ウェインショー
PM15:00
『さあ、皆様お待ちかねのーっ! 計量を開始しまーすっ!』
「「「おおおおおおおおお!」」」
大きなアナウンスと共に、芦ナ湖エキシビションタッグトーナメントのウェイン(計量)ショーが始まった。
朝と同じ特設ステージの周りには、選手だけでなく多くのギャラリーが集まっている。
今大会中にバスを釣り上げる事が出来たのは、四十ある参加チームの内、十二チーム。その中でも、リミットメイク出来たのは僅か五チーム。当日の芦ナ湖のコンディションを投影したかのような、厳しい戦いであった。
『さあ、盛り上がって参りましたウェインショー! 現在暫定一位は総重量2000g! おっと! ここで、大本命の登場です! 川藤プロチーム!』
チーム名を呼ばれ、車で牽引したボートで入場する川藤達。歓声に沸くギャラリーに手を振りつつ、ステージに到着した。
『さあ、それでは計量です! 一匹目......1000g! 二匹目......1000g! そしてラストは......1200g! 総重量3200g! またもや暫定一位が書き換えられました! おめでとうございます!』
暫定一位と1000g以上の差をつけて、頭一つ抜けた川藤チームに会場は大いに沸いた。
『それでは、インタビューです。いかがでしたか、川藤プロ』
「そうだねぇ。やっぱり状況が状況だけに、リミットメイクする事にかなり苦戦したよぉ。でも、朝イチでプラ(練習)でも調子の良かった好ポイントに入れたおかげで、自分の釣りができたのが勝因かなぁ」
『ありがとうございます! それでは、勝者席でお待ちください!』
川藤は、ステージに併設された勝者席に腰を下ろす。
『さあて、続いては! これまた大本命! 青井プロチームです!』
名前を呼ばれ、牽引ボートで入場する大介とタカシ。
その途中、大介と勝者席の川藤は目で語り合っていた。
(青二才よ、これがベテランの実力だ! 果たしてお前に超えられるかな? )
(なめんな! ふんぞり返ってられるのも今のうちだぜ、ジジイ!)
『それでは計量です! 一匹目......600g! 二匹目......700g!』
川藤チームとの重量の違いに落胆する会場。
しかし、
「「「な、なんだあのバスはーっ!?」」」
タカシが取り出した最後のバスに会場中が釘付けになった。
その魚を見た川藤は焦りの色を隠せない。
(な、なにいいいいいい!?)
それを見て、川藤を睨む大介。
(てめえを超えるのは俺じゃねえぜ、ジジイ!青二才よりも、もっと青いガキの下克上だ!)
『おーーーーっと! これはデカイ! 今大会最高記録です!
三匹目の重量は......』
会場中が静まり返り、息を飲んだ。
『2200g! 総重量3500gで、暫定一位交代です!』
アナウンスと共にこの日の一番の盛り上がりを見せる会場。大介とタカシも拳を合わせて、称え合う。
『さあ、それではインタビューに参りましょう! いかがでしたか、青井プロ』
「そうですね。前半はまあまあ調子よく活性の高い魚やリアクションに反応するバスも拾っていく事ができました。しかし、後半、なかなかサイズアップに恵まれない苦しい展開が続きました。そこで、勝利への道を切り開いてくれたのは、彼です」
大介はタカシを指差す。
タカシは、え? 俺? と周りをキョロキョロと見て恥ずかしそうに頭をかいた。
「このタフな状況で、JET-CROW。通称『ジェイクロ』を使い始めたんです。ビックリしました。ビッグベイト(とても大きいルアー)を使うなんて、考えもしなかった。しかし彼は、名前の通り『猛進するカラス』の翼で、暗い闇を切り裂いてくれたんです」
『ありがとうございます! そして、キッカーを手にした高校生バサーにも大きな拍手をお願いします! では、勝者席へどうぞ!』
会場は大きな拍手に包まれる。大介達は手を振りながら勝者席へと移動するが、席を交代することになった川藤と対峙した。
「あらら、僕たちは負けてしまったんだねえ。さすが次の時代を担うルーキー君達は、成長が早いねぇ」
「ありがとうございます。しかし、今回はこの少年のおかげで勝たせて貰ったようなものです。俺の実力だけでは、到底あなたには太刀打ちできなかった」
「そうかい? 若いのに謙遜するのはよくないよぉ。まあ、次は僕も負けないように頑張るよぉ」
そう言うと、川藤は席を後にする。しかし、二人の背中は語り合っていた。
(クソったれ! 青二才のくせに、この私に情けをかける気か! 覚えとけ! この仮はJBで返してやる!)
(謙遜じゃねえ! あんたは強かった! だが、次は誰の力も借りねえ! 俺が直々にあんたをぶっ倒す!)
二人の殺気はタカシにも伝わるほどだった。
(こいつら、すげえ。あんな戦いの後に、もう次のトーナメントのことを考えてやがる!)
と、その時、会場が一気にどよめく。
あまりの突然さに、何事かと焦る大介とタカシ。
しかしそれは、アナウンスの声で明らかになった。
『な、なんとーっ! またもや一位が塗り替えられたーっ! 総重量4800g! 優勝は菊島プロだああああっ!』
「「なんだとっ!?」」
大介とタカシは耳を疑った。
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