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独り言。久しぶりの愚痴。



「天才薄命」「才子多病」

 天才の人生は短く、才能ある人間は往々にして病に伏しがちであると言うことを言っているのだろうこれらの言葉は、しかし俺にはあまり実感のないものだ。

 兄は明らかに天才で、信じられないほどに優秀な人間だが病気しているところを見たのは数回だけ。一般の人と大差ないくらいの風邪を、異常とは言わない位の割合で引いていた。

 つまり、才子多病という言葉は俺にとっては妄想の産物。

 薄命の方は、いくつまでしか生きられないことを言うのかという定義にもよるが、故事と言うことを考えても二十歳近くで没していることを想定しているとも考えられる。

 それを考慮に入れてみれば、やはり兄は薄命ではないし、つまるところそちらの方も信頼には値しない。

 そう、先人の知恵だとか、故事だとか、ことわざなんていうものは、大した価値を持たない。

 言葉などというものが力を持っていたのは、もう現代人では想定も出来ない程昔の話だ。

 室町や安土桃山にはきっと、その効力は薄れていただろう。

 口伝での継承という文化が残っていたのは日本列島を見てみてもアイヌにだけだ。

 紙による文化の継承。文字による歴史の保存。

 他国にはないほどの過去の資料が、日本には多数残っている。

 それは何故か。

 日本人にとって、本という資料媒体が貴重だったから。

 では、無いだろう。

 これは偏に、この国を治め続けた一家。

 天皇家の権力が一定の推移を保っていたからだと、俺は思う。

 幕府という暴力に政治を握られてなお、滅びることのなかった家系。

 それはそれそのもがこの国を表しているとも言える。


 閑話休題


 言葉が権力を振るったのは概して平安時代。

 陰陽道によるものが最大だろう。

 魔物、呪術、鬼。

 現実ではあり得ない存在を、俺は容認しないが、この国にはそういう文化がある。

 これは言葉の力を示す上ではかなり有益なものだろう。

 ここでいう陰陽道の言葉の力というのは、鬼を倒す術として用いられていた祈りだとか、魔物を祓う上で唱えられた詩のことではなく、これら全ての超常現象を、人々に信じ込ませたほどの話術のことを言っている。

 俺は、神や仏や鬼や悪魔、天使なんてものを信じたこともなければいるかもしれないと思ったこともなかった。

 だから、言葉って言うのは恐ろしいものだと素直に思っていた。

 そして今も、俺は思っている。

 やはり、昔の人の言うことなんて、信じるには値しないことだ。と。




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