最後のシュート
ドクン
焦るな......
ドクン
落ち着けば大丈夫だ。
ドクン
ゆっくりとボールを持ち上げ、地面を蹴った。
「うっ......」
右膝に鋭い痛みが走る。
しかし、今はそんなことは関係ない。
「入れええええ!」
空中で放たれたボールは、弧を描きゴールに吸い込まれていく。
パサッ
『やりましたああああ! 同点で迎えた最後のチャンス! モノにしたのは今大会MVPとの呼び声も高い、桐が丘高校のスーパールーキー黒鱒君です! これで今年のバスケットボールインターハイ出場校が決定しましたあああ!』
甲高い声のアナウンスが会場中に響いた。
その瞬間、大きな体育館は大歓声に包まれる。
「やったな! タカシ!」
「お前のおかげで......俺らはついに全国に......グスン」
「ありがとおおおお!」
タカシの周りにチームメイトが集まる。
「お、おう! これで俺達、全国に行け......」
ドクン
次の瞬間、膝の内側を刃物でザクザクと切りつけられるような激しい痛みがタカシを襲う。
「ううっ......クソっ......」
「ん? タカシ?」
「だ、だいじょう......ぶ............うわああああああああああ」
あまりの痛さに立っている事が困難になったタカシは、とうとうその場に倒れこんでしまった。
「お、おい! タカシどうしたんだ!」
「救急車! 救急車を呼べ!」
「馬鹿野郎! まずは医務室に運ぶんだ! タンカもってこい!」
倒れたタカシは、チームメイト達のその言葉を最後に意識を失った。