プレッシャー
AM12:00
ウエイトに差をつけられた大介達は、朝の勢いが嘘のように低迷していた。2匹目を釣り上げてから、600gのバスを1匹追加したのはいいものの、それから先、釣れるバスは全てノンキーパー(キーパーサイズではないバス)。黙々とキャストを繰り返す大介だったが、魚の入れ替えができないことに少しずつ苛立ちを覚え始める。
(今の総ウエイトはだいたい1800gか。ダメだ。これじゃ川藤には勝てない。あのジジイなら、3000gは揃えてくるはずだ。クソ! あと2時間しかないと言うのに! 何故だ? 何故サイズが上がらないんだ! 俺の釣りが間違っているのか? 同じ場所で釣りをしていて、ここまで差がでるとは......)
投げたルアーを巻き上げると、大介はルアーボックスを触り始める。
(なんなんだ。一体どのルアーを使えばサイズがあがるんだ......クランクベイトはもう使った。スピナーベイトに反応は薄い。ミノー(細長い魚の形をしたルアー)でリアクションを狙うか? それともラバージグでタイトに攻めるのが正解か? クソ! 考えれば考えるほどわからなくなっていく......)
大介は悩んでいた。彼の武器でもあるスピーディーな攻める釣り。しかし、その釣りは諸刃の剣でもある。早いピッチで次々とバスをキャッチできる反面、状況がうまく噛み合わなければサイズアップに恵まれないのだ。普通なら場所を変えて、攻め方を見直すこともできた。しかし、川藤と言うプレッシャーやルーキーの意地が重くのしかかり、正常な判断ができなくなっていたのだ。
(ダメだ......この状況を打破する策が何も思いつかない......ここまでか......)
大介はルアーボックスの前で歯を食い縛る。
その時、
「なんだよ! デカイ魚が釣りてえんだろ? それなら、これだろ!」
大介が鬱ぎ込むのを見て、居ても立っても居られなくなったタカシはルアーボックスからあるルアーを取り出す。
「お前! それは......ジェイクロ!?」
タカシが取り出したルアーは18センチはあろうかと言う『ジェイクロ』と呼ばれる大型ルアーだった。細長い魚の形をしていて、腹の部分が二つに分かれ連結している。
「へへーん! 兄貴だけ魚釣ってズルいぜ! 俺にも釣らせろよ!」
そう言うと、タカシは先程使っていた竿にそのルアーをつけ始めた。
「バカやろう! こんなタフな状況でそれは......」
タカシを止めようと、近づく大介。しかし、その足は途中で止まった。
(待てよ! ジェイクロか! 行けるかもしれん! 濁りが入ったこの状況、普通のルアーでは反応が薄い。リアクションさえも見切られていた。しかし、あの大きさのルアーならアピール力が桁違いだ。しかし......)
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