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BASS☆MASTERZ  作者: 江戸川維新07
第1話
5/21

新たな挑戦

 翌日の昼休み。レイは屋上へと続く階段を物凄いスピードで走っていた。


「あーいーつーっ!」


 バン!っと勢いよく屋上のドアを開けると、タカシが呑気に日向ぼっこをしているのが見えた。


「タカシ! 何で午前中の授業受けなかったのよっ!」


 レイは甲高い声で怒鳴った。

 するとタカシは、


「お前、よくここがわかったな。俺のストーカーかなんかか?」


「バカっ! 違うわよっ! あんたを見かけたって子がいて......」


 レイの顔はみるみるうちに赤く染まっていく。


「どうでもいいけどさ。俺、ねみいから、ちょっと寝るわ」


 タカシは大きな欠伸をするとその場に寝転んだ。


「あんたね〜! ま、いいわ。今日はあんたにいいお知らせを持ってきてあげたのよ!」


 レイの言葉にタカシは何の反応も示さない。


「ちょっと! 聞きなさいよ! もしかしたらアメリカに行けるかもしれないのよ!」


 アメリカ、という単語にタカシはビクッと反応した。


「フフフ、興味はあるみたいね。いいわ、そのまま聞いて」


 レイは不敵な笑みを浮かべた。


「あんたがこんな感じになっちゃったのは、バスケができなくなって、有り余るパワーをぶつける方法がなくなったからだと思うの。それで、昨日うちのお兄ちゃんに相談したら、一度大会に連れて来いって!」


「はあ?」


 タカシは寝転んだまま、頭だけをこちらに向けた。


「何だよそれ。大会だあ? アメリカはどこ行ったんだよ」


「せっかちなやつね〜。続きがあるから聞きなさいよ。まずはその大会なんだけど『釣り』の大会なのよ! バスっていう魚を釣るんだけど、私のお兄ちゃんプロなの!」


「釣りぃ!? そんでもってプロ? おいおい、冗談はよせよ。何が悲しくて釣りなんかしねえといけねえんだよ」


「本当よ! れっきとしたスポーツ選手なんだから! それに、あんたせっかちでしょ? だから、釣りに向いてるって!」


「釣りがスポーツ? 笑わせんなよ。そもそもバスケとは格がちげえよ。世界中の選手が集まるNBAみたいな大会もあるんだぜ」


「あるわよ!」


「え?」


 タカシはあからさまに驚いた表情を浮かべる。


「だから、釣りにも世界中から選手が集まる大会があるって言ってるの! 『B.A.S.S』って言うアメリカの組織があって、その中でも『バスマスターズクラシック』って言う大会が今世界で一番大きな大会なの。もしもあんたが釣りのプロになっていい成績残せたら、この大会にも出られるかもしれないのよ!」


「ば、バスマスターズクラシック?」


「そう! だからあんたもこんな所で寝てないで、すぐに始めるべきなのよ!」


 しかし、レイの話を聞いたタカシは、また大きな欠伸をして寝始めてしまった。


「ちょっと! なんか反応しなさいよ! 全く!」


 そうは言ったものの、レイは急に声のトーンを落とし、呟くように話し始める。


「あのね、私、今のあんたを見てらんないのよ......昨日だって練習してたし。髪は金髪に染めたけど、お酒やタバコをやらないのは、まだバスケに未練があるからでしょ? 」


「..................」


「私、バスケをやってる時みたいに、楽しそうにしてるタカシがもう一回見たいのよ。それだけ......もしも、お兄ちゃんがでる大会に来てくれるなら、今週の日曜日、朝五時に芦ナ湖に来て。私、待ってるから」


 そう言い残すと、レイは屋上から出て行った。

 タカシは、レイが去ったのを確認するとおもむろに立ち上がり、景色を見下ろす。


「釣りか......」

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