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12、使用人の無知

「さあ、早く立ちなさい。いつまで下から覗いているのかしらぁ?」


「あ、はいっ。申し訳ありません」


馬から転げ落ちたルークは、いつの間にやら後ろに立っていたグリシナを見上げる格好になっていた。

すぐさま立ち上がったルークだったが、じっと下を見つめていた。

というのも、はだけたローブの下は、胸部と下腹部を覆うのみの露出度の高い出で立ちだったからだ。


「あ、あのっ、グリシナ様はいつもそんな恰好をしているのですかっ?」


「ちょっといいかしら?そのグリシナ様っていうのは止めてもらえない?何か堅苦しいわ。グリシナでいいわよ」


「え?い、いえ、そういうわけには」ルークは下を見ながら答える。


「はぁ~?じゃあやっぱりこのまま体を頂いちゃおうかしら」


「い、いや、それは。わ、分かりました、グリシナ……さん」


使用人という立場上、普段から他人を呼び捨てにすることなどなかったルークは、勇気を振り絞ってもこれが限界だった。


「まあ、今はそれでいいわ」グリシナは明らかに楽しんでいる表情を見せながら話を続ける。



「この格好は、私の正装というか戦闘服っていうところかしら。後であなたの分も用意してあげるわよ。ふふふっ」


「い、いえ。自分にはもったいないというか…」


「そんな遠慮しなくてもいいのよぉ。それより」


グリシナはルークの肩に手を置いた。

その手の感触にルークは緊張する。



「そろそろ教えてもらえるかしら、あなたの名前を?」


「え?あ、失礼しました。ぼ、僕はルークと申します」


名乗るのを完全に失念していたルークは、慌てて自己紹介をする。

普段からジェラルドやダニエラに礼儀について指導されていたルークは、これから教えを請う相手に名乗らなかったことに対し、落ち込んでしまった。


「そう。よろしくね、ルーク」


しかし目の前の女性は、ルークのそんな気持ちとは関係なく、変わらず艶やかな声で話を続ける。



「で、どうして魔力の遣い方を教えて欲しいのかしら?」


「え?あ、あの、それは…」

意表を突かれたのと事実を答えられない質問に、ルークはどもってしまった。


「言えないのかしら?」


「いえ、その……。…僕は、僕は守りたい人がいるんですっ!」


逡巡したルークは、自分の気持ちだけを伝えた。真剣な眼差しで。


しかし、顔を上げたことでグリシナの姿が目に入ってしまい、すぐに下を向く。


「そう。ルーク、あなたいい顔をしてるわねぇ。ふふっ」


そう言ったグリシナは、ローブを翻し「ルーク、着いてきなさい」と言い、歩き始めた。


「あ、はいっ!」


ルークは顔を上げ、ローブを見つめながらついていった。




「それで、どれくらいのレベルになりたいの?」


歩きながらグリシナがルークに尋ねる。


「はい、あの、3週間でできる限りお願いします」


左ななめ後方からルークは答える。


「3週間ねぇ。ルーク、あなた魔法の訓練を受けたことは?」


「いえ、その、ありません」


「そう。まあ、変な癖が付いているよりましね。かなりキツイ修行になると思うけど、ついてこられる?」


「はいっ!絶対についていきますっ!」


「分かったわ。じゃあ3週間でみっちりと鍛えてあげるわ、魔導師としても男としても。ふふふっ」


その言葉に一瞬ドキッっとしたルークだったが、ずっと考えていた質問を切り出した。



「あ、あの、グリシナ…さん。一つ聞きたいことがあるんですけど」


「ん~、何かしらぁ?」


「公爵様っていろんな方から恨まれてたりするんですか?」


「どういうことかしら?」


「いや、その、僕はお屋敷での公爵様しか知らないから、外ではどうなのかな?って思って」


回りくどいと思ったが、時間跳躍の話を避けるために必死に考えた結果だった。


「そうね、本当に憎いほどよ、あの男は」


「え?そんなに恨まれているんですか?」


「いえ、憎いほど恨まれてないのよ。まあ人の本心までは分からないけど、あの男のことを悪く言う人はほとんどいないのよ、残念なことに」


「そうなんですねっ!」ルークは少し嬉しくなった。


「ルーク、あなた喜んでたりしないわよねぇ」


前を歩くグリシナが少し低い声で言った。


「い、いえ、そんなことは」ルークは慌てて言葉を発する。


「まあ、いいわ。ただ」


ルークはグリシナへと視線を向ける。



「リアはちょっとね」



思いもよらない言葉にルークの心拍数が上がった。


「え?リアお嬢様ですか?」


ルークの聞き返す声を聞いたグリシナは立ち止った。


「そう。ルーク、あなた知らないの?」


一瞬振り返ったグリシナは、その言葉を発するとまた歩き始めた。

慌てて後を追いながらルークは話しかける。


「あの、どういうことですか?」



「それはね、あなた(使用人)ご主人(リア)に直接聞いてみたら?」


そのまま振り返ることなく、グリシナは歩き続けた。


今日もお読みいただき、ありがとうございます!


8月ももう終わりなんですね。今年もあと4カ月。

台風も近づいているので、是非お気を付け下さい!


あと、ブックマークして頂いている方々、ありがとうございます!

ヒロインの謎とか、ここからメインになっていくので、

是非引き続きお読みいただければと思います!

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