秘策、敗北。
宮園唯華の眠りは、彼女にとっての救いであるはずだ。
自殺まがいを幇助し、あまつさえその罪悪感で死にたくさえなっている俺には、そうで合ってほしいという願望が多分にあった。
眠りは救いで、こんなところでこうしていることが彼女にとっての安寧だと、そうであれと。
俺がなぜ川上や他の連中に手を貸す形で宮園を起こそうとしなかったのかといえば、それはそこ、自殺未遂を犯すに至る事由が理由の大部分を占めるのだが、それに関してはこの際、この先も話すことはない。
他人のプライバシーを守るのは、ひととして当然の責任だ。
あれこれといろいろ考えさせられた今回だったけれど、こんなご大層なところに連れてこられても、俺にはできることなんて何もないことは明白だった。
不老不死、タイムマシーン、次元移動、人体拡張。
どれもこれもSFだ。
どいつもこいつも言ってることがめちゃくちゃな、ともすれば異常者に見えなくもなかった。
夢のまた夢。絵に描いた餅を、必死につかもうとしているようにしか、俺には見えなかった。
そうとも。
俺にはここの人たちの言ってること、やってることは1ピコメートルも理解の範疇になかった。
だからもう帰る。
ここにいたって何にもならないんだから、さっさと帰って現実を送ろう。
ここでのことはさっさと忘れて日常を取り戻すのだ。
やることやって、さっさと帰宅だ。
悩んだ結果を実践に移して、俺は結末を見ずに先に進む。
今までと同じ、その場しのぎ。逃げの一手というやつだ。そのためには俺は結果を待っていられない。俺にできることをやって、やったらさっさととんずらだ。
先輩あたりも流石に察してくれるだろう。
つまり。
「あの、すいません……。ここ、どこですか?」
宮園唯華についてのラボは、これにて解体ということになる。




