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13、前代未聞

メイド長の手には一通の手紙が握られている。


それはつい先ほど受け取ったばかりのものだ、使用人の少年に預けておいた魔蝶によって。


まだ誰も起きていない早朝、自室でその手紙を読んだ彼女は、大きな疑問を抱いていた。


「リアお嬢様が恨みを買っている…。まさか」




森の中の人目に付かない建物にいる1組の男女。

紫紺の髪の女性と、黒髪の少年だ。


「ルーク、早く服を脱いで」


「!?」


「ほら、早く」


紫髪の女性が少年の服を脱がせようとしている。


「ちょ、ちょっと待ってください!な、何ですか!?」


「ん?決まってるじゃないの。ルーク、あなたの全てを知・る・た・め・よ」


艶やかな声が室内に響く。


「は?い、いや、ちょっと」と戸惑う少年。



「早くしなさぁい。じゃないと特訓を始められないわよ」


「え?特訓?」


「当たり前でしょ。何だと思った?ふふふっ」


紫髪の女性グリシナはルークの顔を見て笑っている。


「あ、あの、グリシナ様。もしかして遊んでいませんか?」


「ちょっとルーク。様をつけるのはよしなさいって言ってるでしょ」


「あ、申し訳ありません」


「じゃあ、早く服を脱いでちょうだい。あなたのマナの性質を詳しく調べるから」


そう言うやいなや、グリシナはルークの上着に手をかける。


「あ、ちょっ、大丈夫です!自分で脱げますから!」



ルークは一歩後退し、慌てて服を脱ぎ上半身裸になった。


「これでいいですか?」と言い、グリシナの方を見ると、彼女は無言でルークを見つめ返してくる。


「あの、グリシナさん?…え?も、もしかして下もですか?」


その言葉にグリシナはようやく反応した。


「ああ、ごめんなさぁい。ちょっと体に見とれちゃってた」


「本当ですか?」


「なかなかの体ですものねぇ。じゃあ背中をこっちに向けてくれるかしら」


その言葉に従い、ルークは背中を向ける。

するとその背中に手が置かれた。

その感触に、一瞬ドキッとしてしまう。



そのままグリシナは黙ったまま動かない。ルークは彼女の手が触れている部分に、自然と意識を集中してしまう。そこを中心として、自分の体の中を何かがうごめいているような錯覚に襲われる。さらに意識内へ向いていく。内に行けば行くほど、そこに大きな何かがあるような気がしてくる。体の中心の方で、流れを変えるような何かが。決して破られることのない殻につつまれて。



「これは…」


グリシナの声が、ルークを現実に引き戻す。


「どうしました、グリシナさ…ん」


「あら、ごめんなさい。ルーク、あなた今いくつ?」


「え、年齢ですか。あと3週間ほどで17歳になります」


「そう」と言ったグリシナは一瞬何かを考えるそぶりを見せ、再度口を開く。



「あなた、16歳の割にはそこそこのマナを持っているわね」


その言葉にルークは、「そこそこですか…」と少し落胆した表情を見せた。


「でもね」ルークの表情を無視するかのようにグリシナは話を続ける。



「特筆すべきはそこじゃないの」


その言葉に何かを期待するかのようにルークは聞き返す。


「どういうことですか!」


「ルーク、あなたは魔法の仕組みについて知っているかしら?」


今まで使用人をしてきただけのルークにそのような知識があるわけない。


「いえ、申し訳ありません」


「そう。じゃあ今覚えなさい。魔法というのは、体内にあるマナを性質変化させたものなの」


「性質変化?」


「例えばね、火を出す魔法を発動させる場合、体内にあるマナというエネルギーを火に変えることで魔法を行使できるの」


「ああ、そういうことですか!ちなみに魔力っていうのは何ですか?」


ルークは頭に浮かんだ疑問も質問する。


「うん、それはね、マナを性質変化させる時の力の作用のこと。まあ、一般的にはマナのことって考えてる人が多いから、その認識で問題ないわよ」


「はい、ありがとうございます!」



「それでね、話を戻すけど、人が体内に持つマナも全員が同じというわけじゃないの」


ルークが頷くのを確認し、グリシナは話を続ける。


「それはね、マナには属性というものがあるの」


「属性…ですか」ルークはいまいちピンときていないようだ。


「属性というのはね、火・土・水・風などといったもの」


見た目の印象をは異なり、グリシナは丁寧に教えている。



「それでね、例えば火属性のマナを持っている人は、火を扱う魔法を使うことができる、っていうこと」


「ああ、そういうことですか。じゃあ、人それぞれ扱える魔法も変わってくるっていうことですね」


意外に飲み込みが早いようだ。


「そうなの、ただね」


グリシナはルークの目を見つめ、話を続ける。



「あなたのマナには属性がないの」



「え?そんなことはあるんですか?」思わずルークは聞き返す。


「物語の中ではあり得るんだけどね、この世界においてはあり得ないことなの」


その言葉にルークは無言になる。


「でもね、属性の発現が遅れているっていうこともあるかもしれないし」


「そ、そうですか…」


「ただ、あなたの体内にあるマナはそれなりの量だから、それを自在に扱えるようにみっちりと鍛えてあげるわ」


「は、はい。そうですね。よろしくお願いします!」



とにかく今は魔力のコントロールをできるようになるのが大事だ。

そう気持ちを切り替えたルークだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


これが8月最後の投稿です!

9月も引き続きよろしくお願いします!


属性…どうなるんでしょう

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