少年の葛藤は、いつも愚痴とは限らない。
何にかかっていて、何をすればどうなるのか。
そんなことがわかったからと言って、何になるというのだろう。
自分の思考が自分の努力を否定していく。
奔走した数日を無意味と断じ、嫌味のような言葉が頭の中をぐるぐると巡る。
そんな風に自己否定的になってふと思う。
由利亜先輩がアメリカに行ったから、俺に何があるというんだろう。と。
別段俺にデメリットなどない。
一人居候がいなくなって、そうなったら多分もう一人も去っていって、そうしてまた一人暮らしに戻るだけだ。
4月の初めより少し前から始まった生活に、戻るだけ。
それの何がいけない?
騒がしかった日常が、平穏静かになるだけだ。
助けられたなんて思われて、感謝という名の鎖で縛って、心にもない好きを強要して、勝手に自己嫌悪に浸る。
そんな日々が、ようやく終わる。
半年も続いてしまった歪な状況が改善されて、俺の生活は健全化される。
むしろ精神衛生上この上ないチャンスなのではないか。
俺は、由利亜先輩がアメリカに行くのを薦すべきなんじゃないか?
ひとりになって頭を冷やして、俺はこの流れから、ようやく抜け出せる。
『お前は俺のいうことを聞いていればいいんだ!!』
『なんで言われた通りにできない……』
『いい加減にしろ!! 逆らえると思うな!!!!』
『どうして逃げたりした……? お前には俺がいるだろ!!!!』
記憶の隙間から溢れてくる狂気。
人間のただの一面で、誰がどうなどということは関係なくて。
『あの人には、私が必要なの』
『私がいればね他には何もいらないんだって』
『ううん、好き。大好き。こんなアザ、どうってことないもん』
芋づる式に現れて、心を蝕む言葉。
好き。大好き。
到底受け入れることなんて、できない。
だから拒み続けなければ行けなかったのに、俺は幾度も罪を重ねている。




