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10、公爵家の闇

ダニエラの部屋で倒れた公爵家筆頭執事ジェラルド。


かろうじて命は取り止めたようだが、未だ昏睡状態が続いている。


今は自室のベットに寝かせられ、リアに看病されている。



時を同じくして、屋敷の門前にはメイド長と使用人の姿があった。


「ダニエラ様、ジェラルド様は大丈夫でしょうか?」


「ジェラルド様のことは私に任せて。それよりルーク、一つ決め事を追加します」


「はい」と返事をしたルークを見つめ、ダニエラは一度深呼吸をし続きを話し始めた。


「それは、私たちが時を遡ったことは、決して誰にも言わないこと。先ほどのジェラルド様は、私が真実をお伝えした時に苦しみだした。ということは、考えられることは一つです」


ダニエラの言葉に、ルークは唾を飲みこむ。



「時を遡ったことを口にすると、聞いた相手に呪いのようなモノがかけられてしまう」


考えたくはなかったがそう考えざるを得ない事実に、二人は互いに黙ってしまう。


「で、でもダニエラさん、僕たちは?」ルークが疑問をぶつけることで、沈黙は消える。


「恐らく時を遡った当事者同士なら大丈夫ということなのでしょう。ですから、私たち以外には絶対に他言をしてはいけません。絶対にですよ」


「かしこまりました、ダニエラ様」


これでルークとダニエラは、誰にも助けを求めることができなくなってしまったのだ。文字通り、二人だけで何とかする他ない、というわけだ。

つまり、黒装束達を事前に屋敷に向かわせないようにするか、若しくはやってきた黒装束達を倒すか、このどちらかを二人でやらねばならないということだ。そのためにも、


「そのためにもルーク、あなたはフロイデンベルクに続く森へと行ってください」


「ダニエラ様、そのことで聞きたいことがあるんです!僕はそこで何をしたらいいんですか?それに、あの女性は一体誰なんですか?」


ルークは抱えていた疑問をぶつける。



「恐らく」ルークの疑問に対し、ダニエラは再度深呼吸をし、そして口を開いた。


「あの森に行くことが、現時点で残された唯一の手段になると思われます」


その言葉に、ルークは自然と背筋が伸びた。


「なぜならそこにいるのは」


息が止まる。



「コリーナ・ベルシュタイン様だからです」


ルークの頭は一瞬真っ白になった。ベルシュタイン?公爵様と同じファミリーネーム。公爵様の?


「そうです、ルーク。あなたは知らなかったかもしれませんが、コリーナ様はベルシュタイン公爵様の年の離れた妹君なのです」


ルークの頭の中では、記憶がどんどん遡って行く。今朝、昨日、1週間前、1ヶ月前…いくら遡ってもコリーナという名前は出てこない。


「無理もありません。あの(ひと)は10年前にお屋敷を出て以来、一度も戻ってきていないのです」


「10年前…」


「そうです、あなたがこのお屋敷に来る少し前です」


「あ、あの、何があったのですか?」


「まあ、ちょっとした兄妹喧嘩です」ダニエラはそう言うと、小さく息を吐いた。

「屋敷は全壊してしまいましたが」


「え、全壊…ですか?」


「そうです、そしてまだ若かったコリーナ様は、公爵様によってこの屋敷から追い出されてしまったのです」


そうなんですか、とルークは納得したようだった。

確かにあの森で、姿を表さなかった女性がヘクトールのことをあまりにも意識しているとルークは感じていた。



「あの、そのコリーナ様に会って、僕はどうしたらいいんでしょうか?また監禁されるのではないでしょうか?」


「あの女は、魔法の技術においてはヘクトール様に劣るものの、体内のマナの量はヘクトール様に匹敵するものを持っているのです」


「ということは」ルークも気付いたようだ。


「そうです、公爵様がいない今、彼女に魔力のコントロール方法を教わるのです」


その言葉を聞くや否や、ルークの胸に大きな不安の塊が落ちてきた。

あの人から教わる?教えてもらえるのか?また監禁されるのではないか?


その不安を消そうとするかのように、ダニエラが話しかける。


「安心して下さい。そのために、ジェラルド様に手紙を書いていただいたのです」


そうはいっても、その手紙がどれくらいの力があるのかが分からないため、ルークから不安が消えることはなかった。


「それに」そんなルークの状況とは関係なく、ダニエラがさらに続きを話す。



「あの(ひと)であれば、この屋敷を襲う人物について何か知っているかもしれません。それを聞き出して欲しいのです」


「どういうことですか?」


「あの(ひと)は、公爵様に家を追い出されて以降、各地を転々としていたようです。それも、公爵様の目が届かないように、ひっそりと」


ルークは口をはさむことなく真剣に話を聞いている。


「何処の世界にもあることですが、表の華々しい世界がある一方、人目に付かない裏の世界があるのです」


ルークはつばを飲み込む。


「強盗・密売・殺人など、表の世界ではできないようなことが、裏の世界で行われています。そして、表の世界を避けるように生きてきたあの女は、裏の世界との関わりを持っていると思われます。公爵様もその点を大いに気にされておりました」


「そ、それじゃあ」


「ええ。彼女であれば、屋敷を襲う集団についての何らかの手がかりを知っている可能性があります。あなたには、それを聞きだしてほしいのです」




馬上の少年は、森へと向かう道すがら、ダニエラとのやり取りを思い返していた。


いつも最後まで読んでいただきありがとうございます!


ヒロインの登場場面が最近めっきり減ってて、もっと登場させたいなとは思っているのですが、

出番はもう少し先になります。早く書きたいんですけどね。

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