をとった
そして少年は詠唱を始めた。
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「ルーク、戦いにおいては必ずしも強力な魔法が必要とは限らないの」
「どういうことですか?」
紫闇魔導の言葉にルークは質問を返した。
「戦う場所や、周りにいる仲間達など、状況によっては強力な魔法を使うことによって、味方に被害が出る場合が生じるの。まあ、私みたいに一人で戦うのであれば問題ないんだけどねぇ」
「なるほど」
「だからね、無属性のために上級魔法を使えないあなたでも、十分に戦うことはできるの」
「では、どのように戦えばいいのですか?」
「それはね、ここを使うのよ」
そう言うと、紫闇魔導はルークの頭を優しく撫でた。
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「グラキエス!」
短い詠唱の後、ルークは叫んだ。
指先から放たれる凍度の波動。
真っ直ぐに黒装束達に向かっていく。
しかし黒装束達には届かない。
手元が狂ったのか、暗闇で目標がズレたのか、その波動は黒装束達の足元に着弾した。
だが、ルークを目がけて襲いかかろうとしていた黒装束達の動きが止まる。
そう、足元が氷漬けにされていたのだ。
ルークは前もって、その場に水を散布させておいたのだ。
そこに凍化魔法で相手の動きを封じる。
初級魔法だが、この状況では十分な効果を発揮する。
事前の計画通りだ。
そして動けなくなった相手に対し、ここからさらに魔法を放つのだ。
ルークは再度詠唱を始めた。
とその時、背後で人の気配を感じた。
とっさにルークは後ろを振り向いた。
そこには、部屋の反対側から侵入する数人の黒装束達の姿があった。
-------まずい!ルークが心の中で思った時、
遠くから風を切る音が聞こえた。
シュッ、シュッ、シュッ
すると、反対側からの侵入者の胸に矢が突き刺さっていた。
倒れる黒装束達。
冷や汗を拭いながら音のした方を見ると、そこにいたのは矢を構えたリアだった。
「ルーク!大丈夫ですか!」
弓矢を抱えながら走ってくるリア。
その彼女に向け、「お嬢様!」と叫ぶルーク。
その叫ぶルークにリアが近寄って来た。
「怪我はありませんか?」
心配そうな顔で問いかけるリアに、
「ありがとうございます、自分は大丈夫です。お嬢様は?」
と聞き返すルーク。
「私も大丈夫です」
「でもなぜお嬢様が?とにかく危険です。僕の後ろに」
ルークはそう言うと、自分の後ろにリアを匿った。
「ルーク、私も戦います。あなた一人に危険な真似はさせれらません」
「いえ、お嬢様。ここは自分に任せてください。お嬢様に万一のことがあったら大変です」
「いえ、私は大丈夫です。それにこうして弓矢も使えますし。昔お母様に教わりましたから」
そう言ったリアは、足元を氷漬けにされている黒装束達に向かって矢を放った。
その矢は見事に命中し、床へと倒れさせた。
しかし、倒れた黒装束の後ろから、次の侵入者達が入ってくるのが見えた。
「分かりました、お嬢様。ひとまず一緒に行動しましょう」
ルークとリアは背合わせになり、敵の迎撃行動を始めた。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます!
まだまだ戦いは続きます!