余韻
三日後。桐ヶ丘高校一年三組の教室。
授業も終わり、大半の生徒が部活動や帰宅の途についていた。
そんな中、窓側の席で一人。
どこか虚ろな表情で、ぼーっと外を眺めるタカシがいた。
「はあ......」
机に頬杖をつき、大きなため息を吐いた。
(俺はJBエリート5で待っててやる!死ぬ気で這い上がって来い!)
タカシの頭の中には、大介の声が何度もリピートされていたのだった。
「そんなこと言われたってよお。何をしたらいいのかわかんねえよな......」
周りに聞こえないように、ボソボソと独り言を呟く。
しかし、そんな小さな独り言を地獄耳でキャッチするジャージ姿の女子がいた。
「キモっ! 今時そんなわかりやすく悩んでる高校生なんて、あんたしかいないわよ!」
聞き覚えのある声に、ん? と後ろを振り向くタカシ。
BON!!!!
振り向いた直後、タカシの顔面にバスケットボールが直撃した。
「............ってぇ」
あまりの痛みに声も出ないタカシ。
やっと痛みが治まると、バスケットボールを投げた犯人を睨みつけた。
「何すんだよ! この暴力女!」
「暴力じゃありませーん! バスケ部のマネージャーがボールを投げただけじゃない!」
タカシはレイの反論に、さらにヒートアップする。
「人の顔にわざとボールをぶつけるマネージャーなんているかよっ!」
「パスよ。パス! 高校MVPならそれぐらい取りなさいよ」
「なんだとおおおお! そもそもなんでバスケ部のマネージャーがこんなとこにいるんだよ! さっさと体育館にでも行きやがれっ!」
「なによ! 人がせっかくいい情報を持ってきたって言うのに!」
「ん? いい情報?」
レイの言葉を聞き、タカシはひとまず怒りを収めた。
「そうよ。昨日お兄ちゃんからこの紙を預かってきたの」
そう言うとレイはジャージのポケットから住所のような文字が書かれた紙を取り出した。
「大介さんが? もしかしてまた大会に来いってことか?」
「うんん。違うみたい。あんたはまだバス釣りど素人だから、ここで基礎からみっちり学んで来いって」
「ん? 基礎からみっちり? やなこった! 俺はこの前みたいな大会でバスプロ達と戦いてえんだ!」
タカシは自信満々にそう言った。
しかし、レイはそれを聞き鼻で笑う。
「バカじゃないの? この前の大会は私のお兄ちゃんとタッグを組んだから戦えてただけ。あんたなんか、プロと同じ土俵にさえ上がれないんだから」
「そんなことねーよ! 俺は大介さんに認められた男だぜ? そこらへんの雑魚なんてこうチョイチョイっと片付けてやるよ」
それを聞き、レイは大きなため息を吐く。
「全く。どっからそんな自信が出てくるのよ......まあ、いいわ。とにかく、今からこの住所に行ってきて」
「なんだよ。メンドクセーな。ま、大介さんが行けって言うんなら行ってみっか。暇だし」
そう言うと、タカシは席を立ちカバンを持った。
「なによそれ! バスケも基本は大事でしょ! メンドくさがらないでしっかり学んできなさいよ!」
「ハイハイ。わかりやしたぁ」
気の抜けた返事を返し、レイの手からサッと紙を取ると、タカシは教室を後にした。
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「えーっと。ここらへんのはずなんだけどな......」
タカシは、紙に書かれた住所をスマホで調べ、目的地の近くまできていた。
しかし、一向に目的地に着く気配がない。
「あれ? なんでだ? 紙には釣り具屋があるって書いてあったはずなんだけど......」
同じ道をグルグルと周ったが、釣り具屋は見つからなかった。しかし、スマホのナビが指し示すのは、決まって同じ場所。
『BUKUBUKU』
と看板に書かれたレコードショップのような店だけだった。
「ダメだ。やっぱりここに戻ってくるな。仕方ねえ、ここで釣り具屋の場所でも聞くか」
釣り具屋の場所が見つけられないタカシは、その店のドアを開け中へと入る。
「おじゃましまーす......な、なんだここ!? この壁に掛かってるおもちゃみたいなのは......ルアー!?」
驚愕するタカシ。狭い店内には所狭しとルアーやロッド、リールが並べられていた。
すると、店の奥のレジカウンターに座っていた男が声をかけてきた。
「ヤーマン! あ、いらっしゃいって意味ね」
男がかけているサングラスに怪しい光が反射していた。




